△ 不等辺ワークショップ第3回 (2001/05/13)


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 ワークショップもこれで3回目。今回は参加者も増えました。いよいよ軌道に乗ってきましたね。軌道に乗る、まるで宇宙船のような表現だ。実は「地球との一体感」が今回の隠しテーマ。2001年は宇宙の旅だ。回る回るよ地球は回る。すでに回っているリーダーは僕(林成彦)。アシスタントは中澤日菜子が務めます。みなさん。よろしくお願いいたします。  今回から終了後にはささやかな打ち上げを行なうことが決まっています。集合時間よりも早めに現地に到着したリーダーは、きょろきょろと街の下見に出かけます。さっそく「生ビール1杯180円」の看板をチェック。しかも会場から徒歩1分だ。よし。この店で燃え尽きるのだ。最近のリーダーは実は飲み会の機会がほとんどありません。ワークショップよりも打ち上げのほうが不安だったりします。「しめやかな打ち上げ」になったらどうしよう。逆にあまりおかしな盛り上がり方をしても…。まぁやってみなきゃわからないこともありますしね。それが人生。リーダーはちいさな声で「だからあなたも生きぬいて」とつぶやいたのでした。  さてアシスタントとの最後のうちあわせも終わり準備は完了です。受付をすませ、会場に集まってくださったメンバーは14名。うち初参加者は7名。今回はどんなワークショップになりますやら。さてさて。はてはて。


『ニックネーム』

 ワークショップの始まり方にはいつもアタマを悩ませます。これといったアイディアが浮ばない。今回は水の冷たさや砂浜の感触などを足裏に感じる、いわゆるイメージ・トレーニングからスタートしました。BGMには波の音を。これが最適な始まり方かどうかはわかりません。まぁいろいろと試してみて、いつかこれだという答えが見つかればいいですね。リーダーはちいさな声で「明日があるさ」とつぶやいたのでした。  今回のメンバーは「チョモチョモ」「タコタコ」「マキワマキワ」「ケニヤケニヤ」「コクバコクバ」「ヒケシヒケシ」「アジノアジノ」「エンピエンピ」「サンドサンド」「ユーカユーカ」「カラスカラス」「サツマサツマ」「ケンコケンコ」「マリモマリモ」のみなさんです。なんだか宮崎駿の古いアニメ(ナウシカとかラピュタとか)に出てくる脇役の兵士みたいですね。うっひゃあああああ、と叫びながら戦闘機から落ちて行きそうな名前です。ちなみにリーダーは「ナマズナマズ」。アシスタントには名前を作るのを忘れていたね。いま気がついた。

『スリリング・ウォーク』

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顔は笑っているが膝もまた笑っているケンコケンコ

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ちょっとテレてるユーカユーカとサツマサツマの相合傘

 部屋を自由に歩き回るというもの。そこに少しずつ条件を加えていきます。はじめは雪。雪の降る街をイメージして歩きます。雪の降る街を想い出だけが通りすぎて行く。つぎは雨。せっかくだから相合傘で歩きましょうよ。一本のカサを楽しそうにシェアするふたり。ちょっとテレながら。いいですね。でも出会いのあとには別れがあります。彼らがけっしていい雰囲気にならないように。リーダーは細心の注意を払うのです。雨のつぎはカミナリ。カミナリに撃たれた人は「アァッッ!!」と叫んで硬直し、ゆっくりと倒れていきましょう。みんなはその人が倒れてしまう前に、駆け寄って身体を支えてください。これがけっこう気持ちいいんですよね。ホント。リーダーはちいさな声で「君はいつも僕のクスリ箱さ」とつぶやいたのでした。

『彫刻家』

 はじめに身体の力を抜くことから。野口体操で呼ばれているところの「安らぎの動き」と「上体のぶら下げ」を行ないます。これはもっと時間をとってじっくりやってもよかったですね。身体がだんだん楽になっていくのが実感されたのではないでしょうか。ちなみにリーダーは買ったばかりのストップ・ウォッチの使い方がわからず、ずっと日付を確認していました。たぶんタイムはそれぞれ3分間ぐらいだったと思います。

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マキ割りをするマキワマキワの像

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あ、白髪。

 さて「彫刻家」です。ペアを組み、ひとりは彫刻家に、ひとりは彫刻になります。彫刻家は素材を自由に扱って、彫刻作品を作ります。彫刻の人は身体を相手に委ね、単なるオブジェに徹します。作品にはそれぞれタイトルをつけ、彫刻家たちで作品の展示会を行ないました。「はばたき」「あ、白髪。」「マキ割りをするマキワマキワ」あたりの作品が印象に残っていますね。これもやっていて気持ちのいいものなのじゃないかと想像しますが、どうだったでしょうか。ちなみにリーダーは、3人の男女が呆然とした表情で立っているという彫刻を考えてみました。タイトルは「永遠の仔」。…だめ? このゲーム、実は毎回予定に入っていたのに時間の関係でやれなかったんですよね。今回はじめて実行できました。  ここまではカラダ編。休憩をはさんでコトバ編です。

『@(アットマーク)』

 場所の設定だけを決めて、その場で対話をするというもの。場所の例として喫茶店と森の中を想定しました。ただ結論を先に言うと、このゲームはあまりうまくコトが運びませんでした。その要因なども含め簡単にゲームの趣旨をまとめます。

