△ 「心海のサブマリナー」シーン1


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携帯を持った一人の青年、神光彦が出てくる。

光彦 「あ、お婆ちゃん?オレオレ。え?オレだよオレ、孫の声忘れたの?…そうそうディカプリオ。…ディカプリオ?あ、いやいや、ディカプリオ、ディカプリオ。え?声?…そうなんだよちょっと風邪ひいちゃってさ…え?ほんとほんと…え?オレもだよ、久し振りに婆ちゃんの声が聞けて超嬉しいよ!…え?(浮かない顔になる)…あ…そう…だね…うん…うん…あ、ごめん婆ちゃんまた電話する。うん…ホントごめんね、じゃあ!」

光彦、電話を切る。深いため息。後ろからガラの悪い男、小澤かいじが出て来る。

小澤 「そこんちの孫はとっくに死んでんだよ。」写真
光彦 「はい。「あの世から電話くれた」って…喜ばれちゃいました…」
小澤 「婆さんボケてるし。」
光彦 「そっすよね。ディカプリオってとこからちょっと変かと…」
小澤 「おら、さっさと次ぎかけろ!」
光彦 「…あの…小澤さん…」
小澤 「なんだ。」
光彦 「おれ…あの…もう無理っす…」
小澤 「あ?」
光彦 「おれ、こういうの…向いてないっつぅか…ほら、オレの専門って手先使う方面じゃないっすか。だからおれ…」
小澤 「あれ?」
光彦 「はい?」
小澤 「光彦君。」
光彦 「はい。」
小澤 「君の借金、立て替えてやったのって、誰だったっけ?」
光彦 「あの…小澤さんっす…」
小澤 「だよな。」
光彦 「はい。」
小澤 「だったら黙って言う事聞けや!」
光彦 「すみませんっす!」

男、急に笑顔になり。

小澤 「…なんてな。」
光彦 「…はい?」
小澤 「朗報だ光彦君。」
光彦 「え?」
小澤 「うまくいきゃ、今日でこの仕事ともおさらばかもしんねぇ。」
光彦 「どういうことっすか?」
小澤 「大金が入るかもしんねぇんだ。」
光彦 「大金?!」
小澤 「ああ。そうなりゃお前に貸した金、チャラにしてやってもいい。」
光彦 「ま、まじっすか?!やった!」
小澤 「おい、なに浮かれてんだ?」
光彦 「え?だって今…。」
小澤 「少なくとも今日まではガッツリ働くんだよ!ほらとっとと電話電話!」
光彦 「はいっ!」

小澤ハケる。光彦はハケようとして。ストップモーション。

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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