△ 不等辺ワークショップ第15回 (2003/03/23)


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写真第15回ワークショップは、2003年3月23日に実施。梅香る暖かな春の日でした。
リーダーはおなじみの「ワークショップの顔」男、林成彦。アシスタントは小野千草。今回は私、小野がレポートいたします。

今回は、第12回・13回ワークショップと同じく、1「ジャグリング」、2「神様」、3「カンペ」、4「ペンキ屋」、5「世界遺産の旅」、そして最後に「アフタートーク」というメニューでした。


「ジャグリング」

☆ 用意したもの…ボール3つ

写真
「ジャグ」と呼ばれる「輪っか状のもの(=リング)」があるのだろうと想像していた無知なわたくしは、そういう「輪っか」を投げ合ってコミュニケーションをとるのがこの「ジャグリング」というメニューなんだろうと思っていました。しかし!! みなさまご存じの通り、ジャグリングとは、いくつものお手玉とかボールとかりんごとかを自在に操る、文字通り「手玉にとる」ような、あのものすごいワザのことを言うんですね!
ふつうはそれを1人で行いますが、ワークショップでは参加者全員で行います。といっても、いきなりたくさんのものを投げ合うのはむづかしいので、少しずつ難易度を上げていきます。用意した“ボール”は、第10回のアシスタント越後が、このゲームのために100円ショップで探した(らしい)、何に使うのか不思議に思わずにはいられない形のヒトの頭くらいの大きさのもの。どれも丸くはないけれど、便宜上「ボール」と称します。
基本的な動きは3通り。

(1)アイコンタクトを交わして相手の名前を呼び、ボールを投げる
(2)アイコンタクトを交わして相手のニックネームを呼び、ボールを投げる
(3)アイコンタクトを交わした相手に無言でボールを投げる

写真この(1)〜(3)の動きを、体勢を変えながら行います。3つの違いを視覚的にはっきりさせるために、3種類のボールを用意して、このボールを投げるときは名前を呼ぶ、など、ボールごとにルールを変えます。ニックネームは相手の名前の頭文字をとって勝手に(でも「食べもの」に限定しました)つけちゃいます(例:はやし→はくさい、おの→おでん)。
円をつくって立ち、ボールは1種類、投げる相手は固定、というところからはじめて、ボールを複数にしたり、歩きながら、決まった相手ではなくアイコンタクトを交わした相手に投げたり、歩く速さを普通の速さの半分にしたり、一切声を出さずアイコンタクトのみで投げあったり、といろいろなパターンでの「ジャグリング」に挑戦。
歩きながらのジャグリングでは、ボールを投げたくても誰とも目が合わずに「誰か俺を見てくれ〜ぇ!」と雄叫びを上げるひと、「さあどこからでもかかって(投げて)こい!」と迫っていくひと、アイコンタクトをとったつもりが相手には伝わっておらず、ひとりよがりでがっかりするひと、などなど、いろいろな姿が。フクザツな恋愛模様を見ているかのような気持ちになった…と言えなくもない…かも。

声を出し、体も動かし、メンバーの名前を覚えたところで、次のゲームに移行。行こう行こう!

「神様」

☆ 用意したもの…人数分のカード(うち1枚だけに「神様」または「ラスカル」と書いてある)

 写真迷える人々が、「神様」を探し、「神様」に救済していただくゲームです。
リーダーは「このゲームでは『心理的な演劇体験』ができるのだ」と言います。
 まず全員でカードを引きます。「神様」と書かれたカードを引いた人は「神様」に、それ以外のカードを引いた人は救済を求める「迷える人々」になります。神様だけが目を開いて万物を見つめている世界で、迷える人々は目をつぶり視覚以外の感覚を使って神様を探します。そして誰かに出会ったら、「神様ですか?」と言って相手が神様かどうか尋ねます。「いいえ私は○○です。」という答えが返ってきたら、気を取り直して神様を探します。しずかに手を握られたら、それは神様による救済です。救済された人は、救済によって神様となり、手つなぎ鬼のようにつながって、まだ迷っている人を救済します。
写真 全員が「神様」になったあと、もういちど同じゲームを繰り返しました。ただし2回目は「神様」ではなくて「ラスカル」を探します。さっきは、「道に迷ってお先真っ暗、なんにも見えないワ。でも神様は全部お見通し。」だったのが、ラスカル探しでは、「ここは森、ラスカルはあらいぐまだから暗くても目が見えるけど、こっちは人間だから見えないのよネ」という状況になるのです。
 手足を使って壁の位置を確認して空間を把握しようとするひと、自分では部屋中を大きく動きまわっているつもりが実はそこらへんをうろうろしているだけのひと、かすかな気配を感じ取り、ずんずん神様に近づいていくひと、なかなか神様が見つからず「神様ですか?」「神様ですか?!」「神様ですかッ??!!」と切羽詰まっていくひと…。「神様」には、そんなひとりひとりの違いがよ〜く見えたのでした。
 目を閉じると、途端に不安になります。ふだん自分がいかに視覚から得る情報に頼っているかがわかります。それだけに、暗闇の中でそっと手を握られると、一気に不安が解消し、本当に救われた気持ちになります。幸せって、こういうシンプルなことなのかもしれないわ、とふと思ってしまいました。

