△ 「迷い子なカミサマ」シーン3


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上手明かりがつくと、劇場の談話室。
あきらとインタビュアーでラノベ作家の石倉錦之介(いしくらきんのすけ)、雑誌「ラノーブル」編集者の納谷由紀夫(なやゆきお)が入って来る。納谷はカメラを持っている。

あきら 「いや〜インタビュアーが石倉師匠だなんてホントに嬉しいです。」
石倉 「いやいや、最近こっちの方が本業っぽくなっちゃってね。」
あきら 「ワイドショーのコメンテーター、しょっちゅう拝見してます。」
納谷 「(名刺を渡し)どうも初めまして。月刊誌「ラノーブル」編集部の納谷由紀夫と申します。」
あきら 「あ、宜しくお願いします。」
納谷 「神田先生も石倉先生も、今日はお忙しい中、うちの様な弱小雑誌のインタビューにお時間を頂き本当にありがとうございます。」
あきら 「とんでもない。こちらこそありがとうございます。」
納谷 「あ、今日は僕が写真の方撮らせてもらいますんで。」
あきら 「え?そうなの?。」
納谷 「予算の都合で。」
あきら 「大変ですね。」
納谷 「弱小雑誌なんで。」写真
石倉 「もう、ここから録音しちゃうね。」
あきら 「あ、OKです。」
石倉 「え〜、では、早速ですが神田君。」
あきら 「はい。」
石倉 「今回は初の実写映画化という事で、まずは率直な感想を。」
あきら 「いや、自分の作品の映画化はずっと夢でしたし、一番実写化したかったこの『ナユタの宇宙(そら)』をこんなに素晴らしい作品にして頂いてホントに感激です。CGも凄くてびっくりしました。」
石倉 「いや、技術も凄いけどやっぱり物語がいいよ。」
あきら 「うわ、ありがとうございます!子供の頃から大ファンのラノベの神様からそんなお言葉を頂けるなんて感激です!」
石倉 「いやいや、今は神田君の方が神様って言われてるじゃない。僕はもう神様引退。」
あきら 「ははは、神様に引退はないですよ。…ん?引退?…神様が?…あれ?」
石倉 「ん?なに?」
あきら 「あ、いや…」
石倉 「今は僕の方が神田君のファンだから。」
あきら 「も、やめて下さい師匠。」
石倉 「神田君の作品の魅力は何と言ってもこのキャラクター達だよね。ちなみに僕としてはお気に入りのキャラだらけなんだけど、一番はやっぱりこのナユタちゃんね。」

下手が明るくなり、音楽がかかるとナユタが登場。セーラー服に刀姿。

石倉 「機械ではなく有機物でできた「有機ドロイド」なんだよね。ドロイド対魔族って設定もいい。」

上手が暗くなる。魔族の幹部「コーザ」が現れ、ナユタ刀を構える。

コーザ 「無駄だナユタ。もう力は残っていまい。」写真
ナユタ 「ちから…私のちから…」
コーザ 「しかしアンドロイドの分際で敵討(かたきう)ちとは笑わせやがる。」
ナユタ 「私はアンドロイドではなく、有機ドロイドです。」
コーザ 「どっちでもいい。どのみちお前はここで死ぬ。」
ナユタ 「死ぬ?そうですか。私は死ぬんですね。」
コーザ 「だがお前は幸せ者だ。このコーザ様の手にかかって死ねるのだからな。」

コーザ、激しく斬り込む。

コーザ 「うおりゃあ!」
ナユタ 「うっ…」

ナユタ膝をつく。

コーザ 「フッ。なかなか楽しませてもらったぜ。ナユタ。」

コーザ、去ろうとする。

ナユタ 「コーザさん。」
コーザ 「あ?」
ナユタ 「落としましたよ。」

周りを確かめ。

コーザ 「何を落としたって?」
ナユタ 「命を。」
コーザ 「フッ、ハハハハハ!往生際が悪いアンドロイド…(急に苦しみ出し)うぐっ…ぐあああっ!」
ナユタ 「アンドロイドではなく、有機ドロイドです。」
コーザ 「ばかな!きさま…どこにこんな力がああ!」

