△ 不等辺ワークショップ第2回 (2001/03/11)


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 前回にひきつづき僕(林成彦)がリーダーを、アシスタントは越後かずえが務めます。みなさんよろしくお願いします。写真

 この日は朝から日差しがあたたかく、空は青く広くすっきりと晴れ渡っていました。うむ、これは絶好のワークショップ日和であることよと僕は気合いも十分、深く息を吸い込んでアパートを出たのでした。

今日の僕の目的 : ワークショップのリーダーを無事に務めること。

障害1 : アパートの入り口で転んで、右足首をねんざしてしまう。
   →駅までの気の遠くなるような長い道のり。

障害2 : 乗るつもりだった急行に間に合わず、うち合わせにおくれる。
   →すまない、越後。

障害3 : カラオケ・グループの歌声が(マイクの性能が)みごとで、うち合わせに集中できない。
   →別フロアの幼児用遊戯コーナーがあいているのを見つけ、移動する。

障害4 : 管理人さんに「あなたたちは幼児なんですか?」と注意される。
   →目をきらきらさせて「そうだよ。ボクたち年長組なんだよ」。

 そんないきさつで、本日のワークショップは「不等辺さんかく劇団」改め「不等辺さんかく幼稚園」が主催する父兄参観おゆうぎ会とあいなりました(ウソ)。ご迷惑をおかけしたみなさん、すみませんでした。足の痛みは一日たらずでひきました。さて! 満を持して(マジで)おこなわれた第2回のワークショップ! その様子を以下にレポートします。さてさて。はてはて。


『ニックネーム』

 初対面のメンバー同士をいかに早くうちとけさせるかはリーダーの腕の見せどころです。なのですが、さりとて新たな知恵もなく、今回も各自でニックネームを作ってもらいました。やはりファースト・ネームとおなじ頭文字をもつことばを選ぶことにします。

 例:「なるひこ」→「なげなわ」 なわを投げるアクションをつけて名乗る。

 ここで作ったニックネームとアクションを用いて、いくつかのゲームをおこないます。写真
 今回のメンバーは「けんだま」「さらまわし」「こいごころ」「つむじかぜ」「ひまわり」「マッチ棒」「ジンジャー」「ゆきがっせん」のみなさんでした。一読しておわかりのように「こいごころ」が断然輝いていますな。そうか、こいごころと来たか。積極的なアピールだ。うん。

 ひきつづいて次のゲームは稽古場を縦横無尽に歩き回るというもの。歩きながら、他のメンバーと目が合ったら相手のニックネームを呼んで簡単な挨拶(手をパチンと合わせる)をするというのが約束です。

 自己紹介の延長のつもりでしたが、始めてすぐにメンバーから「自分は相手を見ているのに、相手がそれに気づいてくれないことがある」という意見が出ました。なるほど。それは悲しい。だけどね園児のみんな。人生とはそういうものなんだ。君たちも大人になればきっとわかるはずだよ。いつか「青春」という名の輝かしい季節が君たちにも訪れるだろう。そのとき君たちがきちんと相手の名前を呼んで、きちんと挨拶することができたら先生はうれしいな(ドリアン先生は語る)。
 僕は気づきませんでしたが、ひょっとするとこのゲームのとき「自分は遠くからずっと見ているのに、ちっともこっちを見てくれない…。いつも他のひとと楽しそうに挨拶している…。こいごころのバカ」だなんて思っていたひともいたのかもしれません。

 ひとは知らないところでひとを傷つけたり、ひとりで勝手に傷ついたりするものなのですな。人間は悲しい。こいごころは切ない。のっけからなんともほろ苦いゲームになりました。

『バトル・ロワイアル』

「人生はゲームです。今日はみんなにちょっと殺し合いをしてもらいます」ジャジャン!
 これは各自が腰のうしろにタオルをぶら下げ、全員でそれを奪い合うというもの。タオルを取られたら、そのひとは死亡。ものの本には「しっぽ鬼」という名で紹介されてもいるゲームです。身体も動かすし、やりながらコツをつかんだり協力作業がうまれたりと見どころがいくつもあるゲームでしたが、僕がいちばんショックだったのはフレンドリー・タイムのときでした。
写真
 殺し合うばかりでは単調になるかなと思い、15秒間の停戦時間(フレンドリー・タイム)を設けました。この時間だけは殺戮をおこなわない約束で、生存者たちにはさきほどのゲームと同じく、目と目を合わせて簡単な挨拶を交わしましょうと提案をしました。しかししかししかし。彼らは互いに挨拶はするものの、いまや真心のこもらないぎこちない挨拶しかできなくなっているのです! ここにあるのは明らかな相互不信! 人間は悲しい。さっきまでは「中学生日記」のような青春を生きていたはずの彼らが…。次にこのゲームをやるときは、BGMに「あの素晴らしい愛をもう一度」を用意しようと思った僕でした。

