△ 「ほぐす!」シーン6


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ベリー 「いきなり父さんって!」
市後 「ごめんなさい…」写真
ベリー 「グッジョブ。」
市後 「え?」
ベリー 「あんたが娘として登場してくれたおかげで、探すの不自然じゃなくなったでしょ。」
市後 「あ、確かに…」
ベリー 「さ!今のうちに!」

ベリー、急いで部屋の隅に行く

市後 「あの、メモの大きさとかは…」
ベリー 「え〜っと、いつもピンク色の、このくらいの紙で、」
市後 「ピンク…」
ベリー 「中身は全部手書きよ。」
市後 「手書き…あ!」
ベリー 「あった?」
市後 「トイレ、もう出て来ます!」
ベリー 「早いよ!」

原、戻って来る。

「すみません何度も…」

ベリー、慌てて戻ろうとして、つまづいてこける。

ベリー 「うあっ!」
「え?」

原、ベリーの声がした方を向く。ベリー、市後、緊張。ベリーとっさに

ベリー 「…あ、あなた?」
「え?」
ベリー 「…やっぱり寝室にもないみたいよ。」

ベリー、市後に何かしゃべれとジェスチャー。

市後 「か、母さん、寝室はさっき私が探したよ。」
ベリー 「あら、そうなの?」

ベリー、忍び足で死体のそばへ

「あの…」
ベリー 「妻もいたんだ。」
「…ああ!そうでしたか!すみません、私、目が悪いもんで全然気づかなくて。」

ベリー急いで戻り

ベリー 「いいえ、こちらこそ、ご挨拶もせず…」
「いえいえ。…あれ?お客さん…」

ベリー、また死体のそばに行く

ベリー 「こ、今度はなに?」
「少し体冷えて来てます?」
ベリー 「え?…あ、そうなんだ、冷え症でね。」
「冷え症…いやでもこれ…」
ベリー 「それより、話、あんたの話し聞かせてよ、長〜いのほしいな。」
「私のはほんとに、重たいので…」
ベリー 「だから、それでいいって。」
「それじゃ…そうだ、お客さんの重たい話し聞かせて下さい。」
ベリー 「え?」
「お客さんより私の話の方が軽かったらお話します。」
ベリー 「え?なにその条件?意味が…」
「たっぷり話しますから。」

ベリー、顔をしかめるが、時計を見て仕方なく。

ベリー 「…わかった…えっと、その…俺の父もその宝石店をやってたんだが…30年ほど前、インドでめずらしい宝石の原石の買付に成功してね。しかもかなりの数。」
「ええ。」
ベリー 「ところが、帰国寸前にマフィアに襲われて、金も原石も、そして命も奪われた。」
「それは…お気の毒に…。」

市後、ベリーの話しに手が止まる。

ベリー 「父は借金しまくりで買付に行ったから、その後残された母と俺はそれこそ地獄を見たよ。数年後母は病死。母の保険金でも借金は埋まらず…」
「今でも借金を返し続けている?」
ベリー 「あ、いや、もう、借金はほとんど…」
「もしかして!!」
ベリー 「え?」
「宝石店を継いだのは、父から奪われた宝石を取り戻そうと?」
ベリー 「あ、いや…」写真
「怪盗!」
ベリー 「え、えっ?!」
「あれですよ、「キャッツアイ」みたいですね!知りませんか?結構昔のマンガですけど。」
ベリー 「知ってる…全巻持ってる。」
「いや、あれは犯罪者だ。あなたと一緒にしちゃだめですね。あなたは失ったものをちゃんと仕事で取り戻そうとしている。」
ベリー 「…まあ…」
「立派だなぁ…。すみません、確かに重い話ですね。でも、ものすごく感動しました!」
ベリー 「ああ、それは良かった。」
「わかりました。どちらが重いかなんてわかりませんが、私の話も致します。」
ベリー 「ああ、頼むよ。たっぷりね。」
「実は私、若い頃…さっき話にでた小笠原の超能力者の学校に…あ…のあ、すみません…」
ベリー 「え?」
「また…来ました…」
ベリー 「トイレ?」
「すみません。」

原、ハケる。

ベリー 「どうぞどうぞ、もう、超ごゆっくり!」

ベリー、また立ち上がり

ベリー 「…でもなんか、気になる所で話を切ったわね。」
市後 「あの…」
ベリー 「ごめんごめん、でも、これで私も妻役て動けるし…」
市後 「そうじゃなくて、さっきの…」
ベリー 「え?」
市後 「あの話って、ベリーさん自身の事じゃ…」
ベリー 「…そんな事どうでもいいから!早くメモを探して!」
市後 「はい…」

(作:松本じんや/写真:関口空子)

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