△ 「コスモ・ノアへようこそ!」シーン12


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別の音楽がかかり、ナレーションと共に中央にサス。そこに呆然と上を見上げるハムスター、ジャムの姿。
同時に照明が下手奥、上手奥、下手奥とゆっくり点滅。その明りの中にスローモーションでもがく
ハムスター達動物の姿。

ジャム(声) 「その日、僕たちハムスターは思い出した…人間の子どもという動物達に、蹂躙されていた事を…」

ゆっくり暗転し、音楽フェードアウト。別の音楽がかかり明転するとポリーが立っている。

ポリー 「5分前。そろそろ皆を出すか。」

ポリー、あちこち動き、かごのフタを開ける。

ポリー 「さあみんな!いよいよデビューよ!思う存分子ども達を癒してあげてね。じゃ、子ども達に諸注意を話して来るね。」

ポリーハケる。照明がかわり、ハムスターのジャムが出て来る。

ジャム 「おお〜。いつもより空が広い場所だな〜。」写真

ジャムの弟、シロップが大きなひまわりの種を持って出て来る。

シロップ 「ジャム兄ちゃ〜ん〜!」
ジャム 「シロップ!」
シロップ 「見てみて、このひまわりの種、大きくない?」
ジャム 「わ、ほんとだ。」
シロップ 「しかもおいしいんだ。(かじる)カリカリカリ。」
ジャム 「シロップはホントに食いしん坊だなぁ。それより見てみろよ!」
シロップ 「うわ〜、空がひろ〜い!」
ジャム 「だろ?すげーよな〜!…なあシロップ。」
シロップ 「なあに?」
ジャム 「あの柵の向こうに行ってみたくないか?」
シロップ 「う〜ん…美味しいものがあるならね。」
ジャム 「やっぱりお前は食べ物か。」
シロップ 「ジャム兄ちゃんは行きたいの?何があるかわからないんだよ?」
ジャム 「だから行きたいんだよ!いつか絶対行ってやるんだ!」

うさぎのクララが出て来る。

クララ 「ジャム〜、シロップ〜。」
ジャム 「ウサギのクララちゃんじゃないか!」
シロップ 「見てよこの空!。」
クララ 「うわ〜ひろ〜い!」
ジャム 「今日は一体何があるんだろうな?」
シロップ 「ワクワクワクワク…」

チャボのハイジがせわしなく出て来る。

ハイジ 「ざわざわざわざわ…」
ジャム 「あ、チャボのハイジおばさん!」
ハイジ 「あら、ハムスターのなんとかくんと、弟のなんとかくんと、うさぎのなんとかちゃん。」
ジャム 「ジャムです。」
シロップ 「シロップです。」
クララ 「クララです。」
ハイジ 「ああ、そうだったざますね。ざわざわざわざわ。」
ジャム 「どうしたの?ざわざわ言って。」
ハイジ 「なんざますかね、朝から胸がざわつくざます。」
ジャム 「それよりおばさん、空をみてよ!」
シロップ 「凄く広いんだよぉ。」

ハイジ、空を見上げておののく。

ハイジ 「はあああっ!こ、この空はあ!!」
ジャム 「どうしたの?」
ハイジ 「その昔、あたくしがまだヒナの頃、見た空ざます。その日とても恐ろしい事が起こったざます。」
シロップ 「え?恐ろしい事?」
ハイジ 「ヒナだったから良く覚えてないざますが、とにかくとても恐ろしかった事は間違いないざます!」
シロップ 「3歩歩いたら忘れちゃうおばさんが、そんな昔の記憶を覚えているなんて…」
ジャム 「恐ろしい事って…まさかあの事じゃないよな?」
シロップ 「あの事って?」
ジャム 「お師匠様から聞いたあの話さ。」
シロップ 「お師匠さまって、長老オンジの事?」
ジャム 「うん。「地獄のふれあいコーナー」の話し。」
シロップ 「地獄のふれあいコーナー?」
クララ 「昔、私たちが人間にひどい目に遭ったっていう、あの伝説の事?」
ジャム 「そう。僕はまたそんな事が起きた日のために、時々師匠に戦う訓練をうけているんだ。」
シロップ 「でも、僕らの知ってる人間はみんな優しいよね?食べ物くれるし。」
ジャム 「ま、伝説が嘘でもホントでも、訓練は楽しいからうけてるんだけどね。」

