△ 「悩める王子の惑星」シーン13


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城内のクレセントの部屋。クレセントうなだれ気味でランセントと入って来てこしかける。大きなため息。

クレセント 「はあ…」写真

ランセント、ため息を両手で捕まえてクレセントに差し出す。

ランセント 「はい。」
クレセント 「え?」
ランセント 「地球の古い言葉にあるんだ。ため息の数だけ幸せが逃げるって。はい、幸せ。」
クレセント 「ありがとう…でも今は…食欲がない。」
ランセント 「…わかった。じゃここに置いておくね。」

ランセント、ため息を椅子に置く。

ランセント 「今日のミスは仕方ないよ。」
クレセント 「一歩間違えば町の人達が…」
ランセント 「一歩間違わなかったじゃないか。結果オーライだよ。」
クレセント 「こんなミス、兄さんなら絶対…」
ランセント 「ヴィンセント兄さんの話はしないでよ!あの人は僕らに、いや国中の人達に期待ばかりさせておいて、…あっけなく死んじゃって…」
クレセント 「悪く言うな。立派に戦って死んだんだ。僕には兄さんの様な才能も、カリスマ性もない。」
ランセント 「才能あるよ!ヴィンセント兄さんより!ないのは…自信だけだよ。」
クレセント 「それは…国をまとめる者として致命的な事さ…ランセント…」

外からダグラスの声。

ダグラス 「王子。ダグラスです。」
クレセント 「どうぞ。」

ダグラス、入って来る。

ダグラス 「失礼致します。お疲れのところ申し訳ありませんが、ご報告が。」
クレセント 「なんだ?」
ダグラス 「ここ一年、ジモラスのミサイルの数は倍増しています。それに加え、飛行隊の隊員はここ半年で3人も減りました。」
クレセント 「ああ。」
ダグラス 「友好条約を結んだ星への国民の疎開も滞っています。」
クレセント 「惑星チェアビットへの連絡は?」
ダグラス 「毎日しておりますが、全く返事がありません。」
クレセント 「銀河連合の調査団は?」
ダグラス 「そちらもまだ。」
クレセント 「それじゃ…」
ダグラス 「正直……そろそろ限界かと…」
クレセント 「…父上はなんと?」
ダグラス 「決定は王子にゆだねると。」
クレセント 「(ため息)はぁ…」

ランセント、またクレセントのため息をつかむが、クレセントと目が合い、察してまた椅子の上におく。

ランセント 「そうだ!飯食いに行こう!」
クレセント 「だから食欲がないって…」
ランセント 「こんな部屋に居るからさ。」
クレセント 「…あの店か?」
ランセント 「みんなも行くって言ってた。それに…」

ランセント、クレセントに耳打ち。

ランセント 「あの子、時々お店手伝いに来るらしいよ。」
クレセント 「え?」
ランセント 「行く?」
クレセント 「いや…でも…」
ダグラス 「行かれたらいかがですか?」
クレセント 「…ダグラス。」写真
ダグラス 「確かにこの部屋、重大な決定を思案されるには、あまり空気がよろしくないかと…」

ダグラス、腰掛けようとするが

ランセント 「あ、だめだめ!」
ダグラス 「え?」

ランセント、さっき置いた幸せを2つ持ち上げて

ランセント 「幸せ、幸せ。」

ダグラスに座るように促して

ランセント 「どうぞ。」
ダグラス 「あ、いいです。」

ダグラス、腰掛けるのをやめる。

ランセント 「そ。兄さん、ダグラスもああ言ってくれてるし!ね!」
クレセント 「…わかった。」
ランセント 「よし!ダグラス。SPの手配を。」
ダグラス 「はい。」
ランセント 「場所は…」
ダグラス 「ライトフライヤー。」
ランセント 「正解!さ、行こ行こ!あ、そうだダグラスもどお?たまには。」
ダグラス 「わたくしは…」
ランセント 「腹が減ってはいくさはできぬ。」
ダグラス 「は?」
ランセント 「地球の古いことわざ。」
ダグラス 「…時間がありましたら。」

ダグラス、ハケる。

ランセント 「あれは…来ないな。」

ランセント、クレセントハケる。

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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