△ 不等辺ワークショップ第14回 (2003/02/16)


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 寒さが舞い戻った2/16。八幡山の稽古場に男性5名、女性7名の総勢12名の方たちが集まってくださいました。今回のワークショップをレポートしますのは、ワークショップ参加歴のない私、タカラギ(女)でございます。よろしくお願いします。
 八幡山の稽古場の入り口には、男湯、女湯ののれんがかかっていました。それをくぐって入ってくるわけです。(ちなみに皆さんはご存知と思いますが、これはハヤシさんの私物です! 私は、「なんて洒落た公共施設なのだ。 どこかでお風呂屋がつぶれたのか? 」 と思っておりましたが。)

そして13時10分過ぎ、ワークショップがスタート。
まず、準備運動として簡単なストレッチをしました。


「Walk」

写真  12人全員でリーダーの合図に合わせて動きます。(歩く、止まる、スキップ)空間と他人との距離感をつかんでもらいます。〈音楽はプリンス。。〉
 皆さん、まだまだ緊張しているといった感じでした。

「Stop Motion」

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6人ずつに分かれて、音楽に合わせて動き、リーダーの合図でストップします。他人との距離感と自分の身体の感覚を楽しんでもらうものです。
 リーダーからの「楽し気に」という指示により、皆さん笑いながら動いて、ストップしていました。〈同じくプリンス。。〉

「風船に聞いて」

写真 全員で輪になり、隣の人に風船をパスする(1回のタッチで)と同時に前の人が発した言葉から連想する言葉を言います。1回以上タッチしてしまったり、答えた言葉が連想ではないと判断された場合、罰ゲームとなります。→判断は林さんにお願いしましたぁ
 罰ゲームになってしまった人は真ん中に立って、リーダーの質問に答えました。「今日の朝ごはんは? 」という質問に「シュークリーム」という答えが返ってきてびっくり。
 今回、実は、6人ずつに分かれての”風船”も考えていました。それは、同じく輪になり、1人は中心に立ってもらいます。そして中心の人に向かって、風船をやはり一回でパスしながら、質問を出し、中心の人はそれに答えながら、輪の次の人に風船を返して、今度は次の人が質問をまた中心の人に出して……と繰り返しながら輪を1周するものです。

「後藤を待ちながら」

写真 「後藤を待っている」というだけの設定のエチュード。2チーム、6人に分かれ、順番に1人ずつ、舞台にあがっていきます。
 今回のワークショップの狙いのひとつに”お題をもらって即興で芝居を作る”というものがありました。出会ってすぐの人どうしだということ、即興に慣れていないと難しいのでは? …ということで、始めの内の即興は、設定もやりやすいものをと考えていました。しかし、皆さん始めからスパークして下さり、既に、設定を超えて自由に作っているように感じられました。例えば、いきなり、ぼけているかのような老人が現れたり……、その状況に、それぞれの役者さんたちが柔軟に対応していて、とても面白いものが出来上がっていたと思います。ほんと、取り越し苦労でした。

「ごじまんくらぶ」

写真  「ごじまんくらぶ」という架空の集まりの待ち合い室での一こま。それぞれが今日持ってきた「物」を自慢するというエチュードです。4人ずつ、3チームに分かれてテーブルの上に物を置き、1人ずつ登場して椅子に座って会話をします。最後に音楽がかかったら、立ち上がって物は置いたまま、部屋を出ていきます。

※皆さんが持って来た物を書いてみましょう※

 踊り用の扇子/まくら/うさぎのぬいぐるみ(顔は人間の女の子)/熊の人形2体/UFOキャッチャーで取った競馬のぬいぐるみ/コンパクト英和辞典/腕時計/ものさし/毛糸の帽子/マフラー/透明の亀/ネックレス
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 当初は、「上流階級の人たちが、言葉遣いはきれいなんだけど、さりげなく(あるいは露骨に)自分の物の自慢をして、相手の物の批判をする」というものをイメージしていましたが、これもいい意味での裏切りがあり、見ていて刺激的でした。
 例えば、人形を持って来ている人たちが重なったチームでは、自慢を通り越して、人形で遊んでいましたし……。いやし系グッズのコンクールのようなお話もありました。
 初めは自分の持ってきた物を使っていましたが、2回目は他の人が持ってきた物を使いました。この時には、1部”発想ゲーム”のようにもなっていました。(うさぎの人形が実は携帯電話だったり)→そういう遊びも面白いですよね。
 アンケートの中に書いている方もいらっしゃいましたが、やはり物には存在感、力がありますね。それに引きずられてしまうと、拡がりがなくなったりもしますが、うまく使えるととても面白くなりますよね。同じくアンケートに皆さんが持って来た物についてひとりひとりに聞いてみたかったというのがありました。→その通りですね。