ハムスターの長老、オンジが登場。

長老 「嘘ではない。」写真
ジャム 「お師匠様!」
長老 「おお、この空。やはり恐れていた事が起こってしまったか…」
ジャム 「お師匠様、それってやっぱり…」
長老 「ああ、間違いない。「地獄のふれあいコーナー」の復活じゃ。」
シロップ 「ええ?」
クララ 「本当なの?」
長老 「1年前、ふれあいコーナーは終わったと誰もが喜んでおった。じゃが、また復活してしもうた…」
ハイジ 「やっぱりこのざわざわは当たってたんざますか…」
ジャム 「でも、人間がどうしてそんな事を?飼育員のみんなは凄く優しいのに。」
長老 「子どもじゃよ。」
シロップ 「子ども?」
長老 「人間の子どもという動物が恐ろしいのじゃ。」
シロップ 「子どもなら平気な気がするけど。」
長老 「確かに大人より体は小さい、しかし小さくなればなる程、凶暴さは増すのじゃ。」
ジャム 「凶暴って、いったいどれ位?」
長老 「追いかけられて、つかまって、振り回されて、中にはストレスで死んでしまう仲間さえおった。」
シロップ 「えええ?!そんな…」
長老 「うさぎなんて耳を掴んで持ち上げられたり…」
クララ 「ひどい!」
長老 「逃げても逃げても追ってくるんじゃ。」
シロップ 「怖いよお兄ちゃん。」
ジャム 「お師匠様は一度この国から脱出した事もあるんだって。」
シロップ 「うそお!」
長老 「ま、しばらくしてつかまって強制送還されてしまったがのぉ。」
ハイジ 「どうやって脱出なんて…」
長老 「ジャム、お前がいつもやっている「訓練のその1」じゃ。」
ジャム 「あれって脱出の訓練だったんですか?」
長老 「そうじゃ。」
シロップ 「どんな訓練?」
ジャム 「訓練その1、敵のすきを見て!」
シロップ 「すきを見て!」
ジャム 「一気に駆け上がり!」
シロップ 「一気に駆け上がり!」
ジャム 「思い切って飛び込む!」
シロップ 「思い切って飛び込む!」
ジャム 「以上だ。」
クララ 「え〜っ?それだけ?」
シロップ 「なんだか全然わからないよぉ。」
ポリー(声) 「さあ良い子のみなさん。お約束をしっかり守って、動物さん達と遊んで下さいね。」

音楽がかかる

ジャム 「今のは…」写真
長老 「進撃の合図じゃ。」

ドーン、ドーンという地響きの様な足音が聞こえる。

長老 「あれじゃ…」

みんな呆然と見上げる。

シロップ 「あれが…」
ジャム 「人間の子ども…」

子どもたちのはしゃぐ声がする。

長老 「来おった!みんな!できるだけ散らばるんじゃ!」

全員拡散する。それぞれ逃げ回るが。

ハイジ 「さあヒナたち!逃げるざます!うちのかわいいヒナたちには触れさせないざますよ!」

ハイジ、ヒナたちを守るために立ち回るが捕まってしまう。

ハイジ 「しまった、捕まったざます!放すざます〜!」

ハイジ、連れ去られる。

ジャム 「ハイジさん!」

クララが捕まる。

クララ 「きゃー!助けて!!助けてジャム〜!」
ジャム 「クララ〜っ!」

クララ連れ去られる。

ジャム 「くそお!」

長老がつかまる。

長老 「うああああ!」
ジャム 「お師匠様あ!」
長老 「放せ!わしゃ年寄なんじゃぞ!うわあああ!」

長老連れ去られる。

ジャム 「お師匠様あ!」

シロップが逃げて来る。ひまわりの種を振り回している。

シロップ 「やめろ!来るな!あっちに行け!」
ジャム 「シロップこっちだ!」
シロップ 「ジャム!」

シロップ、ジャムの方に逃げるが途中でひまわりの種を落とし、

シロップ 「あ、ひまわりの種が!」

取ろうとして捕まる。

シロップ 「うわああ!」
ジャム 「シロップ!」
シロップ 「ジャム〜!ジャム〜!!」
ジャム 「シロップ〜!」

シロップが連れ去られ、ジャム、追いかけようとするが自分も捕まりそうになり隠れる。

ジャム 「ちくしょう!…やっぱり嫌だ!こんな世界にいるのは嫌だ!」写真

ジャム、走り出し、もの影に隠れ辺りを見回す。

ジャム 「そうか!わかったぞ!あの子どもか!よおし、訓練その1!敵のすきを見て!」

ジャム、辺りを確認してまた走り出す。

ジャム 「子どもの背中へ一気に駆け上がり!うおおおお!」

ジャム、子どもの背中へ駆け上がる。

ジャム 「リュックのポケットに思い切って飛び込む!うりゃああああ!」

ジャム、リュックのポケットに飛び込む。

ジャム 「やったぞ!成功だ!リュックのポケットに入ったぞ!…みんな…無事だろうか…。僕は外の世界に行ってくる!そして強いハムスターなって、いつかみんなを助けに戻って来る!その日まで、みんな無事でいてくれ!!」

ジャム、姿を隠し暗転。音楽フェードアウト。

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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