△ 不等辺ワークショップ第25回 (2005/02/27)


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写真  不等辺さんかく劇団ワークショップ管理部、略して「フットワーク」の林成彦(はやしなるひこ)です。フットワーク。いま思いついて略してみました。どうも垢抜けないね。売れない漫才コンビのようだ。小口専門の運送屋さんみたいでもある。軽トラでお届けものを配送する。有限会社フットワーク。そんな会社がどこかにありそう。でも考えてみると演劇ワークショップだっておなじですね。これは演劇のお届けもの。演劇のケータリング・サービス。今日もお届けものに上がります。毎度どうも。フットワークの林成彦です。とペコリ。(「フットワーク」をそれっぽい漢字で書いてみるか。…飛脚?)。

写真  フットワークよろしく。すいすいっと、私はめずらしく自転車で出かけます。今回の会場は世田谷。私の家からも近い「松陰コモンズ」です。古い大きな日本家屋がシェア・ハウス(コレクティブ・ハウス?)として活用されているもの。その大広間をワークショップの会場としてお借りしました。もちろん畳敷きの部屋です。いつもの会場とはずいぶん雰囲気がちがう。じつによろしい。
 「築150年の日本家屋の大広間」と聞くと、どんな部屋をイメージしますか。きっとさぞかし…と想像なさったのではないか。フスマが次々と開くような。そうじゃないです。実際の部屋は子供のころの、近所の書道塾やそろばん塾のイメージに近いです。さしずめ今日は近所の「演劇塾」。世田谷でそんなことがやれるなんてステキだなぁ。私はいつもののれんを玄関に吊るしつつ思います。世田谷のここらは吉田松陰のゆかりの地です(だから「松陰コモンズ」なのだ)。かの松下村塾が高杉晋作や伊藤博文を輩出したように、私のこの演劇塾からもたいへんな人物が巣立っていくといいな。べつに演劇人じゃなくていいから。楽しみ楽しみ。


『ジャグリング』〜『バースデイ』

写真  オープニングの定番のゲームです。しかし今回はちょっと勝手がちがいます。写真からもおわかりでしょうか。障子を通して庭からやわらかな日差しが差し込みます。天井からはペーパークラフトのシックな灯りが吊るされています。この部屋でいつものようにボールを6個も投げたり、走り回ったりできるでしょうか。そんな勇気は私にはありません。じつのところこのオープニングをどうしようかなぁというのが私の悩みでした。結局あまりいいアイデアも浮かばず、座ったままいつもとおなじジャグリングです。
 やってみるとおもしろいものです。おそらくいつもと比べても、今回はコミュニケーションがスムーズでした。どうしてだろうか。あとでアシスタントの越後かずえとあれこれ考えてみました。輪が小さかったため、アイコンタクトが取りやすかったのではないか。乱暴にしたらいかにも危険な感じだったので、みんな丁寧にボールを投げたのではないか。結果として一体感が得られやすかったのではないか。などなど。今回のジャグリングは充実していたんです。フードネームを、一覧表を見なくてもみんな言えましたものね。

写真  そのフードネームはハムかつ、えび、くるみ、おくら、ナッツ、コロンビアコーヒー、いなりずし、のり、鳩サブレ、マンゴスチン、ようかん、さんまに決まりました。今回はマテリアル系(?)の食べものが多かったともっぱらの評判。じつは私、はずかしながらマンゴスチンってよくわかりません。どんな食べもの?

 バースデイは、やるたび思いますが、幸せなゲームですよね。ぜひいちど私の誕生日に(3月30日。さりげなくアピールしてみた)やってみたいものだ。今回は「明日が誕生日」という参加者がいましたため、最後は6個のプレゼントをすべてひとりに集めて終わりました。ハッピー・エンディング・トゥー・ユー。私もプレゼントを6個ももらってみたいものだなぁ。

