△ 「ほぐす!」シーン7


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外の花村の元に浜崎が来る。花村敬礼。

花村 「何か動きでも?」
浜崎 「いいえ。実はこの階の客は、今この907号室だけだってわかったの。」
花村 「そうなんですか?」
浜崎 「何か?」写真
花村 「さっき、知り合いのマッサージ師が入って行きました。」
浜崎 「マッサージ師?ま、知り合いなら都合いいわ。」
花村 「え?」
浜崎 「中を調べたいんでつきあってくれる?」
花村 「あ、はい。」
浜崎 「で、万が一の時の手順だけど…」
市後 「これだけ探して見つからないなんて…きっとメモなんてないんですよ…」
ベリー 「そんなはずはないの!あきらめないで探して!」
市後 「もう嫌です!もう終わりです!死なせて下さい!」

またひもを取り出す。

ベリー 「まだ持ってたの?!それよこしなさい!」
市後 「嫌です!」

戻って来た原、もめている二人の様子を聞いている。

「あの。」

ベリー、市後、止まる。

「大丈夫ですか?」
ベリー 「あ、いえ、ほんの親子喧嘩で…みっともない所を…」
「懐かしい…」
ベリー 「え?」
「喧嘩の出来る家族がいるってのも、幸せなことです。」
ベリー 「…ええ。」
市後 「父さん…母さん…兄さ…」

ベリー、市後の口を塞ぐ。

「え?」
ベリー 「くるみ!もう、いいかげんにしなさい!本当にもう。すみません。」
「いえいえ。あ、そうだ、お客さん、もしかしてお探しの物ってこれじゃ?」
ベリー 「え?」

原、封筒を出す。ベリー、市後封筒に目をやる。

「お客さん?」
ベリー 「あ、夫は眠っちゃったみたいですね。」
「あ〜、お酒沢山飲まれてた様でしたからね。」
ベリー 「それ、見せてもらえます?」写真
「ええ。今、トイレ入ったら棚から落ちて来て。」

ベリー受け取る。封筒の中を見る

ベリー 「ピンクのメモ!これです!」
「よかった。」
ベリー 「ありがとうございます!主人も喜びます!」

市後、ホッとした顔に。ベリー、封筒からピンクのメモを出そうとした瞬間。

浜崎 「すみませ〜ん。」

ベリー、慌ててメモを封筒に戻す。

浜崎 「警察の者ですが、ちょっと宜しいですか?」

緊張。ベリー、封筒を市後に渡してゆっくり玄関へ行き、ドア越しに

ベリー 「はい。」
浜崎 「あ、あの警察の者ですが、柿崎さんでしょうか?」
ベリー 「はい。」
浜崎 「大変申し訳ないのですが、お部屋を少々見させて頂いても宜しいでしょうか?」
ベリー 「あ、あの今ちょっと…」
浜崎 「怪盗ベリーの件で、お部屋になにか仕掛けらているかもしれないので。」
ベリー 「…はい…」
浜崎 「柿崎さん?」
「私ならかまいませんよ。」
ベリー 「え、ええ。」

ベリー、ドアを開ける。市後、もうだめだの顔。浜崎、警察手帳を見せ、会釈。

浜崎 「柿崎さんで?」
ベリー 「妻です。どうぞ。」

浜崎、花村、部屋に入る。

浜崎 「宿泊名簿には1名と」
ベリー 「ええ、私と娘は今だけちょっと。」
浜崎 「ほお。」

浜崎、死体と市後と原をみつけ立ち止まる。緊張。

浜崎 「どうかされたんですか?」
ベリー 「ええ…」
「お酒飲んで寝ておられます。」
ベリー 「そうなんです、ほんとにすみません。」
「あ、失礼、マッサージ師の原と申します。」
浜崎 「どおも。(市後に)娘さん?」
市後 「は、はい。」

浜崎、花村、部屋を調べる。

浜崎 「何か変わった事とかありませんでした?」
ベリー 「いえ、特に。」

浜崎、市後の持っている封筒を見つけ

浜崎 「その封筒は?」
市後 「え?これは…」
ベリー 「夫の仕事の書類です。」
浜崎 「見せて頂いても…」
ベリー 「いや、あの大事な書類なんで…」
浜崎 「(市後の前に行き)お願いします。」写真

市後、ベリーを気にしながらも浜崎に封筒を渡す。ベリー「終わった…」的な顔。浜崎、中のメモを取り出して見るが、顔をしかめる。

浜崎 「なんですかこれ?」
ベリー 「夫の仕事の…」
浜崎 「絵なんですか?字なんですか?」
ベリー 「えっと、どっちもです。」
浜崎 「え?これ、アルファベット?英語じゃないですね…」
ベリー 「ベンガル語です。」
浜崎 「ベンガル語?」
ベリー 「バングラディッシュの言語です。」
浜崎 「バングラディッシュ…」
「あ、そうそう、花村さん、実は、例の小笠原の…」
花村 「ああ〜っ!!」
浜崎 「なに?」
花村 「いや、ちょっと個人的なあれで。」
浜崎 「後にしなさい。」
「あの、私、実はあの島の…」
花村 「うわあい!」
浜崎 「なに?」
花村 「あ、ああのですね、あ!警部!もうそろそろ時間ですよ!」
浜崎 「そうね。」写真
花村 「戻りましょう。」
浜崎 「ええ。」

浜崎、市後にメモを返す。

花村 「何かありましたら、私、外にいますんで知らせて下さい。」
ベリー 「はい。」

浜崎、花村、出て行く。

「あ、まただ!すみません、トイレ…」
ベリー 「どうぞ。」

ベリー、ドアの覗き穴を観に行く。

花村 「こんな状況で本当に来るんですかね。」
浜崎 「来るでしょ。ま、今回はこっちの勝ちでしょうが。」
花村 「え?」
浜崎 「(時計を見て)あと4分…。じゃ、ここ宜しく。」

浜崎、去る。

(作:松本じんや/写真:関口空子)

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