△ 「インヴィジブル・ファイア」シーン24


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明転するとダブの作戦室。宇崎、曽田、大久保を囲むように、里子、麻耶、御厨、上底、愛、石倉が立っている。

里子 「以上が、今起こっている状況の全てです。理解して頂けましたか?」写真
曽田 「…宇崎…めぐみちゃんてホントにそんな…ラムちゃんみたいな…?」
宇崎 「ああ…」
曽田 「マジか…」

大久保が呆然としている。

曽田 「大久保、大丈夫か?」
大久保 「…信じられない…」
曽田 「だよな…超能力とか、妖怪とか、魔族とかって…」
大久保 「信じられないくらい感動しています!」
曽田 「え?お前そういうの…」
大久保 「大好物。」
曽田 「…だったのね。でも今の話全部を…」
大久保 「信じるに決まってるでしょ!現に僕、昨日第七消防隊に助けられてるんですから!」
曽田 「は?…それ初耳…」
宇崎 「めぐみはまだ意識がないままなんですね?」
里子 「はい。隣のメディカルルームで寝ています。」
宇崎 「リミットがあると。」
石倉 「大丈夫。あの結界の塊の中にいるうちは守られています。」
上底 「申し訳ない…今、全力で救う手立てを…」
宇崎 「僕にも何かお手伝いはできませんか?」
上底 「え?」
宇崎 「みなさんみたいな能力はありませんが、めぐみを救えるなら何でもします!」
大久保 「僕もです!」
曽田 「それなら俺だって同じ気持ちだ!…ちょっと眉唾だけど…」
里子 「ありがとうございます。協力して頂ければ心強いです。」

石倉、愛、何かに気づく。

石倉 「ん?…これは…」
「父さんこれ…」
石倉 「戻って来ます!」
里子 「え?」

轟音と閃光。全員ひるむ。

全員 「うわあああ!」

照明が戻ると、中心に角田が立っている。愛、里子がとっさに構える。曽田、大久保にしがみつき

曽田 「うわあ!なんだ?!なんだこの人?!どこから飛び出た?!」写真
里子 「角田さん…戻ったんですか?」
「それともまた私たちと…」
石倉 「待ちなさい。角田さんは敵ではない。」
「でも私たちを…」
石倉 「私のところまで導いてくれた。」
「え?」
里子 「角田さん…それじゃ…」
石倉 「ましてや私と組んでネット征服など、考えるわけもない。ですよね。角田さん。」
「聞こえてたんだ。」
石倉 「デビルイヤーは地獄耳ですよ。」
角田 「みんなすまなかった…。姫の正体を調べるために、消防隊の仲間になったふりをしていた。」
上底 「良かった…そうであることを願ってたよ。」
角田 「まさか姫がAIだとは思いもしなかったが。」
御厨 「角田。あの消防隊たちと姫ってのは何者なんだ?いったいお前とどう関係してる?」
角田 「あの3人は、雷童子(かみなりどうじ)という妖怪。」
里子 「雷童子?」
角田 「雷神から生まれた電気の妖怪だ。」
曽田 「雷神ってあの、メッチャ重いハンマーブンブン回すヒーローの?」
大久保 「それアメコミのやつでしょ?」
曽田 「そーでした…」
角田 「あいつらと俺は同じころ生まれた幼馴染で、いつも一緒に遊んでいた。」
御厨 「それって…400年くらい前の事か?」
角田 「そうだ。」
曽田 「え?!この人400歳なの?!にしては若くね?!」
大久保 「ちょっと黙りましょう。」
曽田 「スミマセン…」
角田 「その頃の俺たちは人間から見れば醜い姿で、物の怪と言われ恐れられていた。」

背景の照明が、語りに合わせて変化し、子どもの遊ぶ声や半鐘のSEも加わる。

角田 「江戸時代初期、そんな我々を恐れる事もなく、友達として遊んでくれる少女がいた。我々はその子を『姫』と呼んでいた。しかし姫が十四の年、江戸で起きた大火事で焼け出され、姫は親兄妹と共に、遠くの寺へ避難をした。そこで姫はある青年と出会い恋をした。」
里子 「あれ?その話どこかで…」写真
角田 「数年後、一家は江戸に戻るが、姫は青年を忘れられず、思い余った行動に出てしまう。我々はそれを止めようと必死に説得したが、姫にはもう、我々の声が届かなかった…」
麻耶 「姫は何を?」
角田 「もう一度家が火事になれば、またあの青年に会えると考え、家に火をつけた…」
大久保 「えっ?!」
里子 「思い出した。それって…」
宇崎 「八百屋…お七ですね?」
「八百屋お七?!」
曽田 「聞いた事ある。」
角田 「そうだ、姫はそのお七だ。姫の放火は結局ボヤで済んだものの、火付けは重罪。姫は…火あぶりの刑に処された。そして家族は離散し、死ぬまで誹謗中傷を受け続けた。我々妖怪たちは、彼女にも、彼女の家族にも、なにもしてやれなかった…」
御厨 「それがネット炎上の消防活動の真意って事か…」
里子 「じゃあ第七消防隊の名前も…」
角田 「ああ。お七から取った。」
上底 「そういう事か…」

