△ 「スパイシー・エージェンツ」シーン6


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照明全体に。下手奥にスマートが立っている。中央から納谷が手帳を見ながら入って来る。

納谷 「ここかな?失礼しまーす。(奥にスマートを見つけ)あ、お、おはようございます。」
スマート 「おはようございます。」
納谷 「(手帳に書きながら)残念ながら二番目。」写真

中央から松木が入って来る。

松木 「グッモーニン!」
納谷・スマート 「…グッモーニン。」
松木 「なんだ、女子いないのか…」

奥から早乙女の声

早乙女 「あった、ここじゃない?」
松木 「お?女子?」

早乙女、入って来る。

早乙女 「おはようございま〜す!」
松木 「グッモー!男かい…」

金沢、入って来る。

金沢 「失礼します。」
松木 「女子!グッモーニン!」
金沢 「グッ…グッモーニン…」

ミー、入って来る。

ミー 「良かった5分前。余裕余裕。」
松木 「連続女子!グッモーニン!」
ミー 「グッモーニ…あ…」
松木 「あ…」
ミー 「(対戦ポーズ)あんた、ナンパ野郎じゃなくてストーカーだったの?!」
松木 「(納谷に)え?ストーカーなの君?」
納谷 「はあ?ぼ、僕のどこがストーカーなんですか?!」
早乙女 「見えなくもないけど。」
ミー 「そっちじゃなくてあんたに言ってんのよ!」
松木 「え?…うそ俺?」
ミー 「決まってんでしょ?!こんなとこでまた偶然会うわけないじゃない!」
松木 「その通りだ!偶然なんかじゃないこれは…運命だぜディスティニー!」
ミー・金沢 「…キモい…」
松木 「(納谷に)キモいって。」
納谷 「ぼ、僕のどこがキモいんだ!」
松木 「(ミーに)そうだよ、言い過ぎだよ。」
ミー 「だからあんたに言ってんのよ!」
松木 「え?…うそ…俺?…そんな…そんな…そんなに照れなくても。」
ミー 「う〜わ馬鹿だ…」
早乙女 「馬鹿ね。でもタイプ。」
ミー 「え?」
金沢 「帰りたくなって来た…」
スマート 「コントはそれくらいにしようか?」
松木 「は?なに君?」
スマート 「そろそろ時間だ。(みんなから少し離れる)」
松木 「え?」
スマート 「まさかダブの新人ってのが、本当に素人以下とは…」
松木 「ダブ?あ、おれボディーソープ使ってる。」
ミー 「それはダヴ。」
早乙女 「ビーじゃなくてヴィー。」
納谷 「ダブはWHPOの通称です。」
松木 「…あ〜なんだそっちか、知ってた知ってた。」
スマート 「緊張感のかけらもないし。」
松木 「は?別に緊張感なんか必要ないんじゃ…」

スマート突然銃を出し天井に発砲。みんな悲鳴。

松木 「…ビビッた〜!脅かすなよ!(スマートに近づこうとして納谷に止められる)」
納谷 「あれ…本物です…」
松木 「え、うそ?」
納谷 「天井に穴…」
松木 「(天井の穴を見て)マジ?…」

スマート、松木に銃を向ける。全員手を上げる。

スマート 「緊張感は大いに必要。我々の仕事は「死」と隣り合わせだからね。」
ミー 「あなた…何者?」

スマート、警察バッジを見せる。みんな息を飲む。

スマート 「警視庁公安部特務課、コードネーム「スマート」。通称「鬼のスマート」。君たちの教官だ。」
ミー 「(敬礼)失礼しました!」
他のみんな 「(敬礼)失礼しました!」
スマート 「整列!」

全員整列して気をつけ。

スマート 「今回から君たちダブの新人研修に、我々公安が協力することになった。」写真

スマート、松木に銃を向ける。

スマート 「では君に問題。」
松木 「はい?」
スマート 「ここはどこでしょう?」
松木 「えっと、…WHPO日本支部の施設!」

スマート、銃を発砲し松木倒れる。みんな悲鳴。

スマート 「不正解。」
早乙女 「うそ…」
ミー 「どうして…」
金沢 「こんなのって…」
スマート 「今のは空砲だ。」
ミー 「え?」
納谷 「(しゃがんで松木を見る)ホントだ、傷がない。」

