△ 不等辺ワークショップ第27回 (2005/04/30)


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大辞林 第二版 (三省堂)
ワーク-ショップ [workshop]<
(1)仕事場。作業場。
(2)研究集会。講習会。
(3)舞台芸術などで、組織の枠を超えた参加者の共同による実験的な舞台づくりをいう。


写真 四月だけれど、皐月晴れのとても気持ちの良い午後でした。フットワーク管理部長氏とワークショップ会場で待ち合わせ。のんびりご飯を食べながら、開始時刻を待ちました。

本日のメニュウ
> >>>第一部 ナノル、ヨブ、マネル、トブ、ナル
> >第二部 ノバス、バランス、カンジル、サワル、マネル、ツクル、テクスト

写真 お互い誰も知らない者同士が、初めての場で初めて挨拶をする。それがナノルということ。ナノって、そしてシェイクハンズ。シェイクシェイク。
私たちは、本当はいつも知らないヒトに囲まれて暮らしています。道路でも、電車でも、すかいらーくでも、ローソンでも。しかしあんまりナノリません。知り合うことをあまりしません。きっと、知り合うことがとても大変なことだから。
でもここでは、あっさり知り合ってしまいましょう。「よろしく」「よろしく」

よろしくって、よく考えたらヘンな言葉。


写真 よろしく 【宜しく】<
(副) 〔形容詞「よろし」の連用形から〕

(1)適当に。うまい具合に。
「彼のことだから、どうせ―やっているだろう」
(2)相手に便宜をはからってもらうときなどに、相手の好意を乞い促す意で用いる語。また、そういう気持ちをこめて言う挨拶語(あいさつご)。
「どうか―願います」「―お引きまわしのほど」「―お伝え下さい」「今後とも―」「どうかみなさまにも―」
(3)〔漢文訓読に由来する語〕(下に「べし」を伴って)当然。ぜひとも。
「この際―人心の一新をはかるべきだ」
(4)他の語句に付いて、その内容を受け、あたかも...らしく、の意を表す。
「歌舞伎役者―大見得を切る」

大辞林 第二版 (三省堂)


写真 例えば、大好きな人と付き合うことが出来て、それはもうこの上もなく素敵な時間を過ごし、なんとなくお互いのことが、感じがわかってくる頃、おしゃべりしていると同時に言葉を発してしまうことがあります。「あのさ…」「あのね…」
幸せだけど、照れちゃうあの瞬間。あの感じを再現したくてやっているのがトブ
じゅんぐりじゅんぐり21回数え、飛んでいくのです。それぞれのタイミングで。勝手に。合図なしに。そして、ここでは同時に言うこと、飛ぶことをNGとします。同時に飛んじゃったらもう一度最初からやり直し。でも、同時に言っちゃう、飛んじゃうことこそがホントは楽しい。今回21まで数えられた回数は合計3回。なかなか、です。

写真 照れちゃう瞬間を体験した後は、色んなヒトと色んなモノに黙ってナッテみます。消しゴムと鉛筆、花瓶とバラ、バイク、車、日本列島、スニーカー、平仮名、東京タワー。組んだ相手に合図はしない。お互いを見て、その物にナル。これ、意外と難しい。うんうん、唸って悩んでいたヒトもいました。

ここで、第一部終了。おやつタイム。

→→→→→→閑話
幼い頃、山や空を眺めながら、自分が巨人になってあの山やあの雲を一跨ぎ、一掴みして、木々のぶつぶつとした触感や、手の間から逃れていく雲の冷たい感触を想像しては、むふふと微笑んでいました。そしてその感触は今でも覚えているほど明確で、思い出すたびにやっぱりときめいてしまうのです。たぶん、おそらく。私たちの想像する力やどこまでも思いを馳せる力はとても強い。けれど、時として色々な人間達で構成されている中に入ろうとすると、その色んな人たちの統制をとろうとして、とられようとして、潜在的に持っているそんな力たちをそっと封じ込めてしまうことがある。から、だから、時として。私たちは自分がなんてちっぽけだろうと、愕然としてしまうのかもしれません。
何をしてもいい。何になってもいい。
そんな事実に気がつけばきっともっと自由になれる。山を一跨ぎすることも、河の水すべてを手のひらですくうことも、空へ羽ばたくことも。