照明、元に戻る。

角田 「その後、どうしても姫に会いたい我々は、姫の生まれ変わりを待つことにした。私は諦めてしまったが、あいつらはずっと待ち続けていた。そしてやっとみつけたのが…」
里子 「AIのマードレ?」
「どういうこと?AIに魂はないはず。」
石倉 「マードレに、製作者の魂の匂いが残っていたんです。」
「え?」
上底 「製作者ってことは、エミリさんのお母さんの…」
石倉 「ソフィアさんです。」
麻耶 「それじゃソフィアさんが姫の生まれ変わりだった?」
角田 「私もそう思った。だが違った。あの3人も間違える位、わずかに匂いが違ったんだ。」

瀬名が部屋に戻って来る。

瀬名 「やっとつながりました。」
麻耶 「エミリさん!大丈夫なんですか?!」
御厨 「まだ寝ていた方が…」
瀬名 「大丈夫です。元々私の睡眠時間、1日1時間程度なので。」
上底 「みじかっ!」
角田 「貴方が瀬名エミリさん。」
瀬名 「初めまして、角田さん。」
大久保 「瀬名エミリ?!スゲー!!マジほんものだ!!」
曽田 「お前もうるさいよ。」
大久保 「スミマセン…」
瀬名 「母から聞いた事があります。母のご先祖様に八百屋お七の家族がいたと。」
角田 「やはりそういうことか、ソフィアさんの魂は、姫と同じ血筋のものだ。」
宇崎 「あなたのご先祖さまも?!」
瀬名 「え?」
宇崎 「すみません、実はうちの先祖も八百屋お七の家族だって聞いています!」
大久保 「え?!じゃ、宇崎さん、瀬名エミリの遠い親戚なんですか?!」
曽田 「しかも八百屋お七の親戚筋が消防士?!!」

間。曽田、大久保、空気を察して

曽田・大久保 「スミマセン…」
石倉 「それじゃ、めぐみさんは?」
角田 「本物の姫の生まれ変わりだ。それを知った雷童子たちは、本物の姫と仕事を続けたがってサイバースペースから出る事を拒んでいる。」
里子 「このままじゃめぐみさんの意識は帰って来られない。」
角田 「だが、めぐみさんに彼らを説得してもらえればなんとか…」

電気がビリビリいう音。

曽田 「あれ?なんだこれ?」
大久保 「静電気?」
上底 「あ、戻って来る!」
曽田 「え?」

パシーンという音とともに眩しい閃光。

曽田・大久保 「うわああ!!」

灯りが戻ると中央にひざまずくトモエが現れる。

曽田 「なんだ!また誰かいきなりでた来た!」
上底 「トモエ、どうだったペンタゴン?」
トモエ 「まずいことになったよ!サテライトシステムが故障してたよ!」
里子 「故障?」
トモエ 「修理しないとまたレーザーが来るよ!」
御厨 「なんだって?!」
トモエ 「しかも今度のは広範囲ね!」
「広範囲って?」
トモエ 「直径5キロ内にレーザーが降り注ぐね!」
トモエ以外 「直径5キロ?!」
御厨 「そんなもん撃たれたら…」
麻耶 「この町ごと無くなっちゃう!」
トモエ 「そうよ!そうなったらこの町が…ハローキティに会えない街になっちゃうよ!!」
トモエ以外 「そんな!!!」
トモエ 「今からサテライトの修理に行ってくるよ!」
上底 「トモエが?!」
トモエ 「でも私だけじゃ無理だから、お兄ちゃんを連れに来たよ!」
上底 「俺も行くの?」
トモエ 「お兄ちゃんの能力が必要なんですわ!」
上底 「初めて頼られた…わかった、行こう!」
宇崎 「サテライトはいつ次のレーザーを?」
トモエ 「エネルギーの充填まで後30分くらいね。」
曽田 「30分?!」
大久保 「町の人たちを避難させるのは不可能です!」
石倉 「私が力を貸そう。」
曽田 「力を貸すって?」
石倉 「この町を結界で覆う。レーザーにどれだけ耐えられるかはわからんが。」
「私も手伝う!」
石倉 「頼む。」
館内放送 「エリア担当各位。東エリア35ブースから煙が上がっています。確認、至急対応願います。」
大久保 「煙?」
曽田 「こりゃ俺たちの出番かも。」
上底 「ピンチの大渋滞だな。」写真
瀬名 「手分けして同時に対応しましょう!」
トモエ 「私とお兄ちゃんはサテライトに!」
石倉 「私と愛は結界作りを!」
瀬名 「角田さんは第七消防隊、里子さん、麻耶さんはめぐみさん救出を!」
里子 「でも、マードレと接触はどうやって?」
瀬名 「一つ方法を見つけました。バグを利用します。」
「バグ?」
瀬名 「倍文殊作戦で御厨さんが起こしたバクが利用できそうなんです!」
御厨 「俺のバグ?!」
上底 「バグとはさみは使いようだ!」
トモエ 「お兄ちゃん上手い!」
御厨 「なんかむかつく。」
瀬名 「御厨さんご協力お願いします。」
御厨 「よくわからんが、役に立てるなら。」
宇崎 「我々は煙を見てきます。」
麻耶 「待って、宇崎さんはこっちに借りるわ。」
宇崎 「え?」
麻耶 「めぐみちゃんを救うにはあなたが必要になるわ。」
曽田 「宇崎、こっちはまかせろ。」
宇崎 「わかった、頼む。めぐみを救って来る。」

曽田、大久保、サムズアップ。宇崎もサムズアップ。

瀬名 「12人でピンチを乗り越えましょう!名付けて『四倍文殊作戦』開始!」
全員 「おお!!」
麻耶 「確かに4倍だ…」

暗転。

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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