『ライン・アップ』

写真  初めてのゲームです。整列するゲーム。リーダー(私です)の指示にしたがって一列に並びます。試したのは「髪の長い順」「今日から誕生日の近い順」「今日ここまで来るのにかかった時間の短い順」「手のあたたかい順」の4列でした。手のあたたかい順を、ひとりずつ確認していったのはおもしろい体験。体温のグラデーションだ。
写真  普通は整列というと背の順とか50音順ですね。でも髪の長さだったら、髪を切ったら並ぶ位置が変わる。そういう流動的なのって愉快ですね。
 5列目はちょっと趣向をこらす。「愛することの方が憎むことより簡単である」。この考えに賛成する程度の順。整列したあと、ひとりずつ理由を尋ねてみました。もちろん正解はありません。人によっていろんな考えがありますね。おもしろい。こういうことって飲み会でディープに酔ったときでもないとなかなか話さない。それを昼間から素面で、しかも初対面の人たちと話してしまうのってなんだか不思議だ。ここから簡単なディベートに進むこともできましたが、今回は進みません。またいつかのお楽しみ。

『ごみ問題』〜『ギリギリ・フルーツ』

写真  愛することは簡単ではないかもしれない。けれどこのゲームでは出題者に愛を伝えるのがルールです。自分がどんなに愛を伝えても、それが相手に伝わるとは限らない。愛がなかなか伝わらないと、だんだん悲痛な思いすら感じてきます。焦りだ。焦るな焦るな。焦れば焦るほど愛以外の、なんだか余計な感情がきっと相手に伝わってしまう。そうなるときっとダメなんでしょうね。敬遠される。モテる人は余裕があるからますますモテる。モテない人はますますモテない。勝ち組と負け組だ。このゲーム、なかなか手強いぞ。ルールはシンプルなくせして。

写真  休憩のとき、松陰コモンズの方が熱いお茶をいれてくださいました。ありがたくいただきます。ごちそうさまでした。和室で座布団に座ってお茶をいただいていると、ワークショップをしているのだということをすっかり忘れてしまいそうです。くつろぐなぁ。庭で木の板を燃やしている方がいます。火の燃える赤がぼわぁっと廊下の磨りガラスに映っている。そういうのって、いいなぁ。すごい効果だなぁ。

写真  そのまま座布団でフルーツ・バスケット。りんご・ばなな・みかん、のようなグループ分けはしません。フードネームを使う。あるいはフリーで指示を出す。「昨日コンビニに行った人!」のような。ただし自分にも当てはまることでないとダメよ。それがルールです。
 椅子じゃなくて座布団だし、「正座でやりましょうよ」ということになりました。そのためかお行儀のよいフルーツ・バスケットでしたね。新鮮。あるオニの「病気で入院したことがある人!」という指示が、笑えるけどしみじみ哀しい。案外多くの人がこれに反応してワタワタ走り回る、それがまたしみじみ哀しい。
 さらにギリギリ・ルールを付け加えます。椅子とりゲームの要素はカット。こんどはオニの指示に何人の人が反応するか。その人数が一回ごとに少なくなっていくように。順番にオニになって指示を出します。これもおもしろかったなぁ。越後が「さっきいれていただいたお茶を飲まなかった人!」という指示で、ぴたりとストライクを出して一同感心。さすがカメラ係だ。君は観察していたのだね。

 ここまででもう時間は4時半。もう4時半?! はじめたのは1時なのに? うわぁ! 早すぎる…。

『タングル』

写真 写真  タングルっていう名前のおもちゃがありますね。美術館のグッズ・コーナーで売っていました。こう、ぐにゅぐにゅしたチューブ状のワッカで、動くんですよ。もっていけばよかったな。形を変えて遊ぶおもちゃ。やるのはそれとおなじです。みんなでランダムに手をつなぐ。それをほどいていく。手をつないだままでね。こういうの得意な人とそうじゃない人に分かれるんでしょうか。私は、当事者になってしまうと、もう全体が見えない。「こことここの間を抜けて」などと言われて「ああ!なるほど!」と感心しきり。タングルって、英語でからまるとかこんがらがるって意味だそうです。

『ペンキ屋』〜『サボテンの花』

写真  今回は3部屋を塗っています。部屋ごとにBGMを用意。ギルバート・オサリバンの「アローン・アゲイン」の部屋。さだまさしの「北の国から」の部屋。そしてチューリップの「サボテンの花」の部屋です。どの部屋も充実。いい色のペンキが塗れましたね。みんなセリフが上手だなぁ。私がいちばんダメですよ。アドリブが利かない。聞いていて「ほほー」と感心してばかりでした。今回のワークショップは私、感心してばかりだ。

