△ 「インヴィジブル・ファイア」シーン23


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照明が変わると、第7消防隊の消防署内。消防士3人が出て来る。

せんた 「まさか3か所同時に火が上がるなんてな。」
めい 「対策を考えた方がいいわね。」写真
らくすけ 「姫に相談した方が…」
せんた 「だな。連絡してみる。」

せんた、通信しようとするが

せんた 「…あれ?もしもし…姫?…姫?…」
らくすけ 「どうした?」
せんた 「おかしいな?つながらない…姫?姫?」

角田が出て来る。

せんた 「どわすれ。」
角田 「お前たちに話がある。とても重要な話だ。」
めい 「なに?」
角田 「みんなが姫だと思っているのは…姫じゃない。」
らくすけ 「は?何言ってんの?」
せんた 「おまえ大丈夫か?」
角田 「お前たちはどうやって姫をみつけた?」
らくすけ 「匂いだ。」
めい 「姫の匂いは絶対に間違えない。」
せんた 「やっとみつけたんだ!姫の生まれ変わりを!」
角田 「姫はお前たちのことを覚えていたか?」
めい 「生まれ変わりなんだから覚えてるわけないじゃない。」
せんた 「だから色々教えたんだ。」
らくすけ 「そしたら思い出してくれたんだよな。」
せんた 「ああ、そうだ。」
角田 「生まれ変わりではない。」
めい 「そんなわけない。」
らくすけ・せんた 「なんでそう言えるんだ?」
角田 「その姫は…AIだからだ。」
めい 「AI?人工知能だっていうの?」
せんた 「そんな馬鹿な!じゃ、匂いは…」
角田 「恐らく、そのAIを作った人間のものだ。」
らくすけ 「そんな(匂いを嗅ぐ)ほら、今だってちゃんと姫の匂いが…」
せんた 「…あれ?この匂い…」
めい 「さっきまでと少し違う…」
せんた 「あ、これは…35丁目で嗅いだ匂いだ!」
角田 「そうだ、これが本物の匂いだ。」
めい 「私たちが匂いを間違えるなんて…」
角田 「せんた、めい、らくすけ。もう消防隊は終わりにしよう。」

せんた、めい、らくすけ、うつむく。

せんた 「…待てよ、本物の生まれ変わりがいるんだよな?」
角田 「ああ、今その人間の意識が、AIの作った結界に閉じ込められている。」
せんた 「だったらその人の元でまだ消防隊が続けられる!」
角田 「意識と体が別になっているんだ。いつまでもその状態にはしておけない。」
せんた 「僕はこの仕事を続けたいんだ!」
角田 「せんた…」
せんた 「人を傷つける人を無くす。それが僕らの想いじゃないか!」
めい 「私たちのやっている事は悪い事?」
角田 「そうじゃない…」
せんた 「だったら…姫といさせくれよ。」
めい 「姫と一緒にいたいよ。」
らくすけ 「僕もだ。」写真
角田 「お前たち…」
せんた 「あの時の悔しさ、忘れたわけじゃないだろ?」
角田 「忘れるわけないだろ…あれからずっと、ずっと抱えてきたんだ。」
めい 「だったら…」

電気がビリビリいう音、角田が苦しみだす。

角田 「うっ…ついに気づかれちまったか…」
せんた 「どわすれ?」
角田 「俺は敵とみなされたらしい。」
めい 「え?」
角田 「わかってもらえず、残念だ…」

轟音と閃光。暗転。

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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