△ 不等辺ワークショップ第18回 (2003/07/20)


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写真写真  アシスタントを務めさせていただきました江尻浩二郎です。今回の内容をレポートいたします。リーダーは御存知・林成彦。ダブルアシスタントに池田景という布陣です。参加者は、いたどり・はんぺん・なっとう・まんじゅう・ひしもち・夏みかん・いわし・たいやき・ハンバーグ・みりん・にぼし・いくら丼の12名さま。今回は前歴のあるメニューがほとんどなので、前回にひきつづき、参加者の方々に書いていただいたアンケートにオレがコメントを添えるという形でこのレポートを進めたいと思います。


「ジャグリング」

写真写真  これに関してはアンケートに意見なし。印象が薄かったのでしょうか? もっとみなさんを混乱させパニックに陥れたほうがよかったのかもしれません。個人的には「いたどり」という単語が出た時点で心が春の川辺に飛んでいってしまい戻ってまいりませんでした。うまいよね。おひたし。

「30サーティ」

写真 ●かなり難しい気がします。
 これはオレも参加しました。ゲームとして単純に面白かったですけどね。純粋に「間」「呼吸」のゲームというわけですが、気になったのは云うにしても云わないにしても同じリズムで振り子が揺れてたということですかね。やはりリズムを変えるんでしょうね。ロナウドが自分で持ち込んだときのように。攻めるならね。ま、別に引いてもいいんだけど、なんか人数が多いとあせっちゃうんだなあ。
●ひとりが「3・4」とか連続で言うのはあんまりよくないんじゃないでしょうか。
 そうですね。「間」のゲームですから、ただ単にゲーム性を縮小してしまったのかもしれません。
●ただやっただけ感を味わってしまいました。
写真 前回のレポートによれば、30まで云えるとかなりの達成感があったらしいのですが、今回は全くなかったですね。これ何故でしょう。前回も経験されてる方に訊いてみたいところです。ひょっとしたら今回のメンバーは「同じリズムで振り子が揺れてた」から「やっただけ感」になってしまったのかもしれません。これだけの人数で波長が合ってしまったというのは、実はとても稀なことだったりして。もちろん良い意味でね。

 リーダーの林です。そうですね、私としては全員でひとつの課題をクリアする達成感、というかつまりは一体感を感じたかったゲームです。結果としてひとりだけで「30」まで数えてしまったとしても、それが全員の阿吽の呼吸による結果であればOKなわけですね。途中「一回も発言していない人がいるのでは?」といった指摘があったときに、私がきっぱりとその旨ジャッジすればよかったのかもしれません。反省。この次にやるときは目的をはっきりさせて、ルールもそれに合わせて調整しようと思います。

「ペットバトル」

写真 ●ペットバトル優勝はうれしい。
●ペットバトルはどういう理由でやるのでしょう?
 理由はなんなんでしょうね。リーダーに訊いてみましょう。前回はかなり作戦的なゲームになったらしいんですが今回はほとんど肉弾戦。何故なの?リーダー! そして今回目的は達成されたの?
●ペットバトルおもしろいので、ルールをもっといろいろ考えるとより楽しくなると思いました。
 現状ルールでは2人が真剣にディフェンスした場合、点が入ることは100%ないのではないでしょうか。それを敢えて知らないふりして自分から隙をつくって攻撃参加するというのは、どうしてもゲームとしての緊張感に欠ける気がします。例えば、1.もっとコートを広くとりペットボトルの半径3メートルくらいにディフェンスが入れないエリアをつくる。2.味方同士が接触したらそれも失点(相手に1点)になる。なんていうルールを加えてみてはいかがでしょう。写真

 リーダーの林です。ええとペットバトルでは達成感や一体感のほか、勝負ごとにつきもののスリルや、勝ち負けによる喜びや悔しさ(?)などを楽しみたいなと。このゲームの醍醐味としては、攻撃役がだれなのかということを見抜く(隠す)点にあろうと思います。その点に重きを置くには、ルールにどんな工夫を施したらいいのかしら。
 私が以前、ホントは攻撃役ではないけどダミーとして敵陣に攻め込んだとき。私には自陣のボトル(が攻められていないこと)をちらっと見るクセがあったらしく、それを見抜かれて私からはマークが外れました。悔しかったです。クセに自分で気づいていれば、それを逆手にとって攻め込むこともできますね。プロのレベルだ。
 今回はチームごとにキャプテンを決めて、キャプテンの出身地(都道府県)をチームの名前にしました。優勝したのは香川県代表チーム。私たちスタッフによる愛知県代表と香川県代表が火花を散らした特別試合。決勝点は目にも鮮やかなオウン・ゴール! いやぁ、ありゃ楽しかった。というか悔しかったなぁ。