 はからずも今回は人間の悲しさが浮き彫りになるようなゲームが続きました。ワークショップの内容がこんなに深くていいのでしょうか? 人間世界のありさまを離れた位置で眺めていると、これはいけないことですが、なんだか自分が神様にでもなったような錯覚がありますね。神様といえば(ニヤリ)、僕の個人エッセイ「神様! これがすべてでございます!」もよろしく。ジョビッ!(断罪された音)

『クラップ回し』

 全員で輪になり、隣のひとに向かってクラップを打ち、それによって順々にクラップを回していくというゲーム。それだけでは簡単なので、徐々にバリエーションを加えていく予定でした。それが、ほんの少しのバリエーションで、思ってもみないほど高度な技術が要求されるゲームに変貌してしまったのでした。これはちょっと失敗かな。やってみないとわからないこともあるなぁと、これには反省されられました。

 ただ途中、全員が円の外側を向いてゲームを試みたときに限れば、クラップの流れを音だけで追いかけるため、聴覚に意識が集中されます。これは他のゲームとは違った新鮮な体験だったかなと思います。

『目的と障害』

写真 前回好評につき、今回もこのゲームをおこないました。行動の目的とそれを妨げる障害を各自で設定し、60秒間のひとり芝居を自作自演してもらいます。プロット用紙と鉛筆を配布し、考える時間は5分間。メンバーのみなさんが考えた目的は以下のようなものでした。


写真写真
 それぞれの目的にどのような障害が訪れたのかはご想像におまかせします。ぜひ想像してみてください。上演時間が60秒というのはやはり短いようですね。あまりいろいろなことを表現する時間的余裕はなく、シンプルなプロットを手際よく演じなければなりません。

 みなさんのプロット用紙を回収して、そして今回はこの「目的と障害」をもう一度くりかえします。一度目の反省や問題点をふまえた上で、次の2点を課題として加えます。考える時間は10分間。
 1.他のひとが書いたプロットをもとに演技プランを練ること。
   (プロット用紙はシャッフル。誰の書いたプロットにあたるかはわからない)

 2.60秒用に書かれたプロットを90秒用にふくらませること。
   (障害を作りなおしてもよい。目的は与えられたもののまま)
写真
 結論を先に言うと、(僕は見ていただけですが)これはたいへん勉強になりました。演技時間の制約がゆるくなった分、駆け足の(先を急ぐ)演技は見られなくなったし、ひとによっては障害を整理してまったく新しいストーリーを作るなど、それぞれに見どころや発見がありました。ましてやメンバーのみなさんにとっては、自分の書いたプロットがひとに演じられるのを見るのだし、自分の順番も回ってくるし、僕以上にいろいろと思うところがあったことでしょう。このゲームはおもしろいなと改めて思いました。


 以上。今回も終わってみると3時間があっという間でした。実施したゲームの数は少なかったものの、それぞれの内容は充実していたと自負しています。ない知恵をさらにしぼって、次回以降もいっそう豊かなワークショップが企画されることをお約束します。ご期待ください。写真

 今回のワークショップにアシスタントとして参加しました越後です。2回目といえどもまだまだ手探り状態。ゲームのルールもその場でどんどん変わっていきます。リーダーだけでなくメンバーからも新ルールの提案があったりして、そのやりとりは真剣に遊ぶ休み時間の小学生のようでした。

 ちょっとだけいつもと違うルールで遊んでみる。
 ちょっとだけいつもと違う筋肉を使って身体を動かしてみる。
 ちょっとだけいつもと違うアタマの使い方をしてみる。

 となりのクラスの休み時間の遊びをのぞきに行くくらいの気持ちで、いろいろなひとに参加してもらえるワークショップにしたいです。(越後)

 次回のワークショップは5月中旬を予定しています。
「知恵を貸してもいいよ」という方がいらっしゃいましたら、ぜひ劇団宛てにご連絡をください。
 ご意見、ご感想などもあわせて、みなさんからのご連絡を(神様のお声を)お待ちしています。

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