←←←→←←

写真 写真 さて、第二部へ。

さて、おやつでノンビリしたら、身体をノバシましょう。二人一組になって、昔々小学生の頃にやったようなストレッチ。あなどるなかれ。きちんとノバスって、案外難しいのです。身体の軸をぶらさずに、きちんと相手と重心を取り合って、身体のどこをのばしているのかを意識しながらノバス。その時、息を吐けるとベストです。

ぐぐいっと身体を伸ばせたら、次はバランス。T字バランス、直角バランス、飛行機バランスの三種類。バランスは自分の身体の中心がきちんと意識できるかどうか。そして、身体を支えられるだけの筋力があるか。自分の身体は自分の身体なのに、なかなか思い通りには動きません。


しんたい−のじゆう −じいう【身体の自由】

正当な理由なしに逮捕・拘禁など身体上の拘束を受けないこと。日本国憲法はその保障のため、奴隷的拘束や苦役の禁止、刑事手続きにおける法廷主義、被告人の諸権利等について詳細な規定を設ける。人身の自由。

三省堂


…いえいえ。私が言っていることはそういうことではなくて。


写真 からだ【体・×躰・×躯・身体】
1.
(1)動物の頭・胴・手足などのすべてをまとめていう語。五体。しんたい。「――を横たえる」
(2)頭・手足を除いた、胴。「――を反らす」「――の線が崩れる」
(3)体格。骨格。からだつき。「がっしりした――」
2.健康状態。また、体力。「――を悪くする」「お――に気をつけて」「――の弱い子供」
3.
(1)生理的存在としての身体。肉体。「――で覚える」「――が糖分を欲求している」「――を使う仕事」
(2)性的な対象としてみた身体。肉体。「――を許す」「――の関係がある」
(3)社会的活動を営む主体としてみた身体。身(み)。「今夜は――が明いている」「――がいくつあっても足りない」
4.死体。なきがら。「――はどこに捨ててある」

大辞泉


写真 写真 自分の身体って知っているようで案外知らない。そこで今回はじっくりゆっくり自分の身体と向き合ってみました。カンジル。呼吸をするという、普段何気なく行っているこの行為を意識すると、何故だか自分がココにいる実感をゆっくりじっくりじわじわとカンジルことができるはずです。目を閉じて、吸って、吐いて、吸って、吐いて。どこから息を吸ってますか?そしてどこを通ってどこへ抜けて吐き出していますか??

さらにさらに自分の身体を知るために、今度は目を閉じたまま自分の顔を触ってみましょう。サワル。顔のでこぼこ、頭の形、眉毛から目のくぼみライン、小鼻から鼻へのでっぱり、口と鼻の関係、そんなことを意識しながらゆっくりゆっくり触っていくことで、触感で自分の身体を知っていきましょう。もし、目の前に粘土が置かれたら、その触感で自分の顔を表現できるほどに、じっくりと。
じっくり自分の顔を触ったら、今度は他人の顔を触ってみましょう。サワル。今回は限定。鼻鼻鼻鼻鼻鼻鼻鼻鼻…。色々なヒトの鼻を触って、そしてお話ししてみよう。鼻談義に花を咲かせてみましょう。