「目隠し挨拶」

写真 ●集中力が高まりそうなのでいいですね。
●肩から上の目隠し挨拶は、髪型でわかってしまったので物足りなかったかな。手はおもしろかったデス。
●目隠し挨拶が印象に残りました。手で人の特徴をつかむのは難しいなと思いました。
 おおむね好評です。まだまだ進化しそうな予感。次回にも期待しましょう。
●私触覚コミュニケーションをあんまりやらないから興味深かったです。
写真 というか、オレの場合つきあった女の子以外に他人の頭をべたべた触ったことはないですね。恥づかしがりだし。東北人だしね。あ、そういえば参加者の「夏みかん」さんも東北人でした。しかもオレのかあちゃんの実家のすぐ近所でした。「夏みかん」さんどうだったかな? 連絡待つ。かしこ。

 リーダーの林です。渋谷に「タッチ・ミー・アート」の専門ギャラリーがあって、私はそこに行くのが好きでした(今もあるのかな?)。そこでは彫刻などの美術作品を手で触って鑑賞するのです。大きな彫刻だったら抱きしめてみたりもしたかなぁ。このゲームはそのときの感覚を思い出させます。
 相手を見て、言葉を交わして、という以外にも私たちには強力なコミュニケーション方法があるんですよね。一見してあまり印象には残らない彫刻が、手で触ってみたら「おおおお」と感じることもありました。

「ペンキ屋」

写真 ●ペンキ屋前の本読み、呼吸が大事そうだし、プログラムに入れてもキレイじゃないかと思いました。
 今回はある小説の冒頭の部分を句読点で区切って読んでみました。1.1ブロックずつ。2.ブロックずらして2ブロックずつ。3.同じく1ブロックずらして3ブロックずつ。やはりみなさん芝居をやってる方たちなので文章を声に出すというのは基本的に好きみたいですね。特別ひねった内容ではありませんでしたがなんかとても楽しそうに、そして集中して見えました。
●ペンキ屋でなかなか自分の発言ができず、もっと積極的に何にでも関わっていくように日頃からしていないといけないと思いました。
写真  人数が多かったので仕方ありませんが余裕があれば2人ずつもやりたかったですね。2人ならしっかり自分の「間」でセリフが云えるし。人数が多いと前出の「30」と一緒でなんか焦っちゃうんだよね。その結果「間」を楽しめなくなっちゃう。本当は大勢でもそのへん落ち着いて、みんなで流れをリズムを感じて、じっくりのところはじっくりと進めていければ良いんだろうけどね。逆にひたすらスピードを追求するってのもありかな。面白そう。「ん」まで42秒!優勝!とか。

 リーダーの林です。今回も2回り目(というか2部屋目?)は、あらかじめセリフをひとつ決めておきました。「はひふへほ」の「は」で、「ハチだ(ハチがいる)!」と言います。決めていたのにちがうセリフを(いくら丼が、だっけ?)言ってしまって、全員で「ハチだ!」と訂正したのは楽しかったですね。どんだけハチを見つけたんだ? あれぞまさしく、ハチの巣をつついたような騒ぎ。
 じつはさらに。さいご「ん」で終わらせるのではなく、「んまだ(馬がいる)!」でつないで「あ」に戻る予定でした。もちろん江尻くんのアイデアです。私も乗り気だったのですが、当日はうっかり忘れていました…。反省。それにしても。部屋に馬がいるのに、なかなか気づかないペンキ屋たちって一体…。馬より大きなハチを見たのか?

「世界遺産の旅」

写真 ●なんどもやるとかなりつらくなってきます。
 しかしリーダーはやめません。一番好きですから。
●自分の気持ちを人に伝えることがへたなのをまじまじと感じたので、それも練習してうまくなっていきたいと思いました。
 どうやったら訓練できるんでしょうね。そのへんわれらがリーダーは何かをつかんでいる模様です。よろしかったら2度3度と足をお運びください。
●今日の世界遺産の旅、みんなよかったですネェ〜。「ファンタジーにとらわれず」というコメントがよかったと思います。
写真  この点は打ちあわせ段階でオレも引っ掛かったところ。ファンタジーを創作することに対する恥づかしさ・苦手意識みたいなものがどうしようもなくあるんですね、個人的に。小学校のとき詩を書かされたでしょう?「カーテンはつよいな。おひさまをかくしちゃって。」みたいの。何やってんだろうオレって思いました。きっとそのへんから創作するに際してのファンタジーに対する強迫観念みたいなものが植え付けられてるんだと思いますね。あ、別に良い悪いの話をしてるんじゃありませんよ。オレのように苦手な人間もいるってことです。 そのへんリーダーに相談したら、リーダーは別な意味でファンタジーへの傾斜を危惧していたようで(WS中にしっかり説明されてました。)、その結果今回は「ファンタジーにとらわれず」というコメントが出されるに到りました。今までを知ってる方からはこのメニューのハチャメチャさ・ばかばかしさみたいなのものがなくなってつまらなかった、という意見も聞きました。いろんな要素を内含したメニューだけに重点の置き方ひとつでガラッとかわってしまうということですかね。写真