「朗読三昧」

写真  あらかじめ渡しておいた「五右衛門」と「世界は一冊の本」という2編の詩を、一応、読みたい方を選んでもらい(若干調整しましたが)6人ずつ、2チームに分かれて朗読しました。
 始めは、リーダーの指示に従って2度読み、次にそれぞれの班に分かれて自分達で話し合い、演出を考えて発表しました。

※「五右衛門」チーム

写真  真ん中に石川五右衛門がいる。その周りを椅子に座って5人が取り囲み、それぞれ決められたパートを読んでいきます。この詩自体が台詞のような部分もあるものでしたので、お芝居の要素の多い、朗読劇とも言うようなものになっていました。五右衛門が後ろの語りに合わせて走り回っているのが印象的でした。

※「世界は一冊の本」チーム

 始めの内は全員で歩きながら、自分のパートを読んでいきます。途中のきっかけで皆さん立ち止まって読んだりして、最後は1人だけ舞台に残り、ラストの言葉を言います。

 とても盛り上がりましたよね。限られた時間の中で、しかも初対面の人どうしで、話し合って演出を考えるというのは難しいのでは? という心配もありましたが、皆さん、思った以上に熱心に、楽しんで作ってくれていたように思いました。
 出来上がった作品(と呼びたいものでした)も非常に手の込んだもので、どちらも”短時間に良くぞここまで!!”という出来だったのではないかと思いました。あらかじめ与えられていた詩だったということで、それぞれが読み込んでいたということが大きかったのではないでしょうか。もっと時間があればもちろん洗練されるとは思いますが、この短時間の集中で作るというのも勢いがあっていいものなのかもしれませんね。きちんと決まらなくても、最後は開き直ってやるしかないというのも稽古になるような気がしました。

「椅子」

写真  役者2人による椅子の取り合いのエチュード。1人が椅子に座っているところに、もう1人が入って来て、なんとかしてその椅子に自分が座ろうとします。座っている方は何とか座っていようとします。(話の流れで、立ってもいいなと思った時には立ってもかまいません。)
 これも面白い作品がたくさんできました。
 みんな、それぞれ味のある作品でしたが、いくつか印象深かったものを挙げてみたいと思います。
 まずは、「クララとハイジ」でしょうか。立つことのできないクララがハイジの力によって立ち上がるというのもでした。座っている役者が椅子の下に寝転がった役者に向かって「ハイジ!」と声をかけた瞬間に下の役者さんがとまどいながらも即座にハイジになったところが、私としては面白かったです。やはり、即興というのは役者の柔軟性を訓練するのにはもってこいですね。
 それから、「アイドルとファン」というのも好きでしたね。居酒屋(?)かどこかに来ていたアイドルを発見したファンが、そのアイドルにいろいろなことをやってもらうというものでした。個人的には、ファンの問いかけにアイドルが、案外、あっさりと席を立ったところが好きでしたね。人の良いアイドル! って感じで。
 そして、「爆弾と娘」。娘が座っていると、突然「動くな−!」と声がかかる。「実は爆弾がおしりの下に敷かれていて、動くと爆発する」と言う。初めて爆弾処理するという男性が携帯電話を片手に娘に指示を出していくというものでした。爆弾処理の男性が話を引っ張っていったのですが、それにきちんとよい反応を示し、効果的な見せ方が出来ていた娘さんがとても良かったと思います。男性の指示に従い、両手を床について足を挙げさせられたり、「体重は何キロ? 」との問いかけに「こんな公共で言うとは思いませんでした」と動揺しながらもはっきりと答えたり、笑いの中にも緊張感のあるいい作品でした。
写真  もう1つは、「4番目の影武者」ですね。飛行機に乗っていると、突然、機内アナウンスで、「3つのエンジンが壊れた」と流れます。手前に座っている女性は、客だと思っていたら「長官はこちらからパラシュートでお逃げ下さい」と言われます。立ち上がりたくない女性は「実は私は4番目の影武者なのだ」と答え、「だから不必要な私よりもあなたがお逃げなさい」というような展開になっていきます。これも、発想もさることながら、相手の流れに逆らわず、柔軟に対応しているところがさすがだと思いました。途中、「こんな風に長官として扱ってくれてありがとう」という台詞があったのですが、その時、この芝居が始まった時にとても嬉しそうに日記か何かを書いていた姿が思い出され、(ああ、きっと4番目の影武者なのであまりこういう待遇の飛行機に乗ったこともなかったのだ)と勝手に想像して面白かったです。