「あなたの鼻はとても立派ですね。鼻筋もすっと通ってるし、小鼻の部分もきれいなラインだし。どこまで触っても頬にたどり着かない感じがして、ちょっとびっくりしました。鼻がとても主張している。もし、鼻の模型品評会というものがあったら、あなたの鼻はきっとその品評会で一、二番にはいるんじゃないでしょうか、きっと。
自分の鼻の形は割と気に入ってます。特に鼻の頭のまるっとしたところが好き。鼻筋が凛と通ったりしている方が、本当は美人なのでしょうけど、私は美人というタイプでもないし、むしろ『女は愛嬌』タイプなので、こっちの方がぴったりかな、って。
写真 そうそう。小鼻にある黒いぶつぶつがやたら気になった時期がありました。私がハタチになったばかりの、初めてヒトと「お付き合い」をしてドキドキしていた「お年頃」の頃の話です。いわゆる毛穴の汚れ、というヤツだったのですが、自意識満載だった私はちょこっと黒いぶつぶつがあるだけで、朝はダークな気持ちになりました。そしてその毛穴の汚れを見つけた日に彼に会うことがあろうものなら、ずっと下を向いたり、一生懸命手で顔を隠したりし、彼に「顔が見えない」とおこられて、さらにシュンとなったりし、黒のぶつぶつのバカバカ!と心の中で叫んでいました。
今は、その黒のぶつぶつをどうやってとればいいのかを解明もしたし、人間小鼻の汚れごときでダメになったりしない!というヘンな自信もつき、それほどシュンすることもなくなっています。
でも、どうなんだろう。今話しながら、小鼻の汚れを気にする自分もまたいいのかも、と少し迷っております。人間、一つ得れば一つ失う。けだし、名言」

写真 さてさて、鼻談義が終了したところで、第二部のマネルへ突入。第二部は、ミラー。二人一組になって、人間(主体)と鏡に映った人間(客体)、となります。A・Bと名付けられ、「A」と言われたら、Aの人間が主体、Bが客体。「B」と言われたら、Bが主体、Aが客体。鏡です。ですから、シンメトリーに動かなくてはいけません。一つを見て、全部をみなくてはいけません。

そしてツクル。お題(目的)を決めて、一人一文「〜。」を言って隣のヒトへ回していく。
条件は一つだけ。前の人たちが言ったことを否定しないこと。
例えば

「昔々、おじいさんとおばあさんがいました」
「本当はおじいさんとおばあさんはいませんでした」←××

今回のお題は、女性がダンサーとしてブロードウェイの舞台に立つ、まで。そこまでのストーリーを作ります。
「時は現代、ブロードウェイの舞台にたつことを夢見るJという女性がいました」
「Jは来る日も来る日もダンスの練習に明け暮れていました」

Jは、ブロードウェイミュージカルの上演を日本で行うためにダンサーが募集されている電車の中吊り広告を発見。親友のMと共に、そのオーディションに応募します。練習に明け暮れるJとM。二人は自由曲の創作ダンスを懸命に作り上げます。そして、オーディション当日。なんと、課題は自由曲だけではなく、課題曲もあったという事実が判明。ショックを受ける二人。しかし、なんとか精神力と運でその難問もくぐり抜け、血の滲むような思いで作り上げた自由曲を踊りきります。
結果発表。Mは日本公演のみ参加。そして、Jは見事に合格。アメリカのブロードウェイでも踊ることができることになりました。

…今回は、以上のようなお話に。

写真 写真 ラストは、テクスト
二つのテクストを用意しました。
サミュエル・ベケット「ゴドーを待ちながら」
ジョン・パトリック・シャンリィ「星降る夜に出掛けよう」
それぞれの一部分を抜き出し、好きなテクストを選んで、ツクル

リーディング。
+プラスインプロ風。
テクストの読替。

縛りは、たぶん自分自身の中にあるのです。
テクストを渡された途端に、それがテクストだという事実と自分の経験を照らし合わせようとする。それはおそらく「正当な」行為なのだと思うのです。でもしかし、羽ばたく気持ちに耳をそっと傾けることで、経験や事実にとらわれず、そこから何かがうまれてくるはずなのです。何をしたいか、何しようとするか。ひいては自分が今ここにいるのはどうしてなのか。どんなふうに生きようとしているのか。
生き方に正しいも正しくないもナイ。だから何でもあり。何でもありなら、何でもありなだけの、その人間が居る数だけの、何でもあり、が生まれてくるといいな、と、私は密かに考えています。