松木、急に気づく。

松木 「うわああ!…あれ?生きてる。」
納谷 「今の空砲だそうです。」
松木 「なんだよもう、死んだかと思ったぜ…」
スマート 「(また松木に銃を向け)次は、実弾かもな。」
早乙女 「ホントに鬼ね…」

スマート、手で立つように促す。松木、苦笑いして起立。

スマート 「はい、では答え。ここは警察の施設だ。だが、警察でも知っているのは公安の極一部。できたのは明治時代で軍の施設だった事もある。君たちダブの施設については…研修終了まで教えることはできない。それまでここが君たちの仮の本拠地だが、万が一口外したら…」

スマート、また松木に銃を向ける

スマート 「消す。」

みんな、息を飲む。

スマート 「心配ない。消すのは記憶だ。」
ミー 「記憶…あ、角田さん…」
スマート 「ここで組織の者を紹介する。主任。」

ローズと瀬名が出て来る。ミーと目が合い立ち止まる。ミー、首をかしげる。

スマート 「主任。」
ローズ 「…失礼。警視庁公安部特務課主任。コードネーム「ローズ」。研修の指揮を取る。宜しく。」
スマート 「瀬名研究員。」
瀬名 「瀬名です。僕は君たちと同じWHPOの者だけど、研究員なんでコードネームはないから。能力者のデータの分析と研究をしています。宜しく。」
スマート 「あれ?あいつは?」
瀬名 「あ、さっきトイレ行くって。」
スマート 「…まったく、スマートさの欠片もない。実は今、ダブの日本支部長は留守中で代理の者が…」

上底、入って来る。

上底 「いやあ、ここのトイレ古くない?今時洋式一個しかないなんて…」写真
ミー 「上底先生?!」
上底 「おお!久しぶり〜!元気そうだな!」
ミー 「先生こそ!」
ローズ 「個人情報!」
ミー 「あ…すみません。」
ローズ 「上底支部長代理。」
上底 「ははは、めんごめんご。」
スマート 「挨拶を。」

上底、咳払いをして姿勢を正し

上底 「…おいっス!!」
ミー・瀬名 「おいっス!」

他のみんなは驚きつつバラバラに

みんな 「お、おいっス…」
上底 「声が小さい!おいっス!!」
みんな 「おいっす!」
上底 「もっと元気に!おいっス!!!」
みんな 「おいっス!!」
上底 「もっと大きく!おいっス!!!!」
みんな 「おいっス!!!」
上底 「静かにしろ〜。」
早乙女 「ってコントじゃない!。」
上底 「新人の諸君!…「全員集合」だね?」
瀬名 「あ、そこにかけたんですか。」
上底 「そうそう、全員集合とね、ドリフとね。」
瀬名 「それ、今度使わせて下さい。」
上底 「も使って使って!」

スマート咳払い。上底、瀬名、空気に気づいて咳払い。なんか咳払いがうるさい。

上底 「え〜、WHPO日本支部長が留守のため、その代理と、君たちの研修の教官も引き受けましたコードネーム「上底友吉」どえす。」
ミー 「え?先生の名前、コードネームだったんですか?」
上底 「さあ?」
ミー 「さあって…」
上底 「世の中に超能力を持った人間は山程いるが、君たちの力はズバ抜けている。それだけに何度となく辛い目にもあって来ただろう。しかしこの仕事はそんな君たちの能力を存分に活かす事ができる。ただ、超能力による凶悪犯罪も増加し、残念ながら命を落とす仲間も増えている。」
ローズ 「我々公安も何人も殉職している。元々我々は別組織だが、これからは協力し合い互いのスキルを向上させ犯罪に対応したい。」
スマート 「この研修期間中、みなさんには仮のコードネームが与えられるが、ここでもう一人、この数十年間、日本の公安を支えてきた重鎮を紹介する。会長。」

