△ 「コスモ・ノアへようこそ!」シーン6


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ライオンが吠える声がして明転。ライオンの姉妹(見た目は女子高生)シャンプーとリンスが
肉の取り合いをしている。

シャンプー 「離しなさいよ!リンス!」
リンス 「ずるいよお姉ちゃん!私が先に見つけたのに!」
シャンプー 「甘いわリンス!先も後も関係ない!獲物は強い方のものよ!」
リンス 「まだあっちにお肉あったじゃない!」写真
シャンプー 「これが一番大きいのよ!」

2人の母親ライオン、ダイヤがやって来る。

ダイヤ 「シャンプー!リンス!」
シャンプー・リンス 「はいママ!」

2人、肉を落とす。ダイヤ睨みながら2人に近づき

ダイヤ 「もっとやりなさい!」
シャンプー・リンス 「はいママ!」

2人また取り合う

シャンプー 「よこしなさいよ!」
リンス 「これは私のよ!」
ダイヤ 「そうそう、ライオンたるもの、そうやって強くなって行くものよ。」

父親ライオンのトランプがあくびをしながら出て来る。よれよれのシャツに腹巻き姿。

トランプ 「なんだいなんだい、朝っぱらから騒々しいねぇ。」
ダイヤ 「もう昼だよ。」

トランプ、娘達に近づき

トランプ 「おいおい2人ともよしなさいって。二人っきりの姉妹じゃねえか。もっと仲良くしなさいって…」
シャンプー・リンス 「父ちゃんは黙ってて!」
トランプ 「怖いねどうも。」

シャンプー、リンスをどついて肉を奪う。

シャンプー 「よっしゃ!獲ったどー!」

シャンプー、肉を食べ始める。リンス、泣きながらハケる。

リンス 「うわぁ〜ん、ずるいよ〜。」
トランプ 「あ〜あ〜、もっと平和にいかないもんかねぇ。」
ダイヤ 「なに言ってんだいあんた!何が平和だよこのこんこんちき!」
トランプ 「こんこんちき?」
ダイヤ 「あんた自分が何だかわかってんのかい?」
トランプ 「人呼んでライオンのトランプと発します。」
ダイヤ 「百獣の王でしょ!百獣の王!」
トランプ 「いやそれはそう言われてますけどねダイヤさん、実のところ象さんやサイさんやカバさんにもタイマンじゃ絶対勝てないって…」
ダイヤ 「トランプ!あんたがそんなだから娘達にもバカにされるんじゃない!」
トランプ 「いや、そう言われましても…」

リンスが小さめの肉を持って戻って来て食べ始める。

ダイヤ 「野生の血を、ライオンと言う種を絶やさぬ様に育てるのが親の務めでしょ?」

お客のベレー帽の少女が現れてライオン達を見ている。

ダイヤ 「ま、元々子育てはオスには向いていないし、野生では狩りをするのもほとんどメスだって言うし。百獣の王どころかただのダメおやじでも仕方ないけど。」
シャンプー・リンス 「ダメおやじ。」
トランプ 「あ!あ!君達ね、それを言っちゃ〜おしめ〜だよ?うちらは代々生まれも育ちも動物園、メディカルルームで産湯を使い、狩りをぜずとも毎日満腹、お客様の前でちょいとウロウロすれば喜ばれる。そんな環境で育って来たってのに、野生だなんだって、今更石器時代に戻れやしねえんじゃないですかい?」
ダイヤ 「情けない…あんたにはプライドってもんがないのかい?」写真
トランプ 「プライド?」
ダイヤ 「確かにうちらはもう野生じゃ暮らせやしないよ。でも動物園で暮らすならそれなりなりに少しはプライドや威厳持ってウロウロしろってんだよ!うちらはお客に「カワイイ〜」って言われちゃダメなんだよ。「強そう!」とか「やっぱりライオンって凄い!」って思われてナンボでしょうが!いいかい?お客はね、あんたみたいな「でっかい飼い猫」なんか見たかないんだよ!」
リンス 「ママ凄い…」
シャンプー 「お父ちゃん、ぐうの音も出ない…」

トランプ、溜め息をついて去ろうとする。

ダイヤ 「どこ行くんだい。」
トランプ 「…ちょいと水飲んで来る…」

トランプハケる。ダイヤも溜め息。

ダイヤ 「これが今時のオスライオンなのかね…情けない…」

ダイヤもハケる。

シャンプー 「父ちゃんみたいにはなりたくないね。」
リンス 「うん。」
少女 「そうね、あんな父親じゃね。」
シャンプー・リンス 「ね。…え?」
少女 「父親なんて…みんなあんなものなのかもね。」

少女去る。

シャンプー 「…何?今の?」
リンス 「…人間のメスっぽかったけど。」

暗転。

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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