コーザ、ハケると同時に爆発音。ナユタ、立ち上がり

ナユタ 「お休みなさい…永遠に…」

音楽が消え、下手が暗くなり上手が明るくなる。

あきら 「いやもうほんと、コテコテ過ぎてすみません。」
石倉 「コテコテなら『ウィー・アー・ドロップス』の3人娘。あれもいいね〜。地球軍の極秘チーム。正体は3人の女の子。」

音楽がかかり、下手が明るくなり上手が暗くなる。
ドロップスの3人娘、ランゼ、スーザン、ミルキーが銃撃戦をしながらトークをしている。

ランゼ 「(撃つ)お腹減った〜っ!」

スー・ミル「あたしも〜っ。」

ランゼ 「ランゼ、パフェ食べた〜い!(撃つ)」
スー 「フォボスのチョコバナナ?」
ランゼ 「あれ最高〜!(ランゼ、スー、撃つ)」
スー 「ダイモスのマンゴーライムも捨てがたいわね。(撃つ)」
ランゼ 「あれもいいよねぇ〜(はあと)ミルキーどっち食べたい?」
ミルキー 「両方。」

ラン・スー「ゆ〜じゅ〜ふだ〜ん。(三人、撃つ)」

スー 「アァ駄目。頭ん中パフェモード。」
ミルキー 「後ろ。」(スー、ランゼ、撃つ。)
スー・ラン 「サンキュ〜(はあと)
ランゼ 「あれれ、敵、全部倒しちゃったみたい。」
スー 「ほんとだ。」
ミルキー 「味気なさすぎ。」
声1 「助かりました!ありがとう!」
声2 「いったい君たちは…」

決めポーズしなから。

ランゼ 「ランゼ!」
スー 「スーザン!」
ミキ 「ミルキー!」
3人 「ウィーアー ドロップス!」写真
声1 「ド、ドロップス?!ってあの地球軍最強チームの?」
声2 「女神様だ〜!」
ランゼ 「イエス! 」

決めポーズしながら。

ランゼ 「Cute!」
スー 「Beauty!」
ミキ 「Intelligence!」
3人 「ウィーアー ドロップス!」

音楽が消え、下手が暗くなり上手が明るくなる。

石倉 「いいよね〜。それとあれも好き、これに出て来る人間とアンドロイドのコンビ漫才師。」
納谷 「東京アンドロイズ!」
あきら 「びっくりした。」
納谷 「あ、すみません。実は僕も大ファンでなんでつい。東京アンドロイズ、超好きです!」
あきら 「嬉しいです。実はスピンオフで東京アンドロイズの話も構想中なんですよ。」
納谷 「ほんとですか?!超楽しみです!」
石倉 「そうそう、全く別の新作も執筆中って事だけど、今度の物語の舞台は?」
あきら 「あの世です。」
石倉 「あの世?」
あきら 「はい。あの世は天国と地獄とその中間との3っつの世界からなっていて、人が死ぬとまずこの中間の世界に行くんです。」
石倉 「ほうほう。」
あきら 「そこで、生きてる間に犯した罪を償うために仕事をします。」
石倉 「死んだ後も働くんだ。」
あきら 「仕事は色々あるんですが、僕が書くのは潜水艦の乗組員です。」
石倉 「潜水艦?」
あきら 「潜水艦で生きている人間の心の海に潜って、その人を幸せに導くんです。」

音楽がかかり、下手が明るくなり上手は暗くなる。潜水艦内。
艦長の川藤賢治(かわとうけんじ)、副長の新島八重(にいじまやえ)、レーダーの新垣謙(あらがきけん)、マインドソナーの御船千鶴子(みふねちづこ)、操舵手の神道浩(しんどうひろし)がいる。
上手前にスポット。女子高生の浜崎沙綾(はまさきさや)が現れる。

