△ 「よそびと診療所」シーン6


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明るい曲と共に明転すると上手サスに女医の瀬名里桜(せな りお)が立っている。

里桜 「さて、時代は現代。あ、失礼。皆さん初めまして。私は瀬名里桜。医者になりたてのひよっこドクターです。あ、宇宙人じゃないですよ。生粋の地球人です。先程登場したドクター・ノノは地球に住む、異星人専門のお医者さん。この地球にはずいぶん昔から異星人が住んでるそうで…」写真

そこへ、3人の女子高生(ミオ・カンナ・ハナ)がおしゃべりしながら目の前を通り過ぎる。

ミオ 「あれ、るあと、こったみ〜?」
カンナ 「ああ、らとるーん、ぶせっしょ?」
ハナ 「いーなぁ。」
ミオ 「じゃ、るくちゅー?よるせみー。」
カンナ・ハナ 「いーわ!」
里桜 「…ま、私にとっては今時の女子高生も異星人みたいなもんですが…凄いな…何言ってんのか一個もわかんなかった…(咳払い)失礼。で、私はひょんな事からこのドクター・ノノと関わる事になりました。それは数日前の事。」

下手サスが灯ると長野雪子(ながの ゆきこ)が立っている。

里桜 「彼女は私の幼馴染の長野雪子。ゆっこって呼んでます。保育士をやっていて、元気で明るくて、いつも色んな相談に乗ってくれる大親友です。その日も仕事の後、悩みを聞いてもらうために彼女の運転する車で高尾の辺りをドライブしていたのですが…」

2人は中央に移動。笑い声がして明転。中央サス。車内に座る2人。雪子が運転し里桜は助手席。

里桜 「そうかぁ…保育士もホントに大変よだねぇ。」写真
雪子 「でしょ〜。でもまあお医者さんに比べたら全然か。」
里桜 「いやいや。」
雪子 「あ!ごめん、また私の話になっちゃった。お父さんの話だよね。」
里桜 「そうそう。「お前は知識ばかりで愛がない。」だの何だの、会えば説教ばっか。」
雪子 「昔から里桜には厳しかったもんね。」
里桜 「そのくせ自分はテキトーで、この前なんか「CT」の事「ET」って言うし、「MRI」…ってわかる?」
雪子 「あぁ、横になって変なのに頭突っ込んで、凄い音聞かされるやつ?」
里桜 「そうそう、その「MRI」を「MIB」とか言ってんだよ。」
雪子 「MIBって何だっけ?」
里桜 「メン・イン・ブラック。」
雪子 「あ、あったねそんな映画。ウィル・スミス!…と、あの…あの人、BOSSのおじさん…えっとぉ…」
里桜 「トミー・リー・ジョーンズ。」
雪子 「トミー・リー・ジョーンズ!」
里桜 「「ET」だの「メン・イン・ブラック」だの、うちは宇宙人の病院じゃないっつの。」、雪子 「ハハハハ、ホントに里桜はお父さん譲りだよね。SFとかアニメとか好きなの。」
里桜 「え?まぁ、それは否めないけど…でも歴史好きは私だけだよ。」
雪子 「歴オタも本質は同じじゃん。」
里桜 「とにかく!娘が頑張って医者になったんだよ。少し位褒めたってバチは当たらないでしょ。」
雪子 「一人娘だから心配してんのよ。」
里桜 「それにしたってあの態度って…あ…ごめん、これって相談じゃなくてただの愚痴だね。」
雪子 「全然ウェルカム。私の愚痴も聞いてもらってるし。おっとやばい、神奈川入っちった。そこでターンするね。」
里桜 「OK。」

車を止めると突然エンジンが止まる。

雪子 「あれ?何?…うそ?エンスト?」
里桜 「え?まじで?」

エンジンもかからず、ライトも消える。

雪子 「わ、電気消えた。」
里桜 「ちょっとやだやだ。」
雪子 「え〜なんで〜?車検出したばっかなのに。」
里桜 「JAF呼ぼうか?」
雪子 「うん。」

雪子はキーを回し続け、里桜はスマホを出すが。

里桜 「あれ?おかしいな。スマホ、電源入らない。」
雪子 「うそ、ちょっと勘弁してよこんなとこで…え?…まさかここって…心霊スポット的な…」
里桜 「や〜め〜て〜よ〜!」
雪子 「あ!!あっち!ライト!車来たかも!」
里桜 「え?あ、ホントだ!助けてもらおう!」

雪子、車から降り、大きく手を振る。里桜も降りる。

雪子・里桜 「お〜い!!お〜い!!」
雪子 「お〜…あれ?…車のライトじゃない…あれ、山の上だよ…」
里桜 「え?でも音もしないから、飛行機でもヘリコプターでもないよね…」
雪子 「ねえ、光…大きくなってない?」写真
里桜 「ホントだ。あれって…もしかして…こっちに向かって…」

爆音と閃光。二人悲鳴。

里桜・雪子 「キャアアアアアアアア!!!!」

二人、光に包まれ、そのまま暗転。静かな間の後ヘリの音が近づく。サーチライトの様な灯り、通信の声。

ヘリ通信 「立川2-3(ふた-さん)より本部。小仏。現場到着。送れ。」
本部 「本部より立川2-3、現場状況。送れ。」
ヘリ通信 「立川2-3より本部。墜落機体確認。データ一致。対応権限GUSS(ジーユーエスエス)。」
本部 「対応権限GUSS了解。」
ヘリ通信 「乗用車1台。付近に人が2名倒れている。生死は不明。至急救助を要請。送れ。」
本部 「GUSSより通信。」
GUSS 「こちらGUSS。現場に到着。自衛隊の迅速な対応に感謝する。後はこちらで対処する。速やかに交通規制と街道封鎖をお願いしたい。」
本部 「立川本部了解。」
ヘリ通信 「立川2-3了解。」

ヘリの音が遠ざかり、暗転。

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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