△ 「よそびと診療所」シーン7


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字幕「2025年8月 東京多摩地区某所 診療所」
明転すると上手灯り。病室。ベッドに横たわる里桜。唸っていたかと思うと突然目が覚める。

里桜 「わあ!(辺りを見回し)…病院?…私は…。」

里桜、ハッとして布団から両手を出し、指が動くのを確認してホットするが、またハッとして
布団の中をのぞき、足を動かす。

里桜 「良かったぁ〜、手も足も無事だ〜。」

左腕についているブレスレットの様なものに気づく。

里桜 「ん?なにこれ?(外そうとする)…外れない。」

それでも外そうとしていると、病室に看護師姿のロッサが入って来る。

ロッサ 「それ外れませんよ〜。」写真
里桜 「うわぁ!」
ロッサ 「ま、外したら死んじゃいますけどね。」
里桜 「あの、何なんですかこれ?どこの病院ですかここ?何がどうなってここに?私どの位寝てたんですか?そうだ…ゆっこは?一緒にいた長野雪子はどうなったん…」
ロッサ 「お静かにぃ!!…ここは病院ですよ瀬名里桜さん。てかぁ!!(顔を近づけ)質問が多過ぎます。」
里桜 「…すみません…」
ロッサ 「あなたは事故に巻き込まれてここに。」
里桜 「事故?あ…あのなんか光がパ〜ッてなったやつ?」
ロッサ 「ここは多摩にある診療所。」
里桜 「多摩?じゃ、日医大?南部地域?」
ロッサ 「事故から3日経っています。」
里桜 「3日も?」
ロッサ 「長野雪子さんは…」
里桜 「…ゆっこっは?」

ロッサ、里桜を見つめてゆっくり首を横に振り

里桜 「え?…うそ…そんな…」
ロッサ 「無事です。」
里桜 「なんだよ!あぁ良かったぁ…」

白衣姿のノノと研修医のアトラとモントとが入って来る。

ノノ 「まだ意識は戻りませんが、あなたよりずっと軽傷でした。順調に回復していますよ。」
里桜 「あ、あの…」
ノノ 「ここの所長のノノ・アグラスと申します。こちらの2人は研修医の…」
アトラ 「アトラです。」
モント 「モントです。」
里桜 「あ、はい。え、皆さん外国の方?」写真
ロッサ 「この子たちは一昨日地球に来たばかりなの。」
里桜 「あ、そうなんですか…え?地球にって…?」
ノノ 「ちょっと左腕を見せて頂けますか?」

ノノ、里桜の腕のブレスレットを調べる。

里桜 「…あ、あの何ですかこれ?」
ノノ 「メディクレットです。あなたの回復具合を診てるんですよ。」
里桜 「メディ…クレット?…医療器具ですか?」
ノノ 「ええ、生命維持装置みたいな物です。」

里桜、ノノの手を振り払う。

里桜 「ちょっと待って。私の仕事、ご存知ですか?」
ノノ 「はい。外科医さんですよね。ひよっこの。」
里桜 「ひよっこでも知識には自信あります。正直こんな医療機器見た事も聞いた事もありません。あなたたち、ホントに医者?ホントにここは病院?」
ノノ 「ええ医者ですよ。ここは「よそびと診療所」と言います。」
里桜 「よそびと?多摩地域にそんな病院はありません!!」
ノノ 「お〜流石ですね…わかりました、正直にお話しましょう。我々は…異星人です。」


里桜 「……は?…異星人。異星人ね。じゃここはUFOの中で、私は人体実験されてるってわけですか。」
ノノ 「いえ、実験ではなく、治療です。」
里桜 「いい加減にして下さい!私をここから出して!」

ノノ、里桜の前で気功のような動きをすると、里桜がおとなしくなる。

里桜 「あれ…力がぬけた…。今、何しました?気功?催眠術?」
ノノ 「まあ、似た様なものです。」
里桜 「…これは…え?まさか…オカルト治療?」
ノノ 「お好きですよね?データにはオカルトやSF好き、おまけに歴女だって書いてありましたが。」
里桜 「確かにSFも歴史も好きですが…え?どこからそんなデータを…」
ノノ 「なら話は早い。始めに言っておきますが、ここでのあなたの記憶は退院する時にほぼ消されます。」
里桜 「記憶を消す…?」
ノノ 「本来ならすぐに地球人の病院に移すところですが、ここでのあなたの治療には半年程かかりまして…」
里桜 「半年も?!」
ノノ 「で、恐らく混乱する内容だとは思いますが、状況をご説明しておこうかと。」
里桜 「既に混乱してますが…お願いします。」
ノノ 「まず、この星には何万年も前から異星人が暮らしています。」
里桜 「いきなり凄い所から来ますね…」写真
ノノ 「我々も千年程前からこの地球に住む異星人の医者です。ここは地球に住む異星人専用の病院。よその星の人間だからよそびと。あ、大丈夫。あなたは生粋の地球人ですよ。本来は地球の生命体を治療するのはご法度なんですが、異星人に被害を受けた場合のみ、例外として治療が許されています。そう、あなたは三日前、宇宙船の墜落事故に巻き込まれてここに運ばれたんです。」
里桜 「…は…はあ…でもそれを…」
ノノ 「信じるか信じないかは…」
里桜以外 「あなた次第です。」
里桜 「それ余計うさんくさいんですけど。」

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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