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カミナリに撃たれる快感を知ったマリモマリモ

 このレポートをリーダーは書きコトバで書いています。友人にメールを書くときもそうです。日記を書くときもそうです。でも同じ書きコトバだけど、その3つはコトバがちがうはずです。ちがいますよね。これと同じことが話しコトバにも言えるはずです。このゲームのねらいは、対話をしながら話しコトバの交通整理をしてみようというものです。対話がつまり交差点ですね。喋るコトバを信号機で切り替えて、意識されたコトバを使うというゲームでした。  でもこれはリーダーがわるかった。ゲームのルールをもう少し工夫するべきでした。演劇の経験がある人ほど、ねらいから外れた対話をしてしまったように見受けます。おそらく場所の設定があることで「芝居」をしてしまったのでしょうね。つまり役作りをして、ストーリーを進行させて、という作業です。それをやると交通整理はできません。なぜなら…というようなことを今後ゲームのなかで考えていきましょう。

『4枚の絵』

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箱チームのタコタコ

 これはグループによる表現です。各グループにお題が与えられます。そのお題から簡単なストーリーをこしらえます。それを4枚の絵で伝えるのが約束です。絵とはメンバーたちによる静止画像、つまりストップ・モーションのこと。ストーリーを伝える大事な瞬間を4つ切りとってください。漫画だったらフキダシのなかにセリフがありますが、このゲームではセリフはなしです。お題はそれぞれ「箱」「袋」「時計」。相談する時間は20分間。  このワークショップでグループ表現をとりあげるのはこれがはじめてです。メンバーたちが和気藹々と相談しているのを眺めるのは、リーダーとしても楽しいものでした。各チームの作品はそれぞれに工夫が凝らされ、一人一人の表情も良かった。20分では短いね。もっと時間をとるべきゲームでした。このゲームはやるごとにもっと「見せ方」「作り方」がつかめてくるものだと思います。リーダーもこれは勉強が必要ですね。もっとシャープなコメントを加えられるようにならないと。

『熱さましのエクササイズ』

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ちょっと宗教っぽいクールダウン

 これでワークショップは終わるんだぞ、ということを身体に伝えるための簡単な運動です。写真でおわかりのように、いかにも気持ちのよさそうなことをしていますよね。リーダーも輪に加わりたかった。BGMとして波の音をもう一度ここで使いました。地面から感じた熱を地面に返す。地面から蒸発した水分が雨となって地面に戻る。波にはじまり波に終わる3時間のワークショップでした。以上。終了。  ご参加くださったみなさん。おつかれ様でした。


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優秀者2名を囲んで

 やはりいつも終わってみて思うのは、3時間なんてあっという間だということですね。準備の段階では3時間は長い気がして、たくさんのゲームを集めてしまうのです。今後はすくないゲームをじっくりやった方がいい場合もあるように思います。というようなことを考えている間にも、一同は打ち上げの場へと移動。リーダーは酒に酔ってしまわないように、こっそりとキャンディータイプのチーズをひと袋(ひとつではない)お腹に詰め込みました。でもやっぱり酒に弱いのはどうしようもないことであるよ。まだ日のあるうちから飲むビールはどうして回りやすいのか。みんなはどうしてこんなにビールに強いのか。1杯180円だからってそんなに頼まなくてもいいじゃないの。リーダーはちいさな声で「チーズはどこへ消えた?」とつぶやいたのでした。あまり酔い止めの効果はなかったことであるよ。あとのことはアシスタントにまかせた。

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目が泳ぐリーダー

 ワークショップ。何をやるんだかやらされるんだか、不安と期待で胸をふくらませ会場にやってきてくださっていると思います。
 そんな参加者のみなさんへのエール! それは自分へのエールでもあります。  何かゲームがあって、リーダーが「どなたか最初にやってみませんか」と尋ねたとき、なるたけしり込みしないでほしい。
 そりゃ人間、恥をかきたくない。
 特に「恥の文化」をもつ日本人。できれば自分以外の人から始めてほしい。 「誰かが始めるまで待つ」
「みんながやり終わってしまったからやる」  でもそれって違うと思いませんか。
 少なくとも「ワークショップ」という「何でもあり。自分を試そう」という場にはふさわしくないと思いませんか。  どんどん恥をかきましょうよ。
 それを指摘されましょうよ。
 そんでもって恥ずかしくて恥ずかしくて仕方がないけれどなんだか清清しい気分を味わいましょうよ。
 私たちは「ナニカアタラシイコト」を見つけに来たのであって「イママデノジブンヲマモル」ためにこの場にいるわけではないのですから。
 だいたい「マモルベキジブン」に、そんなに価値がありますか?  その意味で私は今回のマリモマリモさん、好きっっ!!
 あの場で、最初にカミナリに撃たれるのは勇気がいったと思います。
 でもそれを乗り越えて、いきなり「ああっ!」と官能の声うち震わせ、カミナリに撃たれたあなたの姿を私は生涯忘れることはないでしょう。

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ようやく終わったぜ!

 次回からまた私も一参加者に戻ります。
 そして社会では、劇作家の端くれとして、日々恥をかきつつ、戯曲を書き続けてゆきます。
 でも私は書くことを止めない。
 どんなに恥をかいても、書くことを止めない。  だからこれはエールです。
 皆さんへの、そして「ジブンヲマモリタクナル」自分への、エールです。(中澤)  次回のワークショップは7月中旬を予定しています。
 すでに内容、場所などの検討をはじめています。ご期待ください。
 ワークショップについての感想、意見、質問など、劇団宛てのご連絡をお待ちしています。
 なお私ごとですが、リーダーは劇団ページにエッセイを連載中です。よろしければそちらもご覧くださいませ。(「神様! これがすべてでございます!」)

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