 リーダーの林です。今回はタタミ式コロッセウム、府中競馬場、ひくコレルーム、アリの巣、ゴミ捨て山、マッチで埋め尽くされた部屋、キノコ山、なつかしの部屋、ペンギン村、久喜北陽高校の体育館、地下の大空洞、明治製菓高尾山工場、をおよそ30分でツアーしました。のよ。
 …もう素敵! あれもこれもそれもどれも、みんな中森明菜の「セカンド・ラブ」みたいに素敵! 抱き上げて連れてって時間ごと私を運んでほしい。のよ(合ってる?)。 稽古場にいながらにして、これだけの場所を体験できる私はしあわせです。せつなさのスピードは高まって戸惑うばかりの私。なのよ(?)。

<総評>

写真 ●2度目ですが、メンバーが変わるとまたちがった味わいがあっておもしろかったデス。
●みなさんが小出し小出しでネタを出したりしていたのがすごく楽しかったです。
●慣れた感じでワークショップが進んでいたので、とても安心して楽しめました。
●毎度ですが時間短く感じます。ふつう4時間も集中してられない筈。楽しさってスバラシイと思うです。
●1日ではやはり足りないと思いました。もっとやりたいです。
●接点のない人同士がかもし出す微妙な空気がおもしろかったです。
 かなり好評です。楽しんでいただければもうそれで本望でございます。
●林さんがすごいいい顔だと思いました。
●最初林さんは変人なんだと思ってました。ワークショップ始まる前まで。ちょっとした先入観があったので。すいません。でもやって先入観とれました。すごいいいですね。顔のつくりとか坊主頭とかじんべいとか。好きです。
 ありがとうございます。リーダーも喜んでいると思います。ぜひまた遊びにいらしてください。
●お菓子のセレクトがよかったです。


<あとがきのかわりに…>

写真  突然ですが。チャップリンの「街の灯」って映画があります。浮浪者チャーリーが盲目の花売り娘に恋をして大奮闘するというサイレント映画です。娘はチャーリーを大金持ちの旦那だと思いこみます。(どうしてそう勘違いするかというと、そこにはあまりにも鮮やかなアイデアが使われていて、とりあえず内緒。)チャーリーは娘の目の手術代をなんとかかんとか都合し、それがため警察に捕まってしまいます。写真 そしてエピローグ。時は経ち釈放され再び街へ戻ってきたチャーリーは相も変わらずみんなの笑い者ですが、ふと花屋のウインドウの中にあの娘を見つけてしまいます。そう、彼女は目が見えるようになり今はお花屋さんを営んでいるのですね。チャーリーは自分が嘲笑されていることも忘れ、呆然と彼女をみつめます。娘は全く気づきません。それどころか憐れなチャーリーにお金を恵もうと、彼女は外へ出てきます。あわてて逃げようとするチャーリー。チャーリーの顔は歪んでいます。残酷なシーンですね…。とうとう娘はチャーリーの手を取りお金を握らせるわけですが…そう、ここで娘の顔は凍りつきます。…画面中央にポツリと「You?」の文字…。その後に映るチャーリーの表情…。これ筆舌に尽くし難し、です。
写真  なんでこんなことを書いたのかというと、今回のメニューに「目隠し挨拶」てのがありましたね。その2回目はお互いの手だけをさわり相手を当てるというゲームでした。ペアを崩しランダムに移動してから目を開け「いっせのせ」でその相手と思う人を指差します。今回全部で6組でしたがお互いに当たったのは2組。違う人をさしてしまったその指先の虚しさを見て、オレは突然に「街の灯」を思い出してしまったというわけですね。リーダーはハズレた人たちを集め手の見せ合いっこをさせました。写真 しかし個人的にはみんなで握り合ったほうが面白かったなあ。握った瞬間の「あれ?この手だ…。うそ。この人?」という表情が見たかった。そう提案すりゃよかったのだけれど、このへんがパパッと思いついた時点ですでに涙が込み上げてきてしまい、それを隠そうとしてる間にタイミングを失ってしまいました。次回は是非その「答え合わせ」を実施してください。そしてこのゲームの名前は「街の灯」、もしくは「You?」ってのはいかがでしょうか。
 小汚い格好で何年も野宿で暮らしてたオレが心の底から思いますが、人間は「身なり」です。身なりは大事です。でも手は飾れない、かもしれません。手のひらは嘘をつけない、かもしれませんね。
 余談でございました。読みとばしてください。
 ではでは。エジリのレポートでした。 また会う日まで。


写真写真  リーダーの林です。アシスタントの江尻くんを簡単にご紹介します。彼は私の10年来の芝居仲間であり、日本国内の「全」市町村を野宿しつつ旅して周った愉快・痛快・怪物くんです。WS中にも、そういったことをさらっとお話してもよかったですね。旅に関わるメニューもあったことですし。

 今回「ペンキ屋」のまえに、口ならしとして簡単な本読みをしています。テキストには川島誠の「800」という小説の冒頭部分を選びました。今後も、口ならしの文章をその都度用意してみようかと思っています。小説にかぎらずね。このところBGMの選曲をすべてアシスタントに丸投げしているので、リーダーはテキスト選びを楽しんでみようかと。

 では。また。次回。

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