△ 「インヴィジブル・ファイア」シーン4


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下手照明。8課の部屋。御厨と上底、プログラマーの瀬名エミリの3人。瀬名のパソコン操作を
後ろから覗き込んでいる。瀬名、ものすごいスピードで情報を処理している。

御厨 「…これって…何をやっているんだ?」写真
瀬名 「一度に4つのパソコンを操作してるんです。」
御厨 「4つ?…俺には1つも見えんが。」
瀬名 「全てVRです。(メガネを外し)このゴーグルがないと見えないんです。」
御厨 「それメガネじゃないのか。」
瀬名 「はい。操作はこのコントロールグローブで。」
上底 「面白そ〜!」

里子、麻耶、めぐみが入って来る。

里子 「お連れしました。」
上底 「おお、麻耶ちゃんめぐちゃん、わりーね急に呼び出して。」
麻耶 「毎度の事でしょ。」
めぐみ 「御厨さん、新人研修ではお世話になりました。」
御厨 「仕事には慣れたか?」
めぐみ 「まだまだですが、頑張ってます。」
麻耶 「そちらの女性は?」
瀬名 「初めまして。株式会社ガッティーノの瀬名エミリです。宜しくお願いします。」
麻耶 「え?瀬名エミリって…」
めぐみ 「あの天才プログラマーの…?」
里子 「ええ。今回の捜査の強力な助っ人です。」
麻耶 「私、アニノやってます!」
めぐみ 「私もです!」
瀬名 「嬉しいです。ま、あれはAIが作ったんですけどね。」
めぐみ 「スーパーAI『マードレ』ですよね? 」
瀬名 「はい。『マードレ』も私じゃなくて、亡くなった母が作ったAIですが。」
麻耶 「母娘揃って天才プログラマーって、すごいです。」
瀬名 「ありがとうございます。私は母の足元にも及びませんが。」
上底 「こちらうちのエージェントの服部麻耶。」
麻耶 「多重能力者です。色々超能力持ってます。」
瀬名 「確か、霊能力もお持ちなんですよね?」
麻耶 「ええ、少々たしなんでおります。」
瀬名 「とても興味深いです。」

麻耶、瀬名と握手をする。

上底 「同じく新人エージェントの宇崎めぐみ。」
めぐみ 「エレクトロキネシスの能力者です。宜しくお願いします。」
瀬名 「電気を操る超能力者ですね。期待しています。」

めぐみと瀬名、握手。

めぐみ 「頑張ります!」
御厨 「そろそろ本題に入ろう。」写真
麻耶 「例のネット消防士の件ですよね。」
上底 「ああ、でもちょっと…いや、かなりまずい事態になっちゃってね。」
麻耶 「かなりって…?」
御厨 「角田が消えたんだ。」
めぐみ 「角田って…」
上底 「うちの支部長。めぐみちゃんはまだ…」
めぐみ 「一度もお会いしたことないんです。」
上底 「忙しい人だからね。実はダブからは角っちと俺が協力しに来てたんだけど…」
麻耶 「消えたって、失踪したんですか?」
里子 「いいえ。この部屋で捜査中に、忽然と。」
麻耶 「忽然と…?」
上底 「イリュ〜ジョン。」
めぐみ 「どこに行ったか全くわからないんですか?」
上底 「いや、わからないというか、わかるというか、多分なんだけど…」
里子 「(パソコンを指さし)この中。」
めぐみ・麻耶 「…は?」
めぐみ 「この中って…まさか…パソ…コン…?」

