△ 「コスモ・ノアへようこそ!」シーン10


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アシカショーのリーダー、上野りんごの声がする。

りんご(声) 「は〜いそれじゃ最後にアシカ君達みんなで投げキッス!決まった所で、みなさん、さよ〜なら〜!是非またアシカ君達に会いに来て下さいね!ありがとうございました〜!」写真

ショーを終えたアシカのタナカ、スズキ、サトウに続き、上野が出て来る。

りんご 「みんなお疲れ、ちょっと危ない所もあったけど、今日も頑張ったわね!」

りんご、3頭に餌をやる。

りんご 「はい。はい。はい。」

3頭、順番に(少し被り気味に)お礼を言う。

タナカ 「ありがとうございます!」
スズキ 「ありがとうございます!」
サトウ 「ありがとうございます!」
りんご 「でもね、ショー以外の時のあなたたちの関係、やっぱり気になるのよね。」
タナカ 「何をおっしゃいます社長!我々はずっと仲良しですよ!なあスズキ君!」
スズキ 「ええそりゃもちろん!タナカ課長のおっしゃる通りです!ね、サトウさん!」

サトウ、黙っている。

りんご 「もし皆のコンビネーションに影響が出るようだったら。ショーはもう出来なくなるかも知れないの。」
タナカ・スズキ・サトウ 「え?」
スズキ 「それって…解雇…されるってことでしょうか?。」
りんご 「お願いだから仲良くしてね。」
タナカ 「もちろんです社長!」
りんご 「じゃ、明日も頑張りましょうね!」
タナカ・スズキ・サトウ 「はい!お疲れ様でしたあ!」

3頭、頭を下げる。りんごがハケると3頭、頭を上げる。

タナカ 「いや〜今日もバッチリだったねスズキ君!」
スズキ 「バッチリでしたね!タナカ課長!」
タナカ 「どうだい?今日の私のあのバランス芸。」
スズキ 「いや、ホントにお見事でしたよあれは!ね、サトウさん!」

サトウ、黙っている。

タナカ 「スズキ君、さっきの輪投げの時、私がループを落としそうになって焦ったろ?」
スズキ 「ええ!あれは焦りましたよぉ〜。とっさに僕が取っちゃってすみませんでした。」
タナカ 「いいんだよそれで。実はね、あれ、わざとなんだ。」
スズキ 「え?」
タナカ 「いつも私ばっかりいいとこ持ってっちゃうだろ?だけどたまには可愛い部下たちにも、いいとこゆずってあげなきゃって思う訳だよ、上司としては。」
スズキ 「なんと!そうだったんですね!ありがとうございます!」
タナカ 「今後も時々急に振ると思うから、気を抜くなよ、スズキ君。」
スズキ 「はい!」
タナカ 「じゃ、私は先に上がるから。」
スズキ 「お疲れ様でした!」

タナカ、去る。スズキ、頭を上げる。

スズキ 「さ、うちらも上がりますか。」

スズキ、腕を組んで怖い顔のサトウを見て

スズキ 「あれ?サトウさん上がらないの?」
サトウ 「スズキ君。いいの?」
スズキ 「え?何が?」
サトウ 「なんであんなやつにへーこらしてんのよ?」写真
スズキ 「え?だって大先輩だろ?僕らが生まれる前からここで働いてるベテランなんだから。」
サトウ 「もう老いぼれよ。さっきだってループを落としかけたじゃない。」
スズキ 「あれはわざとだって言ってたじゃないか。」
サトウ 「あんなの嘘に決まってるでしょ?」
スズキ 「嘘?」
サトウ 「あれは失敗の言い訳。コンビネーションどころか自分の事しか考えてない。」
スズキ 「そうかな?」
サトウ 「スズキ君。あそこであんな見事なフォローができるアシカは中々いないわ。」
スズキ 「あ、ありがとう。」
サトウ 「わからない?もうあいつよりあなたの方が上なのよ!」
スズキ 「いや、僕はまだそんな…」
サトウ 「とにかく、これ以上あいつと仕事したくない。」
スズキ 「ちょっとまって、そんな事になったら解雇だって社長が…」
サトウ 「こっちから辞めてやる。」
スズキ 「落ち着いてよサトウさん!」
サトウ 「あいつの肩を持つなら…あんたとも無理。」
スズキ 「サトウさん…」

サトウ、去る。

スズキ 「まずい…このままじゃアシカショーは終わってしまう…。嫌だ…僕はこの仕事が生き甲斐なんだ…ただ泳ぎ回る生活なんて絶対嫌だ。ここは…タナカ課長と腹を割って話すしかない。」

スズキ、ハケる。暗転。

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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