△ 「インヴィジブル・ファイア」シーン21


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照明が上手のみになると。作戦室。瀬名、上底、麻耶、御厨がいる。そこへ愛が戻って来る。

「父が回復しました!」写真

後ろから石倉が入って来る。

上底 「石倉ちゃん!」
御厨 「もう大丈夫なんですか?」
石倉 「ええ、ご迷惑をかけて申し訳ない。」

その後ろから里子も出て来る。

麻耶 「里子さん。」
里子 「私も大丈夫。」
石倉 「君がソフィアさんの娘さんだね?」
瀬名 「エミリです。」
御厨 「石倉さん。早速お聞きしたいんですが。」
石倉 「全ては私の考えが甘かったせいだ。もう少しマードレの事がわかっていれば…」
里子 「一体何があったんですか?」
石倉 「元々はソフィアさんと亡くなった私の妻が知り合いでね。ソフィアさんが結界について研究しているというので協力したのが始まりだった。しかしマードレが完成した後、ソフィアさんが亡くなってね、それからはマードレには一切関わらなくなった。ところがひと月前、旅行先のイタリアでマードレから急に連絡が入った。」
里子 「AIから直接連絡を?」
石倉 「ああ、コンピューター内に結界を作ったから見に来てほしいと。それでガッティーノのイタリア支社に行くと、ロボットに案内された部屋にパソコンがあり…」
御厨 「角田のようにその中に連れ去られた。」
石倉 「不覚にもマードレの作った結界に閉じ込められ、身動きが取れなくなってしまった。」
里子 「結界は破れなかったんですか?」
石倉 「作るのは得意だが、破るのは苦手でね。それもマードレは最初からお見通しだった。」
「でもどうして父さんを拘束したの?」
石倉 「実は昔、ソフィアさんがマードレを開発する際、反対したこともあってね。マードレは私を脅威だと思っていたらしい。」
麻耶 「消防隊の事は?」
石倉 「詳しくはわからないが、あの妖怪たちからマードレに近寄って行ったらしい。妖怪たちはマードレを誰かと勘違いしていたらしいが、マードレはそれを利用することにしたようだ。」
「誰かと勘違いって…」
里子 「姫の事?」
石倉 「そう、彼らはマードレを姫と呼んでいた。」
里子 「一体マードレは何が目的で消防隊を?」
石倉 「恐らくとてもシンプルな事だ。ソフィアさんが生前語っていた意志を実行しているだけ。エミリさんも知っていますよね?」
瀬名 「はい。それは…。人の心の浄化です。」
「心の浄化?」
御厨 「それがあの消防隊の活動の理由?」
麻耶 「浄化にしては少し過激じゃない?」
瀬名 「恐らく、母の死因が、マードレに影響しているのかもしれません。」
「死因って?」
瀬名 「一般には病死とされていますが…本当は自殺です。」
里子 「え?」
瀬名 「マードレ作成を反対する人も多く。母は多くの批判に晒され、根も葉もない噂まで流され、心を病んで自殺したんです。」
上底 「なんてこった…」
里子 「マードレは、誹謗中傷に対して過剰反応した…」
「AIが復讐心を持ったって事?」
御厨 「その復讐心でネット征服をしたら、いずれ人類を…」
瀬名 「それはありません!マードレは人のためにしか行動しません。どんなに進化しても人類を支配したり、滅ぼす事ができないように作られているんです。」写真
摩耶 「でも、さっきみたいに衛星レーザー兵器を撃てるなら、人類の脅威になるんじゃ…」
瀬名 「あれは電撃がトモエさんに当たった事で起きた事故だと思います。サテライトを操作できるような機能はありません。」
「でも、マードレはめぐみさんの電気を操る能力が欲しくてさらったんじゃ?」
瀬名 「それもおかしいんです。マードレはそんな能力必要ないんです。」
「え?」
瀬名 「必要な電気も操作能力も、マードレには備わってますし、先程の様な大きな電撃はマードレ自身を破壊する危険があるんです。」
上底 「それじゃどうしてめぐちゃんをさらったんだ?」
御厨 「いっそマードレの機能を止めてしまえば…」
瀬名 「不可能ではありませんが、今の状況で止めれば、めぐみさんの意識が帰って来ない恐れがあります。」
麻耶 「めぐみちゃんの意識を人質にされてるってわけか…」
上底 「体はこっちにあるのにな。」

瀬名、フラつく。隣にいた麻耶と御厨が支える。

麻耶 「大丈夫ですか?」
瀬名 「ちょっと目眩が…」
「休んだ方がいいです。」
麻耶 「私が連れて行きます。」
御厨 「俺も行こう。」

麻耶、御厨、瀬名を支えながらハケ、暗転

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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