川藤 「さやちゃんそうとう緊張してるな。」
新島 「当然です。彼女にとっては清水(きよみず)の舞台の際(きわ)ですから。」
新垣 「目標、レーダーで捕捉。二時の方向、距離7メートル。」
新島 「肉眼での捕捉は?」
御船 「まだです。」
川藤 「昼休みの廊下は人が多いからな。」
御船 「さやちゃん、九時の方向に進路を変更しようとしています。」
新島 「艦長。」
川藤 「ああ。信号打て!」
神道 「信号打ちます!」

信号音、コ〜ン。さやちゃん気が付く。

御船 「さやちゃん、目標を肉眼で捕捉。心拍数、上昇。」
新垣 「目標、廊下を正面から接近中。距離5メートル。」
川藤 「さあ来るぞ。」
新垣 「4メートル。」
御船 「心拍数、更に上昇。」
神道 「目標、さやちゃんに気づきません。」
新島 「声をかけて!さやちゃん!」
新垣 「3メートル。」
川藤 「マインドソナー!」
御船 「どうしよう緊張し過ぎて動けない!無理無理無理無理!」
新垣 「2メートル。」
神道 「このままじゃ通り過ぎてしまいます!」
川藤 「声かけ魚雷発射準備!」
神道 「声かけ魚雷発射準備良し!」
新垣 「1メートル。」

目標の松木夕陽が現れる

御船 「さやちゃん硬直!あきらめモードです!」
新垣 「目標、さやちゃんに気づかず通過!」
川藤 「声かけ魚雷発射!」
神道 「発射!」

魚雷発射音バシュー!、推進音シュワシュワ…、着弾音ドーン!。

神道 「命中!」
さや 「松木先輩!」
川藤 「よし!声かけ成功!」
御船 「目標、さやちゃんを認識。」
松木 「あ、さやちゃん。」
新島 「ここからが勝負ね。」
さや 「あ、あの…」
川藤 「行け、さやちゃん。」
さや 「あの…あの…」
川藤 「マインドソナー。」
御船 「落ち着いて、落ち着いて、深呼吸…」
川藤 「いいぞ、その調子だ。頑張れさやちゃん!」写真
全クルー 「頑張れさやちゃん!」

さや、意を決してチョコの入った小さな紙バックを差し出す。

さや 「先輩!これどうぞ!チョコです!手作りです!義理じゃないです!本命です!」
新垣 「言った!」
川藤 「しかも、なんかいっぱい言った!」
新島 「目標は?」
御船 「…沈黙です。」
神道 「頼む!いい返事を…」

間。全クルー、固唾を飲む。

松木 「ありがとう!」
御船 「ありがとう来ました!」
全クルー 「よっしゃ〜〜っ!!」
松木 「超嬉しいよ!いやびっくりした!ほんと嬉しい!」

始業チャイムが鳴る

松木 「あのさ、今日部活の後待っててくれる?」
さや 「え?はい、あの…」
松木 「一緒に帰ろう!じゃ!」

松木、足早に去る。さや、少し混乱気味ながらもハッピーな様子で去る。

御船 「さやちゃん、夢心地でテンション上昇。目標値突破しました!」
川藤 「ミッションクリアー!これより帰還する!」
全クルー 「よーそろー!」

音楽が消え、下手が暗くなり上手が明るくなる。

石倉 「なんかスケールが大きいんだか小さいんだかわからないけど、面白そうだね。」
あきら 「ありがとうございます。」

突然キーンという音がして、あきらの頭に痛みが走る。

あきら 「いててて…」
石倉 「大丈夫?」
あきら 「あ、いえ、大丈夫です。なんだろ?寝不足かな?」
石倉 「神田君働き過ぎだよ。」
納谷 「じゃとりあえず10分休憩しましょうか。」
石倉 「あっちにソファーあるから。」
あきら 「すみません…」

全員ハケる。暗転。

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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