△ 「宇宙海賊とヒミツの星」シーン5


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映像 画面の奥から豪華宇宙客船クイーン・ダイアナ号が迫って来る。

アナウンス 「宇宙客船クイーン・ダイアナ号にご乗船ありがとうございます。」写真

明転すると船内ラウンジ。あちこちに乗客。ジャスミン、ライム、アーモンドも入って来る。

アナウンス 「本船は36時間後に火星ステーション「ネオ・フォボス」に到着予定です。皆様どうぞ快適優雅な宇宙の旅をお過ごし下さい。」
アーモンド 「ほんとに凄いよこの船!下手な宇宙ステーションよりずっとでかい!」
ライム 「おこちゃまのリアクションだな。」
アーモンド 「おこちゃまじゃないです!」
ジャスミン 「迷子にならないでね。」
アーモンド 「ジャスミンまで!プ〜。」

アンナとショーンが入って来る。アーモンドが発見。

アーモンド 「あ!アンナさん!」

アンナたち近づく

アンナ 「この度は本当にありがとうございます。」
ジャスミン 「こちらこそ、お招きありがとうございます。」
ショーン 「早速ですが、詳細な打ち合わせを。」
ジャスミン 「宜しく。」
アーモンド 「宜しくです!」

5人、舞台の下手端で打ち合わせ。上手から僧侶のマルティネスとコメッツが出て来る。

コメッツ 「しかし、本当に凄い船でございますねお師匠様。」写真
マルティネス 「コメッツ。我々がこのような船に乗る事など二度とないかもしれん。これも御仏のお導きと思いしっかりと目に焼き付けるが良い。」
コメッツ 「はい。しかし何もかも贅沢な品にございますね。」
マルティネス 「贅沢が敵とは限らん。贅沢をどう捉え、どう扱うかが大事なのだ。」
コメッツ 「業でございますね。」
マルティネス 「さよう。人の行為は全て業。良きも悪しきも必ず報いが待っておる。」

そこへ飛び出して来た少年、アハト・クライン王子が2人の後ろに隠れる。

マルティネス 「なな、なんだ?」
コメッツ 「どうかしたのか少年。」
アハト 「し〜っ!悪い奴に追われているのじゃ!」
コメッツ 「悪い奴?」

そこに黒ずくめの男、ヴァイスが現れる。

アハト 「あいつじゃ!」

ヴァイス、アハトに気付き近づく。

コメッツ 「お待ちなさい。この子に何を…」
マルティネス 「コメッツ。」
コメッツ 「は?」

マルティネス、後ろに隠れているアハトを前に出す。

アハト 「うわ、何をする!」
コメッツ 「お師匠様?!」
マルティネス 「少年、ウソをついたな。その人は悪い人ではない。」
コメッツ 「なんと。」写真
ヴァイス 「王子。いい加減になさって下さい。何度言ったらわかるのです。」
コメッツ 「王子?」
アハト 「わかっておるわ!お主がうるさ過ぎるのじゃ!」
ヴァイス 「これ以上わがままをなさるのなら、火星行きは取りやめにします。」
アハト 「それは…困る…」
ヴァイス 「では、お部屋に戻りましょう。」
アハト 「わかった…」

アハト、渋々ヴァイスに連れられて行くが、マルティネスに

アハト 「覚えておれ、クソ坊主!」
ヴァイス 「王子!(マルティネスに) 大変失礼致しました。何卒ご容赦を。」

ヴァイス、ハケたアハトを追ってハケる

ヴァイス 「王子!王子!」
コメッツ 「お師匠様、なぜあの子の嘘が分かったのです?」
マルティネス 「気を読んだのだ。お前も修行を積めば容易く読めるようになる。」
コメッツ 「精進致します。」写真

上手から着飾った女性パール、下手からルビーが出て来て中央で落ち合う。

パール 「こっちは準備OK。」
ルビー 「こっちも。」
パール 「後は主役を待つのみ。」
ルビー 「じゃ後ほど。」

2人、離れて行く。下手端で打ち合わせをしていた5人が前に出て来る。

ショーン 「ではその様な形で。」
ジャスミン 「分かりました。」
ライム 「まずはこの船が問題なく火星に着いてくれる事ね。」
ショーン 「問題ないでしょう。海賊に襲われでもしない限り。」
アーモンド 「海賊?!海賊が襲ってくるの?!」