探していた相手と出会って、いい心持ちになったところで、次のゲームへ。

「カンペ」

☆用意したもの…「セリフ」を書いたカードと「動作」を書いたカード(「カンペ」と称します)を60枚ほど・椅子2脚

男女が「天使」に見守られながら(?)お見合いをするゲームです。
写真まず、お見合いする人と「カンペ」を出す人(「天使」と呼びます)を決めます。天使はお見合い開始前に、数ある「カンペ」の中から4枚を選んでおきます。
お見合いペアは向かい合って椅子に座ります。「天使」はそれぞれの後ろに1人ずつが立ち、お見合いが始まったら、好きなタイミングで「カンペ」を提示します。お見合い中の人は、「カンペ」を出されたら、そこに書かれているセリフや動作がどんなに不本意な内容であってもとりあえず実行せねばなりません。お互いに、自分の相手が、いつ、どんな「カンペ」を出されたのかはわかりません。天使が悪魔に見える瞬間も、あります。しかし、困難を乗り越えてこそ、お見合いは成功するのです!…あ、力説しちゃった。
お見合い中にとっさに「カンペ」に従うことはもちろんですが、「天使」として「カンペ」を出すタイミングがまた難しく、「お見合いする人も、『カンペ』を出す『天使』も、ちょっと頭で考えすぎじゃない?」…という指摘が出ました。

 1対1のお見合いで理解を深め合った(?)後は、再び全員参加型のゲームへ。

「ペンキ屋」

☆ 用意したもの…椅子4脚

写真セリフのあたまに「あ」から「ん」までの50音を順番につけて会話を続ける、定番のゲームです。「会話しりとり50音バージョン」といったところでしょうか。いやいや、しりとりならぬ、「あたまつけ」ですね。
写真「ペンキ屋」に変身する前に、まずは準備運動。車座になって座り、全員で会話します。最後まで回った後に、今の会話をさかのぼって思い出してみました。会話のつながりがいまひとつだったせいか、苦労してひねり出したセリフの割に、なかなか前のセリフを思い出せず、最後の「あ」まで戻った時には、ちょっとぐったり。
では本番。柱に見立てた4脚の椅子で囲まれた空間が、これからペンキ屋のみなさんがペンキ塗りをする「部屋」です。ペンキの缶とハケを持ち、部屋の壁を塗りながら会話をする、という設定のもと、また「あ」から順に会話をつなげます。すると、まあ不思議。さっきは“無味乾燥ときどき不条理”だった会話が、生きた会話になるではありませんか。今回は第11回ワークショップと同様、「は」のセリフを予め「蜂だ!」に決めておきました。突然の蜂の襲撃に、せまい部屋の中でペンキ屋の皆さんは、「ひざだ!」「ふともも!」…と、大騒ぎ。でも、「楽勝!」と蜂を足で踏みつけて退治してくださった方のおかげて、みんな助かりました。あぁ、よかった。

  次はいよいよ、旅好きのリーダーが特に力を入れているメニューです。

「世界遺産の旅」

☆ 用意したもの…「世界遺産」記入用紙・筆記用具

写真 自分が世界遺産にしたいと思う場所をイメージし、その場所で旅をするというメニューです。
 まず、自分が世界遺産にしたいと思う場所を考え、「私の世界遺産レポート」という用紙に、その「世界遺産」の発見者として、そこがどんな場所なのかを詳しく書き出します。「遺産」というコトバにはこだわらず、とにかく自由にイメージしてもらいました。
写真20分間の構想時間を経て、いざ、旅へ。発見者はツアーガイドに、他の人は観光客になり、各地を3分間ずつ旅します。今回わたしたちが旅したのは、マイナスイオンを大量に発する「『いやし』の大木」(いいヤシの実のお土産つき)、かつて自分が引き起こしたあやまちを浄化できる「救いの丘」、咲くときにまぶしい光を出す不思議な花が池に浮かんでいる「星のうまれる場所」、象のお尻の下でふんころがし体験が出来る「スカラベの里」、有名な人工毛メーカーも大注目の、上ると鼻毛が猛スピードで伸びる「鼻毛族の祭壇」、大草原の中にたったひとつだけあり、極上の快楽が得られる「極楽トイレッテン」、重力が地球の2.5倍の“木星の森”や重力が6分の1になる“月の森”など惑星の名のついた森が続く「重力の森」。各地でいろいろな経験ができました。
その後は、2人組になり、今旅した場所を舞台として、その場所の発見者が書いたレポートと、ごく簡単な設定のみが書かれた「シナリオ」を使って、どんな芝居ができるか話し合い、15分後に発表。どの組も同じ「シナリオ」を渡されているのに、表れたのはまったく違う色。そしてその新鮮な発想には、発見者自身も驚いていました。

「アフタートーク」

写真ワークショップの最後は、質疑応答と意見交換。
今回のMVPは、リーダーが「ジャグリング」で困った時にはいつも視線を合わせてくれたオムライスさんに、アシスタント賞は「ペンキ屋」で蜂を退治した勇敢なみつまめさんに贈られました。

☆アンケートより☆

写真「ねらいを先に言ってもらった方がやりやすかったものもありました。」
「お見合いのゲームは天使がむずかしい。」
「ファミリーのような雰囲気で楽しい時間を過ごせました。」
「雰囲気としてはよかったと思います。内容としては、少し頭を使うものにシフトされすぎた感も。」
「世界遺産の旅でいろんな人の発想におどろかされました。」
ご参加くださったみなさん、ありがとうございました。お疲れさまでした。(

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