△ 「心海のサブマリナー」プロローグ2


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静かな音楽とクロスフェードして水中音。潜水艦のソナー音、スクリュー音が近づく。
映像。暗い水の中を、黒く巨大な影が横切る。映像の手前、舞台中央に人影。映像が終わる頃、人影にサス。
シルクハット、タキシード、ステッキを持った紳士風の男が後ろ向きに立っている。振り返りニコリと微笑む。

まほろば 「生きとし生けるもの、そう、もちろん皆さんも。誰一人絶対に避けれられない運命がございます。それは…」写真

秋子が現れ、まほろばに一礼。まほろばも帽子を脱いで胸に当て一礼。ハケる秋子を見守るように

まほろば 「必ず『あの世』に行くと言う事。」

上で人影が走り抜ける。それを追う数人の人影。

まほろば 「「死んだらどこに行くんだろう?」「自分が死んだら天国と地獄のどちらに行くんだろう?」そもそも!… 「天国と地獄なんて存在するのだろうか?」(微笑み)ご安心下さい。あるいはご失望下さい。天国と地獄、どちらも…存在致します。ですがもう一つ…」

上に別の人影。侍風の男が通り過ぎる。それをこっそり追う様にもう一人の男が通り過ぎる。

まほろば 「おっと失礼、自己紹介がまだでございましたね。私、あの世からのエージェント『まほろば』と申します。」

戦闘中の爆音銃声が響き、兵隊らしき人影が上を通り過ぎる。

まほろば 「善人は天国に、悪人は地獄に。ま、ざっくり申せばそんなところではございますが、殆どの方が亡くなってすぐ行く場所は、実は天国でも地獄でもございません。その間の世界。宗教によってはそこを『煉獄』『パルガトリウム』等と呼ぶらしいのですが、ま、特に決まった名前はございません。しかし、近年、日本人の方々はその世界をこう呼んでらっしゃいます。『と界』。え?いえいえ、人が大勢生活している『都会』ではなく、ひらがなの『と』に世界の『界で』『と界』。そこへ行った皆さんは様々な仕事をしてらっしゃいます…え?死んでからも仕事をするのかって?ええ、もちろん…」

また上に別の人影。ヘルメットに皮ジャンパーを来た人影。両手に手袋をはめるとすぐにハケる。
ハケた奥から。バイクが立ち去る音がする。まほろば、咳払い。

まほろば 「ま、その話は追々に。私の仕事は、簡単に申せば亡くなった方の案内人。今まで何万人もの魂のお世話をさせて頂きました。例えば…」写真

着物を着て何やら綺麗な箱を持った男がまほろばの前に走り出て来る。男はまほろばが見えていない。
走り去ろうとするが、左右から棒を持った数人の追っ手達に囲まれてしまう。

追っ手 「観念しろ!盗人め!」
盗人 「観念?なんのこっちゃ?」
追っ手 「ええい!引っ捕えろ!」

追っ手達は男を捕らえようとするが、男にひょいひょいとかわされる。やっと捕らえたかと思いきや着物のみ。

追っ手 「くっそお!探せ、探せえ〜っ!」

追っ手が四方に散ると、男は余裕の顔で高台の上にに現れる。

まほろば 「正に神出鬼没。狙った獲物は必ず奪う、古の大泥棒。」

侍、早足で出て来る。後ろから傘を冠った浪人風の男がついて来るが、侍が立ち止まると浪人も止まる。

「なんぞワシに用か?」

浪人、傘を取り刀を抜く。侍も刀を抜く。

「うぬ、例の人斬りか?」

浪人、斬り掛かる。侍も互角に応戦するが、最後には斬られる。

浪人 「天誅じゃき…」
まほろば 「国を変えようという一途な志で、人を斬りまくった幕末の志士。」写真

戦闘音が響く中、一人の日本兵が飛び出して来る。銃の先につけた白旗を振っている。

日本兵 「どんとしゅーと!どんとしゅーと!ほ、捕虜にして下さい! あいわんとびー…ぷ、ぷりずなー!ぷりすなー!」
まほろば 「お国の為に命を捧げる事が当たり前だった時代、一人、敵陣に乗り込み捕虜になる事を願い出た兵隊。」

突然雨が降り出し、雷も鳴る。まほろば、傘をさす。バイクの停止音の後、白バイ警官が現れる。

警官 「日本信託銀行の車ですね?先程支店長宅が爆破されました。この車にも爆弾が仕掛けられているかもしれません。シートの下を見て下さい。調べますから降りて下さい。」
まほろば 「白バイ警官を装い。大金を奪いながらも結局捕まらなかった現金強奪犯。」
警官 「爆弾だ!逃げろ!」

警官がハケると、車の発進音がして雨が止む。まほろばが傘を閉じると、黄色いパーカーの青年が現れる。

青年 「このままだと我々能力者は根絶やしにされてしまいます。でも能力者以外の人間を排除しようだなんて思っていません。平等で平和的な手段だと思いませんか?」
まほろば 「世界中の人間を超能力者に変えれば、差別を無くせると勘違いした超能力青年。いやもう、色んな方がおりました。そして次にお世話するかもしれない方は…あ、そうそう、もう一つ。私と皆さんの間には、少々時間のずれがございます。現在こちらは…(懐中時計を確認)2023年。おっと。いらっしゃった様です…」

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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