杖を突いた和装の老人、サンダー会長が入って来る。

スマート 「会長。ご挨拶を。」写真

サンダー会長、うなずき、みんなの前に立つ。咳ばらいをし、沈黙の後

サンダー 「おいっス!!」
スマート 「会長。」
サンダー 「え?」
瀬名 「それさっきやりました。」
サンダー 「…え?」
瀬名 「それ、おいっスって。」
サンダー 「…え?」
上底 「僕が、さっき、やっちゃいました、おいっス。」
サンダー 「なんだ、やっちゃったのぉ?」
上底 「すみません。」
早乙女 「(小声で)一番コントっぽいのが出てきたよ。」
サンダー 「コントじゃないよ。」
早乙女 「わ、聞こえてる…」
スマート 「会長をなめるな。この道90年の大ベテランだ。」
ミー 「90年?」
上底 「すげ〜んだこの爺さん。なんとあの、陸軍中野学校出身唯一の生き残りだぜ!」
松木 「陸軍中野学校?」
納谷 「戦時中の日本のスパイ学校です。」
早乙女 「(小声で)歳いくつよ?」
サンダー 「107歳。」
早乙女 「わ、聞こえてる…」
スマート 「仮のコードネームは、このサンダー会長に決めて頂くのが習わしとなっている。今から会長が一人一人の前に立ち、インスピレーションで名前を与える。会長。」
サンダー 「うむ。」

サンダー、松木をガン見し。

サンダー 「うぅうむ……「マイト」!」
松木 「お、かっこいい!あざっす!」

サンダー、納谷をガン見し

サンダー 「うぅうむ……「カイト」!」
納谷 「お、やったありがとうございます!」

サンダー、ミーをガン見し、少し考え

サンダー 「うぅうむ…うぅうむ……ミー…」
ミー 「ミー?それ元々のニックネームです!やった!」
サンダー 「…ト」
ミー 「え?」
サンダー 「ミート。」
ミー 「ミ、ミート?はちょっと…」
早乙女 「全員最後に「ト」をつけるのね。」

サンダー、金沢をガン見するが、やはり少し考える。

サンダー 「うぅうむ…うぅうむ…むむむ…うむむむ…(ひらめいた!)トマト。」写真
金沢 「ト…」
早乙女 「無理やり「ト」つけてない?」
金沢 「(両手で顔をふさぎ)ううっ!」
ミー 「大丈夫?」
松木 「そりゃコードネームがトマトじゃ…」
金沢 「嬉しいです!」
松木 「嬉しいんだ。」

サンダー、早乙女をガン見し、早乙女も緊張するが、割とサラッと出る。

サンダー 「うむ。チーズ。」
早乙女 「チ、チーズ?!」
サンダー 「チーズ。」
早乙女 「いや、あの、最後に「ト」すらついてないんですけど…」
ミー 「パン工場の犬みたい…」
スマート 「少しの辛抱だ。研修が終われば自分で新しいコードネームをつけられる。」
ミー 「良かった〜…。」
スマート 「会長、ありがとうございました。」
サンダー 「うんむ。」
ローズ 「マイト!」
松木 「はい!」
ローズ 「カイト!」
納谷 「はい!」
ローズ 「ミート!」
ミー 「はい!」
ローズ 「トマト!」
金沢 「はい!」
ローズ 「チーズ!」
早乙女 「はい!」
瀬名 「なんか後半からイタリアンが食べたくなりますね。」
上底 「それな!」
サンダー 「うんむ!」

スマート咳払い。上底、瀬名、サンダー、咳払い。やっぱなんか咳払いがうるさい。

ローズ 「10分後から研修をスタートする。」
ミー 「10分後?」
ローズ 「これから歓迎会でもすると?」
ミー 「い、いえ…」
ローズ 「まずは各自、部屋及び休憩スペースで待機。支持はその都度出す。」
上底 「そんな感じで研修期間の一か月、シクヨロ!」
全員 「宜しくお願いします!」
スマート 「解散!」

照明、中央サス。ミーが入る。他はそれぞれハケる。

ミー 「そんなこんなで初日がスタート。期待と不安でドキドキワクワク!…でも、ミートってのがちょっと…」

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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