△ 「コスモ・ノアへようこそ!」シーン11


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明転すると、ツキノワグマのざくろを瀬名桃子が診察している。

ざくろ 「先生…おらはもう長くねえんでしょうが?…なんとなぐ…わかるんす…自分の体の事だがら。先生…正直に言ってくだせえ…おらの…おらのびょうきは…」

瀬名、溜め息。モバイルを出して通信。

瀬名 「あ、瀬名です。ツキノワグマのざくろだけど。…残念ながら…」
ざくろ 「やっぱり…」
瀬名 「食あたりね。」
ざくろ 「しょ、しょぐあたり?!」
瀬名 「一連の原因不明の症状とは関係ないわ。うん、薬用意しといて。」
ざくろ 「しょぐあたりだったのすか〜!いがった〜! あ、(腹を抱えて)いででで…」
瀬名 「え?監視カメラ?ああ聞いてる。全館調子悪いんでしょ?わかった気をつける。じゃ。」写真

瀬名、モバイルを切る。

瀬名 「ざくろ〜。また変なもの食べたな?」
ざくろ 「いや、おらは何も…」
瀬名 「おおかたまたディスプレー用の木の実でも食べたんでしょ?」
ざくろ 「いやいや、おらは決してそんなもの…あ、たべたな。」
瀬名 「あれは体に毒じゃないけど、食べ過ぎたら体調壊すよ。後で薬持って来るから。ちゃんと飲むのよ。」

瀬名、去る。

ざくろ 「いや、お腹減っても薬だけは飲みたくねんだよな。」

ざくろ、座る。

ざくろ 「でも取り合えす不治の病じゃなぐてほんどにいがったぁ。それにすてもこのメディカルセンターってとごはホントに落ち着かなねぇなぁ。」

ざくろ、横になると、袖から片足を引きずったホッキョクグマのハラショが出て来る。疲れた様子で
ざくろの近くに座る。溜め息をつくと、ゆっくり振り向き、同時に振り向いたざくろと目が合う。

ざくろ・ハラショ 「うわあああああ!!!」写真

驚いて距離を取り睨み合う2頭。

ざくろ 「…白い…」
ハラショ 「…黒い…」
ざくろ 「…あの、あんだ…クマ、だべか?」
ハラショ 「はい、あなたも?」
ざくろ 「おらもだ。あんだ、何でそんな真っ白に?」
ハラショ 「なんでって…」
ざくろ 「けっこう、おどすよりなんだべか?」
ハラショ 「いや白髪じゃないです。けっこう若いです。」
ざくろ 「もの凄くショックな事があっだとか?」
ハラショ 「いえ…」
ざくろ 「じゃ、一体…?」
ハラショ 「いや、クマって基本白ですよね?」
ざくろ 「え?…いやいやいやいや、基本は黒だべ?」
ハラショ 「いやいやいやいや、基本は白ですって。あなたも元は白かったんじゃ?」
ざくろ 「生まれつき黒だぁ。」
ハラショ 「日に焼けたとか?」
ざくろ 「毛は日焼けしねべ。」
ハラショ 「汚れちゃったとか?」
ざくろ 「おらは毎日2回は水浴びすてるって!」
ハラショ 「じゃどうして…あ、ちなみにお名前は?」
ざくろ 「ツキノワグマのざくろと申すます。あんだは?」
ハラショ 「ホッキョクグマのハラショと申します。初めまして。」
ざくろ 「こつらこそ…ん?ホッキョクグマ?…」
ハラショ 「ツキノワグマ?…」