 この長い冬が終わるまでに〜何かを見つけて生きよう〜♪
 何かを信じて生きていこう〜この冬が終わるまで〜♪

 チューリップのこの曲、明るい曲調ですがしんみりした内容なんですね。冬かー。今年は長いよー。これを書いている今は3月ですが、まだとっても寒いもの。今夜は大雪になるって言うじゃない? ぎゃおおおう。

写真  そんなこんなで最後のゲーム。名前はずばり「サボテンの花」です。みんなで小さなサボテンになります。ペアで背中合わせになる。背中でケンカする。背中で仲直りする。相手を背中に載せる。背中合わせで歩く。ほかのペアと合体して分裂する。ゆっくりと花が咲く。松陰コモンズの大広間いっぱいに花が咲いて、ワークショップは終了です。お疲れさまでした!

 ご参加くださったみなさん、松陰コモンズのみなさん、今日はありがとうございました。またお会いしましょうね。次回は3月27日。池袋の東京芸術劇場、リハーサル室にておこないます。ぜひまた遊びにいらしてください。お待ちしています。お知り合いの方をご紹介くださるのもとってもうれしいです。もちろん初めての方も遠慮なく遊びにいらしてください。演劇が遊び道具。稽古場が遊び場です。

写真  今回の特筆すべきトピックは、参加者のなかに高校生がいたことです。ようこそようこそ。ひとりでよく来たね。また来てね。ワークショップ25回目にして、高校生の参加はじつは初めてでした。
 私はかつて高校の演劇部アドバイザーをやっていました。いまも熱心な高校演劇ウォッチャーです。高校演劇のフェスティバルがあれば栃木、茨城、千葉、神奈川にまで出かけていきます。そんな私です。このワークショップに高校生が混じってくれるのは本当にうれしい。多くの高校生が、普通に参加してくれるようになるといいなぁ。私たちの平均年齢を君たちが下方修正してくれたまい。
 もちろん配慮は怠りません。君たちの安全はリーダーの私が守ります。気兼ねなく遊びに来てくださいな。いろいろな年齢の方々が混じった方がきっとワークショップは豊かになります。混ざろう混ざろう。高校生も年配の方々も。どうぞフットワークよろしく。歓迎いたします。

 演劇のケータリング・サービス「フットワーク」(本当にこの名前でいいのかしら?)。次回は池袋に飛脚します。フットワーク池袋。こんな日曜日も悪くないなぁと思っていただけるように。ぜひ楽しみになさってください。私も楽しみです。


【アンケートから】

《雰囲気&内容について》

写真 ○ひじょうにアットホームな雰囲気のなか時間を忘れて遊ぶことができました。
○雰囲気よかったですね。みんなが楽しくいられる空間でしたし。
○なごやかな雰囲気で楽しかったです。
○始まってみたら今日ここで初めて会った方々とは思えないくらいワキアイアイとしていて、超たのしかったです。
○ライン・アップの、手のあたたかい人順に並んだのが楽しかったです。
○バースデイでずっと同じようなセリフを言っていると時々言葉が生きていない時があって、その発見がおもしろかったです。
○ごみ問題、大事なゲームだと思いました。相手に言葉とともにポジティブな感情を伝える勉強になりました。
○ごみ問題やバースデイなど、なんかHAPPYになれて楽しかったです。シンプルなのに楽しいゲームいっぱいでした。

《リーダーについて》

写真 ○林さんの落ち着いた雰囲気がワークショップを作っていますね。みんなも導かれていましたね。
○林さんの力強さを感じました。
○とても誠実でわかりやすくて心地よかったです。
○おかあさんのような安心感がありました。話が長いのもステキです。
○林さんのワークショップ、また参加したい。

《その他》

○心地よい軽疲労で、よく眠れそうです。
○やっててとても楽しかったです。「みんなでやってる」感がすごくありました!
○場所がめちゃめちゃ良い。雰囲気がステキですねー。
○男性の参加者が少ないですね。男女比がもう少し近づくと良いですね。
○私が参加してきたワークショップはもっと荒々しかったりしてたと思います。無理な指示とかもなかったし、終始おだやかな気持ちですごすことができました。

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