御厨、上底、里子、うなずく。

麻耶 「どうしてこの中だってわかるんですか?」
上底 「姿を消した直後にパソコンから角っちの声がしたんだ。『みんな…すまん』って。」
麻耶 「でも声だけじゃ…」
里子 「妖気よ。その時パソコンに吸い込まれるように、角田さんの妖気が消えたの。」
麻耶 「妖気って言われちゃうとお手上げだな…」
里子 「そこでエミリさんを呼んだんです。」
瀬名 「実は母の代から妖気や結界について研究しているんです。」
めぐみ 「え〜、妖怪とかと一番遠くにあるお仕事っぽいのに。」
瀬名 「いえいえ。実は科学もオカルトも似たようなものなんです。」
御厨 「俺にはよくわからん。」
瀬名 「でもこうやって直接かかわるのは初めてなもので、ちょっと脳みそが混乱してます。」
御厨 「わかる!わかるよ、俺も最初はそうだった。おじさんに何でも相談してくれ。人間はうちら2人だけだからな、」
上底・麻耶・めぐみ 「超能力者は人間です。」
里子 「角田さんの正体は『妖怪どわすれ』。記憶を消す妖怪。」
瀬名 「記憶を消す?」
上底 「ど忘れ的なカワイイいたずらから、世界中の人間の記憶を消す事までできちゃう。」
めぐみ 「え〜?!そんなすごい事できちゃうんですか?」
上底 「おまけに、妖怪関連の写真やデータも全て消しちまえる。」
めぐみ 「データも?!それ凄すぎません?!」
里子 「そりゃ妖怪の中でも妖気の強さはトップレベルですからね。」
御厨 「問題は、そんな角田が、いとも簡単にこの中にさらわれちまったって事だ。」
めぐみ 「相手は角田さん以上の力の持ち主…」
上底 「あるいは同等で、角っちの力が邪魔だったとか?」
麻耶 「でもパソコンの中じゃ我々にはどうしようもないんじゃ…」
瀬名 「そこで私なりに妖気と結界ついて分析し、とりあえず作ったのがこのシステムです。」

瀬名、タブレットを取り出す。みんな覗き込み、無言でモニターを凝視。

瀬名 「大きく分けるとこっちが妖気、こっちが結界をプローブするシステムで、インディビデュアルとインターロックのどちらの機能も…」

みんな困惑して固まる。里子、手を挙げる。

里子 「あ〜…この画像を見ただけじゃ…」
上底 「わからない人。」

上底、御厨、里子、麻耶、手を挙げる。

上底 「全員じゃん。」
瀬名 「ごめんなさい。ちょっと興奮しちゃって、もっとわかりやすくご説明します。」
瀬名以外 「お願いします。」
瀬名 「簡単に言えば、妖気と結界の探知機です。」


瀬名以外 「わかりやすい。」
瀬名 「情報が少ないので不確定要素も多いですが、これを使えば彼らに近づけると思います。」
里子 「そこで我々の出番。」
上底 「お、来たね。」
里子 「実はこのシステムの操作、エミリさん一人では難しいので協力してほしいそうです。」
御厨 「無理無理無理無理。」
里子 「大丈夫。御厨さんにはパソコン操作とは別の方法で協力してほしいそうです。」
御厨 「そうなの?」
瀬名 「はい。みなさんはこれを。」

瀬名、5人にメガネ型のゴーグルを渡す。

めぐみ 「VR用のゴーグルですね!」

瀬名、里子、めぐみ、麻耶にグローブを渡す。

瀬名 「パソコン上級者の里子さん、めぐみさん、麻耶さんはコントロールグローブも。」
麻耶 「おお。使うの初めてだわ。」
瀬名 「私はメインの4つのパソコンを操作します。3人は私の補助を。」
めぐみ 「面白そう。」
御厨 「うちらは何をすれば?」
瀬名 「上底さんと御厨さんは、確認した情報を声で報告して下さい。」
御厨 「喋ればいいだけね。」
瀬名 「はい。では早速。」
里子 「今回の目的は消防隊の情報収集と角田さんの救出です。」
瀬名 「角田さんの救出は、妖気を持った里子さんしかできませんので宜しく。」
里子 「腕がなります。」写真
上底 「おらワクワクすっぞ!」
瀬名 「指揮は私が取りますが、皆さん一人一人の知恵と力が必要です。」
御厨 「3人寄れば文殊の知恵。」
里子 「6人だから2倍ですよ。」
めぐみ 「名付けて『倍文殊作戦(ばいもんじゅさくせん)!』」
麻耶 「いや、作戦名はいらないんじゃ?」
瀬名 「では始めます。『倍文殊作戦』開始!」
麻耶 「あ、決まりなんだ。」

音楽がかかり、一度暗転。

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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