2頭少し考えて

ざくろ・ハラショ 「あ〜!」
ハラショ 「多分これ、あれですよ、元々の生息地が違うんじゃ?」
ざくろ 「はいはい、どっがで聞いた事あるような…」
ハラショ 「ですよね。」
ざくろ 「あれ?」
ハラショ 「え?」
ざくろ 「(挙手)はい!はい!素朴な疑問!」
ハラショ 「何でしょう?」
ざくろ 「なすてハラショさん、檻の外にいんだ?」
ハラショ 「あぁ、それはですね、なんか、自分がいた病室にいきなり銃を持った男が飛び込んで来てですね…」
ざくろ 「え?おっがねぇなぁ。」
ハラショ 「メチャメチャ怖かったですよぉ。で、部屋に隠れてたんですがね。なんか悪い人っぽかったから…、ほら、一応クマじゃないですか私も。」
ざくろ 「猛獣だぁ。」
ハラショ 「そ、猛獣でしょ?なんで、ちょっと勇気出して「ガオオオッ!」って威嚇してやったんですよ。」
ざくろ 「え?銃持ってる相手に?!」
ハラショ 「いやもういっぱいいっぱいでしたよ。いや、そしたらね、その男「ごめんごめん」って言って出てっちゃったんですよ。」
ざくろ 「すんげ〜!」
ハラショ 「で、その時ドアが開けっ放しになってまして…」
ざくろ 「あ、そんで出てこられた…」
ハラショ 「ま、そんな次第で。」
ざくろ 「いやいや、すんげ〜話すだなや〜。ああ、そういやぁ、北極って、おらたつツキノワグマの故郷から遠いんだべか?」
ハラショ 「遠いんじゃないですかね?白から黒になっっちゃう位。」
ざくろ 「じゃ、その中間のクマって何色なんだべ?」
ハラショ 「え?そりゃやっぱり…灰色ですかね?」
ざくろ 「なんだべか?」
ハラショ 「あ!でももしかしたら、ほら、ざくろさんの胸のとこ白いじゃないですか。」
ざくろ 「ああ、ツキノワの形の部分。」
ハラショ 「これが、徐々に大きくなってく来るんじゃないですかね?」
ざくろ 「ああ、なるほど、じゃ、中間はツキノワの部分が凄くでっかいって事だべか?」
ハラショ 「あるいは、この模様がどんどん増えて行くとか?」
ざくろ 「え?これが2カ所とか3カ所とかになって行ぐってか?」
ハラショ 「で最終的には全部白で埋まるとか?」
ざくろ 「ってことは、おらのこの部分がいっぺえ集まったのがハラショさんってことが?」
ハラショ 「ま、あくまで予想ですけどね。」
ざくろ 「ほんとは何色なんだべなぁ」

そこにイェーイェーが疲れた姿で入って来る。

ハラショ 「会ってみたいですよねぇ、中間のクマに。」
ざくろ 「会ってみてえなぁ。」

2頭が横を見ると、イェーイェーと目が合う。

ざくろ・ハラショ・イェーイェー 「え〜〜〜っ?!!」

3頭びっくりしたまま沈黙。

ざくろ・ハラショ・イェーイェー 「え〜〜〜っ?!!」

3頭言葉が出ない。

ざくろ・ハラショ・イェーイェー 「え〜〜〜っ?!!」写真
ざくろ 「…もすかすて、これが正解?」
ハラショ 「これはまた…予想外の模様です…」
ざくろ 「あの、失礼ですが…あんだ、なにグマさん?」
イェーイェー 「え?僕?僕はパンダですが…。」
ハラショ 「パンダグマ?」
イェーイェー 「あの、そのフォルムは、もしかして僕の仲間ですか?」
ざくろ 「多分…」
イェーイェー 「どうしたんですか?お二人とも、その体の色。」
ざくろ・ハラショ 「いや、そちらこそ…」

音楽がかかり、一旦暗転。すぐに明転すると3頭とも和んでいる。

イェーイェー 「いや〜そうだったのですね。僕がお二人の中間辺りのクマって事ですね。」
ハラショ 「多分ですけどね。」
ざくろ 「ところで、イェーイェーさんはなすて抜け出せたんだ?」
イェーイェー 「あ〜、それがですね、なんか怪しい男がいきなり部屋に入って来て…」
ハラショ 「え?もしかしてカギ閉めないで出てっちゃったとか?!」
イェーイェー 「え?何で知ってるですか?」
ハラショ 「私もそれで出て来れたんですよ!多分同じ人ですよそれ!で、どうやって追い出したんですか?」
イェーイェー 「いや、追い出したって言うか…」
ざくろ 「やっぱ、猛獣の血が騒いで「ガオオオ!」ってやったんか?」
イェーイェー 「え?何ですか?猛獣の血って?」
ハラショ 「いや、だってうちら一応猛獣じゃないですか。」
イェーイェー 「猛獣?え?猛獣?僕が?」
ざくろ 「え?パンダグマって猛獣じゃねのか?」
イェーイェー 「あんまし言われた事ないですねぇ。珍獣とは言われますけど。」
ハラショ 「珍獣?」
ざくろ 「じゃ、爪とか牙とかは?」写真
イェーイェー 「え?」