 椅子という即興は長い間、私も稽古でやってきたのですが、役者によって本当にいろいろな作品ができるものだととても興味深かったです。 

「お題ちょうだい」

 4人ずつ、3チームに分かれ、それ以外の人からお題を貰い即興でお芝居を作ります。

※1チーム目「こっぱみじん」…男性2人、女性2人

 何かを探している人がいます。それは自分で埋めたもので、でも何を探しているのか忘れてしまいました。そこに妹がやってきます。通りすがりの人も来ます。そして、一緒になって探します。それが自分にとって危険なものだということは分かっているのですが、なかなか見つかりません。結局、箱が見つかり、その中身は母親の大切にしている花瓶がこっぱみじんになったものでした。

※2チーム目「色気」…男性3人、女性1人写真

 コンタクトレンズを探しているおじさんがいます。そこに子どもがやって来て、一緒に探し始めます。そのコンタクトはとても危険なもので、なんと、エッチなものを見ると爆発してしまうのです。奥さんがそういう風に設定したというのです。しかも、本人が見るのではなくて、コンタクトレンズに映ると爆発するのですから大変です。通りすがりの人が(そんなことあるだろうか??)と思いながらも一緒に探し始めます。そこに色気むんむん(?)のちょっと勘違い女っぽい女性がやって来て、携帯電話で話し始めます。みんなでコンタクトレンズに映らないように四苦八苦するのです。→コンタクトレンズが爆発するなんて、始めは突拍子もない話に感じましたが、通りすがりの人が「そんなことあるはずない」といった反応をしてくれたので、急に現実的な話となりました。ほんのちょっとしたことで空気が変わる。面白いものです。

※3チーム目「もち」…女性4人

 先輩の元(アパートでしょうか)にひとりずつ集まります。どうやら今日はもちつき大会のようです。順番にきねを持って来たり、うすを持って来たりします。「さて、もち米は?」と待っていると4人目が現れます。しかし持って来たものは「胚芽玄米」。しかもおそらく炊いていないもの。「とりあえずついてみよう」ということとなり、水を入れ、きねを振り上げて餅つきが始まります。そして、出来上がったものは…? 何故か異常に伸びるものでした。こんなもの一体誰が食べるのだろう? やはり、先輩の役目なのか?

 どれも味わい深い作品だと思います。このワークショップの短い間に、それぞれの役者どうしと、それから即興にも慣れてきていたように感じました。特に「もち」は、アンケートにも『息が合った瞬間がすごく気持ちよかった』というコメントがありましたが、皆さん息も合っていましたし、なによりとても楽しそうでした。私の勝手な印象なんですが、即興で女の子が集まると、食べ物の話になって盛り上がることが多いように思うんですね。「もち」はまさに、食べ物ですし、女の子ですし……私も一緒に混ざって遊びたくなりました。

「カーテンコール」

写真  6人ずつ、2チームでぞろぞろ出てきて挨拶がわりにフリートークをします。曲が流れてきたらご挨拶でおしまい。
 これは皆さんやりにくそうでしたね。リーダーの意向がいまいち伝わり切れなかったためだと思いました。例えば「笑っていいとも」の終わりのフリートークのような感じを目指していたのではないかと思います。

 最後に本日のMVPとアシスタント特別賞が発表されました。MVPは"爆弾処理男"のマツモトさん。アシスタント特別賞は"もち"のウチノさんでした。
    →これは本当に決めるのが大変でした。どの方も印象的だったので。