以上で、今回のワークショップはおしまい。
私の話もこれでおしまい。

そっと追伸:
参加してくださった皆さん、本当にありがとうございました。
そして、このワークショップの場を提供してくださった林さんにこの場を借りて感謝です。


アンケートより

(雰囲気&内容について)

写真 ☆初めてこのような場所に来たので、最初は「??」と戸惑っていましたが、さとうさんのリードが上手ですんなり入り込むことができたように思います。
☆いつも通り(と言っても2回目ですが)なごやかな雰囲気でなごめました(ピリピリしている劇団もあるので、すごく良いと思っています)。
☆最初にやった名前を言い合うゲームは画期的?! 合コンとかでも使えそう。
☆「カンジル」「サワル」などはあらためてやってみると「ほほー、そうか」と新たな発見があった。
☆数字を「21」まで言っていくゲーム、ミラーゲーム、テクストetc.どれもおもしろかった。
☆自分のニガテを発見するとおちこむことが多いけど、今日は明るくうけとめられた。

(リーダーについて)

☆すごく慣れていると思いました! さすがです。フレンドリーで◎でした。
☆進行がとてもスムーズだったと思います。
☆良かったです。お世辞じゃないです。
☆さとうさんのアーティスト活動についてもっと知りたいと思いました。


写真 不等辺さんかく劇団ワークショップ管理部、略してフットワークの林成彦(はやしなるひこ)です。今回はさとうゆきさんにリーダーをお願いしました。さとうゆきさん。ご参加くださったみなさん。ありがとうございました。お疲れさまでした。  

 さとうさんはシナリオも書くし、自ら舞台にも立つ。演出も手がける。演劇の研究者でもある。広〜く深〜く演劇と関わっている、歴とした演劇人。それが彼女のひとつの顔です。もう紛れもない、本物の演劇人。
 そしてさとうさんのもうひとつの顔が「アーティスト」。来年2006年に新潟で開かれる「越後妻有アートトリエンナーレ」に作品を出展なさるそうです。別名「大地の芸術祭」。出展者には日比野克彦の名前もあります。海外からは「え、マジで!?」というようなアーティストも出展するらしいです。なんだか新潟がすごいことになるみたいですね(越後といっても越後かずえとは関係がないのだ)。

 さとうさんのアートは、肩のチカラが抜けた感じで、構えたところがありません。演劇からフィールドを広げて自然にたどり着いた地点、それがここという感じを受けました(勝手な印象で、ごめんなさい)。私は「たけしの誰でもピカソ」が好きなのですが、あれのアートバトルに出てきてもおかしくない感じ。楽しそうだし、おもしろそうです。
 いいなぁいいなぁ。話を聞きながら私は胸が熱くなりました。私もそういうことがやりたかったのだ。ワークショップをしつつ世界を旅する。ワークショップという「ワッカ」を持ち歩いて、行く先々でワッカを広げる。その場所で出会った人たちとその場所ならではの体験をする。私が思うに、さとうさんが新潟でやろうとしていることがまさにそれ。すてきだなぁ。すばらしいなぁ。

 自分のやりたいこと(でも実現可能かどうか不明なこと)をすでに形にしている。こんなに身近にその人がいる。このことは私の体温を、身体の奥からじんわりと温め続けてくれそうです。
 楽しみ楽しみ。私も新潟、行きますよ。大地の芸術祭。楽しみ楽しみ。ワークショップはもちろんのこと、いろいろとお話ができたこと、私には大きな収穫でした。さとうさん、ありがとうございました。

 次回のワークショップは「松陰コモンズ」の大広間が会場です。2月に続いてこれが2回目。ぜひ楽しみになさってください。多くの方のお越しをお待ちしています。

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