みんなでイェーイェーの爪と牙を確認する。

ハラショ 「あるじゃないですか。」
イェーイェー 「ありますですね。」
ざくろ 「それ猛獣だべ。」
イェーイェー 「猛獣ですか?」
ハラショ 「猛獣猛獣。」
イェーイェー 「そうか、僕は猛獣だったのですね…」
ざぐろ 「でも「ガオオオ!」ってやらずにどうやって追い出したんだぁ?」
イェーイェー 「いや追い出す前に出てっちゃったですよ。で、銃撃戦になっちゃって…」
ざくろ・ハラショ 「銃撃戦?!」
ハラショ 「怖っ!」
イェーイェー 「いや、ほんと死ぬかと思ったです。」
ざくろ 「んだども、言ってみりゃその男のおかげで、こうすてうちら出会えたって事だべ。」
ハラショ 「これって凄い事ですよね?」
ざくろ 「史上初の顔合わせだべ?」
イェーイェー 「奇跡の対談ですね。」
ざくろ 「あ〜、病室でなければ、つまみとが用意さできたんだけどなぁ。」
ハラショ 「いやいや、おかまいなく。」
イェーイェー 「僕もさっき笹いっぱい食べて来ましたから。」
ざくろ・ハラショ 「笹あ?!」
ハラショ 「笹ってあの、葉っぱの?」
イェーイェー 「え、はい。」
ざくろ 「食べんのが?」
イェーイェー 「え?食べないんですか?」
ざくろ 「いやぁ、笹は〜食べた事ねぇなぁ〜」
ハラショ 「私もないですねぇ。フルーツはちょいちょい食べますがね。」
イェーイェー 「あ、フルーツは僕も好きです。主食ですからね。」
ざくろ・ハラショ 「主食う?!」
イェーイェー 「え?みなさんは違うんですか?」
ざくろ 「主食は肉だべ。」
ハラショ 「肉ですよね。」
イェーイェー 「肉?え?肉が主食ですか?」
ハラショ 「え、食べないんですか?」
イェーイェー 「いや、少しは食べますですが、主食にはちょっと…」
ハラショ 「不思議ですよね?」
イェーイェー 「え?」
ハラショ 「だって、ちょっと並んでみて下さい。」

3頭、ハラショ、イェーイェー、ざくろの順番に並ぶ。

ハラショ 「こういう並びですよね。」写真
イェーイェー 「ええ。」
ハラショ 「うちの主食は肉で、ずっと来てここで笹とか食べるようになって、またずっと行って、ざくろさんの所でまた肉食になるって事ですよね?」
イェーイェー 「そうですね。」
ざくろ 「(イェーイェーの辺りを指差して)この辺でなんかあったな。」
ハラショ 「確実に何かありましたね。」
ざくろ 「そうなっと、更にこの間のクマにも会いたぐねぇが?」
ハラショ 「どこら辺からベジタリアンになるのか調べたいですよね?」
イェーイェー 「どこまでマックでどこからマクドになるのかみたいにですね。」
館内放送 「業務連絡。3号館、清掃担当。F棟にお集り下さい。」
イェーイェー 「あ、まずいです!僕の部屋の清掃の知らせです!」
ざくろ 「え?じゃ、戻らねえと!」
イェーイェー 「あぁ、もっと皆さんとお話してたかったですが、僕はこの辺で失礼。」
ハラショ 「そうした方がいい。」
ざくろ 「気いつけてな。」
イェーイェー 「じゃ、またどこかで!」
ざくろ・ハラショ 「お元気で!」

イェーイェー去る。ざくろ、ハラショ、見送る。

ざくろ 「中々面白いやづだったなぁ。」
ハラショ 「ええ。」
ざくろ 「…あ、そう言えばさっき思ったんだげど。」
ハラショ 「はい。」
ざくろ 「もすも、黒いクマと白いクマの間に子どもがでぎたら、何色になんだべか?」
ハラショ 「それは〜…」

音楽がかかり始める

ざくろ 「灰色だべか?」
ハラショ 「いや、その場合は白か黒のどっちかじゃないですか?」
ざくろ 「ツートンって事は?」
ハラショ 「それならシマシマって可能性も…」

音楽、会話が続く中徐々に大きくなり、ゆっくり暗転。音楽フェードアウト。

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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