【リーダーからのコメント】

写真  みなさま、今回はおつかれさまでした。私の説明不足で、意図を上手くお伝えできないプログラムもありましたが、ま、御容赦くださいませ。。私が芝居の稽古に「即興」を使うのは、即興自体が目的ではなく、あくまでも普通の芝居のために取り入れています。あらかじめ決められたセリフがある芝居をいかに新鮮に、いきいきとしたものにするか。これが役者の重要な仕事の1つなのですが、即興をやることによって、その新鮮な状態というのはどういうことかという感触を味わうことができます。またこの意識をもって即興に臨むと「その場にいる」感覚を養うことができます。そして質の高い即興を目指すと、おのずと「相手を受け入れる」ことに導かれます。これはとても大切なことです。ですから「即興」は突発的なネタで勝負するのではなく、相手やその場の空気をしっかり受け取ることがまず必要となります。これは普通の芝居でもそうですね。何だか偉そうなことを書きましたが、みなさまの今後の活動に少しでもお役に立てば幸いです。よかったら5月の私のワークショップにもお越し下さい。

【タカラギの感想】

写真  今回のワークショップはほとんどが即興でした。即興を出会ってすぐの役者さんと共にやるというのは、大変なことだと思います。楽しい反面、すごく難しかったのではないでしょうか。即興で芝居を作っていると、つい笑いに走ってしまいがちですよね。即興を稽古することが芝居の稽古にどのように役に立つのかそういった話がもっとできればよかったと思いました。(リーダーからのコメントにありますが)
 その他、音楽をかけて終わるという即興がいくつかありましたが、もう少しヴァリエーションのある音楽を用意しておいて、その作品に合わせて音楽を選び、タイミングを見計らってかけたりできればより面白かったなとも思いました。
 アンケートもありがとうございました。皆さんとても楽しかったようですね。特に人気の高かったプログラムは「お題ちょうだい」でした。
 それにしてもあっと言う間の楽しい4時間でした。また、どこかで皆さんにお会いできることを願っています。そして、スタッフの皆様もお疲れ様でした。今度は私もワークショップに参加したいと思います。


 写真 ワークショップ管理部のハヤシです。今回は「特別企画第1弾」と銘打ち、はじめて劇団外の方にリーダーをお願いしました。今後も第2弾第3弾を繰り出し、いずれはこれが「特別な」企画ではないようにしたいものです。ご期待ください。

写真 酒井孝宏さんは俳優、作家、演出家としてすでに10年以上の経験をお持ちで、現在は主に小金井市内の劇場「現代座会館」(「持ち小屋」だそうです!)を拠点として活動なさっています。演劇ワークショップはもとより、朗読の講座や演劇の勉強会などさまざまな企画をプロデュースなさっていて、私は感心させられることしきりです。本文中にもありますように、5月には全8回のワークショップをなさるそうです。ご興味をお感じの方はぜひ参加なさってください。当劇団にお尋ねくだされば、詳細を私がお伝えいたします。

 私は酒井さんとは数年前にとあるパフォーマンス企画でご一緒したのがはじめです。以来たがいの活動を「横目に見る」というか、なかなか稽古場でご一緒する機会がつくれず残念に思っていました。共演でもしない限りは稽古場では会えないですからね。
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 つねづね私は興味を感じた方には「次は稽古場でお会いしたいです」と言います。劇場で(出演者と観客として)会っても当たり前の経験しかできないし、飲み屋で会ってもたのしいだけだからです。とはいっても、じゃあ共演するために芝居を一本つくるのかというと、それもたいへんな話ですよね。
 今回このような形で私は酒井さんの「酒井的なるもの」、というか「酒井ワールド」に触れることができました。ひとつの念願がかなって私はひじょうに喜んでいます。ぜひ今後も多くの方をお招きしたいものです。単なる「出会い系」とはちょっとちがって、「世界のいりまじり」がこの場所で起こるといいですね。
 この稽古場が私の念願をつぎつぎにかなえてくれることを思うとワクワクします。そして多くの方がこの場所をそのように使ってくださるようになると「What a Wonderful World!」ですね。(いや「Innocent World」かもしれないし、「It‘s a Small World」かもしれないけど)。いずれにせよ、稽古場はなんらかの世界。

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