アーモンドの大声に、辺りの客が振り向く。

アーモンド 「あ、ごめんなさい。なんでもないです…」
ジャスミン 「すみません、この子、以前海賊にひどい目に遭わされたもので。」
ショーン 「そうですか…」
アンナ 「ショーン、アーモンドさんとお散歩して宜しいかしら?」
ショーン 「このフロア内でしたら。」
アンナ 「わかりました。アーモンドさん、宜しいかしら?」
アーモンド 「よ、喜んで!」

アンナ、アーモンドを連れて歩き出す。

ライム 「ありゃ女に騙されるタイプだな。」
ジャスミン 「仕事だって事を忘れないといいけど。」

ジャスミン、ライム、ショーン、舞台の奥へ。

アンナ 「ごめんなさいね、失礼な事を…」
アーモンド 「いいんです、僕も海賊って聞くとつい血がのぼっちゃって。」
アンナ 「よっぽどひどい目に遭わされたのですね。」
アーモンド 「はい。実は僕、千年前の人間なんです。」
アンナ 「え?」
アーモンド 「コールドスリープでこの時代に目覚めたんです。でも、目覚める時に海賊に襲われて…」
アンナ 「どうしてアーモンドさんが?」
アーモンド 「昔の海賊は金品や食料を強奪してたけど、今の一番のお宝は、昔の人間の記憶なんです。」
アンナ 「記憶?」写真
アーモンド 「今は記憶を録画する事ができるでしょ?」
アンナ 「ええ。」
アーモンド 「千年も前の記憶はものすごく貴重で、高い値段が付くんです。だから古いコールドスリープのカプセルが見つかると、海賊が奪い合う。」
アンナ 「それでアーモンドさんも…。」
アーモンド 「はい。でも結局昔の記憶はほとんど失われてたんですけどね。で、その時海賊から助けてくれたのがジャスミンなんです。」
アンナ 「なるほどそうだったのですね。あのライムさんは?」
アーモンド 「ライムさんもジャスミンさんの助手だけど、情報収集でいつも銀河中を駆け回ってるんです。」
アンナ 「銀河中を。」
アーモンド 「元々軍の諜報部員で、凄腕だったそうです。」
アンナ 「諜報部員…頼もしい方ばかりで安心ですわ。本当に海賊が襲って来ても大丈夫そう。」
アーモンド 「海賊なんて僕がやっつけてやりますよ!」

アンナ、アーモンドの手を取り

アンナ 「お願いしますね。アーモンドさん。」
アーモンド 「は、はいもちろん!」

アーモンド、それを見ているジャスミンとライムの視線に気づきアンナの手を放す。

アーモンド 「いや〜それにしてもいろんな物がありますね〜。」
アンナ 「ええ、船と言うより町って感じです。」
アーモンド 「ですね!それに色んな人がいる。着飾った人、大家族、老夫婦、サラリーマンみたいな人、あれはお坊さんかな?ホントに町みたいです。」

そこへテルとローが入って来る。銀河○○○〇○ナインのメー○○と鉄〇の様な服装。

アーモンド 「あれ?」
アンナ 「なんです?」
アーモンド 「あの人たち…」
アンナ 「お知り合い?」
アーモンド 「いや、あの格好、どこかで…」
アンナ 「格好?」
アーモンド 「なんか、船より汽車の旅が似合ってそうな…」
アンナ 「汽車?あ、それもしかして過去の記憶に関係あるんじゃ?」
アーモンド 「え?そうなのかな?」写真

テル&ロー、立ち止まる。

ロー 「結構歩いたけど全然接触してこないね。ホントにこの船に乗ってるのかなバウンティー・ハンター。」
テル 「接触しないで損するのはあっちよ。もう少し待ちましょう。」
ロー 「なんかもっと情報ないの?」
テル 「性別は男、名前がシンドバッドって事以外は。」
ロー 「シンドバッドね…」

アーモンドが声をかける

アーモンド 「あの。」
ロー 「…え?もしかして?シンドバッド?」
アーモンド 「え?」
ロー 「シンドバッドでしょ?」
アーモンド 「あ、いえ、アーモンドです?」
ロー 「アーモンド?とか言ってホントはシンドバッド?」
アーモンド 「アーモンドです。ドしか合ってません。」
ロー 「なんだ違うのか…」
テル 「ごめんなさいね、勝手にシンドバッドなんて呼んでしまって。」
アーモンド 「ああそれも…」
テル 「え?」
アーモンド 「「勝手にシンドバッド」っていうのもどこかで…」
ロー 「は?」
アンナ 「この人昔の記憶をなくしていて、あなた達の格好を見たら何か思い出した様で。何か意味でも?」
テル 「この格好に?」
ロー 「別に、ただの普段着だけど。」
アーモンド 「なんか、体を…機械にしに行くとか…」
ロー 「なにそれ?」
テル 「ただ姉弟で旅をしてるだけですが。」
アンナ 「ご姉弟なんですね。」
アーモンド 「ああ…ダメだ思い出せないや。」
アンナ 「それは残念…」
アーモンド 「思い出して口に出したらなんかまずい気もするし…。ごめんなさい、失礼しました。」

2人、離れる。

マルティネス 「人の集まる所、ウソも溢れておるな。」
コメッツ 「業でございますが?」
マルティネス 「業じゃ、ゴゴッゴーじゃ。」
コメッツ 「ゴゴッゴー!」
アンナ 「ごめんなさいね。余計な事言ってしまって。」
アーモンド 「とんでもない。アンナちゃんが僕の事心配してくれるなんて嬉しいよ。」

コックがベルを鳴らして入って来る。

コック 「ただいまベーカリーでパンが焼きあがりました〜!なんと全て天然素材という滅多に口にできないパンでございま〜す!是非ご賞味下さいませ〜!」写真

コックが戻るとみんなついて行く。

アンナ 「全て天然素材ですって。」
アーモンド 「行ってみましょう!」

アンナとアーモンドもついて行きハケる。舞台には僧侶の2人とテル&ローだけ残る。
人並の中を横切るウエイターに目をやるテル。

テル 「あれ?」
ロー 「何?シンドバッド?」
テル 「あのウエイター…」
ロー 「ウエイター?」

ウエイター、ハケる。

テル 「まさかあいつ…」

テル、追おうとする。

ロー 「ちょっと。」

後ろから出て来たサラリーマン風の男、シンドバッドが2人に声をかける。

シンドバッド 「テルとローさんですね。」

2人、立ち止まり振り返る。

ロー 「あ、今度こそ…」
シンドバッド 「シンドバッドと申します。」
ロー 「よし!やっと接触できた。」
テル 「名前のイメージとだいぶ違うわね。」写真
ロー 「うん、こんなサラリーマンみたいな賞金稼ぎ見たことない。ってか君、さっきからこの辺にいたよね?」
シンドバッド 「すみません、なんとなく声を掛けづらくて。」
ロー 「やっぱりこの格好おかしいのかな?」

シンドバッド、名刺を渡す。

シンドバッド 「どうぞ。」
テル 「今時名刺?」
ロー 「賞金稼ぎから名刺もらったの初めてだ。」
テル 「念のため登録IDを。」
シンドバッド 「はい。」

シンドバッド、腕を出す。テルがセンサーをあてる。

テル 「間違いなさそうね。」
ロー 「手筈は聞いてるよね。」
シンドバッド 「ええ。目的のためなら手段は選ばなくて良いと。」
テル 「目的は宇宙の平和ですから。」
シンドバッド 「一つだけ宜しいですか?」
テル 「え?」
シンドバッド 「私は賞金稼ぎ。宇宙の平和に興味もなければ、殺し屋でもない。」
ロー 「金目的ね。」
シンドバッド 「はい。ではまた。」

シンドバッド、一礼して去る。

ロー 「腕は相当いいんだろうけど、なんかなぁ…」
テル 「いずれにしろ、天下の銀河連合が賞金稼ぎの手を借りるなんて、焼きが回ったもんよね。」
ロー 「そうだ!さっきの焼き立てパン食べに行こう。」

ロー、走り去る。

テル 「ロー。…あたしも食べ行こ。」

テルもローを追いかける。コメッツのお腹が鳴る。

マルティネス 「コメッツ。」
コメッツ 「はい。」
マルティネス 「食べたい?」
コメッツ 「はい…。」
マルティネス 「ゴゴッゴー!」

マルティネス、ハケる。

コメッツ 「ゴゴッゴー!」

コメッツも追ってハケる。誰もいなくなった舞台に、バックパッカーの様な青年ジローがキョロキョロ
しながら出て来る。そこへウエイターが通りかかる。

ジロー 「あの。」写真
ウエイター 「何でございましょう?」
ジロー 「この船って、海賊に襲われたりしないんでしょうか?」
ウエイター 「ご安心下さい。今まで一度もございませんし、万が一襲われてもセキュリティーは万全でございます。」
ジロー 「そうですか…ありがとうございます。」
ウエイター 「ボンボヤージュ。良い船旅を。」

ウエイター、去る。ジローため息。

ジロー 「そりゃそう簡単に襲って来るわけないよな…」

ジロー、トボトボとハケる。

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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