△ 「あげぞこ先生」シーン30


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字幕「午後11時45分 夜頭警察署」
見せ暗転が明けると二元舞台。御厨と服部は取調室に。浜崎と花村は会議室に。

浜崎 「ああもう。謹慎っていつまでよ!」写真
花村 「実質この部屋に監禁状態ですよね。」

花村は部屋の物を物色。浜崎は何やらiPodのようなものを聞き始める。

花村 「ん?何やってんですか?」
浜崎 「し〜っ!取調室の会話聞いてんの。」
花村 「盗聴器仕掛けたんですか?」
浜崎 「基本よ基本。ほい。」

花村に無線イヤフォンを渡す。

御厨 「目撃者がいる以上、もう逃げられんぞ。」
服部 「目撃者なら宮城にもいます。」
御厨 「じゃ、黒岩を殺したのは誰だ?」
服部 「知りません。私にはアリバイがあります。」
御厨 「瞬間移動するやつらに、アリバイなど成立しない。」
服部 「ならば視覚操作ができる我々に、目撃者など意味が無い。」
浜崎 「不毛だ。」
花村 「不毛ですね。」
服部 「我々能力者を兵器として利用し、役に立たない者は抹殺しようという組織があると聞きました。」
御厨 「聞いた事はないが、あってもおかしくないな。」
服部 「あなたはその一味では?」
御厨 「違う。」
服部 「なら利用されている。能力者嫌いって事を。」

霧原が現れる。

霧原 「その通り。さすが先生。」

御厨、銃を抜く。

御厨 「誰だ貴様?!どうやって入った?」
浜崎 「誰か入って来た。」
服部 「やっぱりお前だったのか。晶。」
霧原 「初めまして。霧原晶と申します。能力者です。」
御厨 「動くな!撃つぞ!」
霧原 「無駄です。弾は抜かせて頂きました。」
御厨 「なにっ?」

御厨、銃のマガジンが無い事に気付く。内田が出て来る。

服部 「内田先生?」

内田、銃のマガジンを持っている。

内田 「すみません。」

御厨、通信をしようとする。

御厨 「侵入者だ!取り調べ室に…」
霧原 「通信機も止めました?」
御厨 「何?」

瀬名が現れる。

服部 「瀬名先生?」
御厨 「舐めるな!」

御厨、飛びかかって行くが、内田が指を動かすだけでボコボコにされ、倒れる。

内田 「すみません。」
御厨 「くっそおっ…」
霧原 「先生。迎えに来ました。」写真

御厨、まだ反撃しようと立ち上がるが、霧原がボールを見せる。

霧原 「やめましょう。人は殺したくないんです。」
御厨 「なんだそれは?」
霧原 「ただのトゲボールです。でも、あなたの体内に転送させれば、あなたはバラバラにはじけます。」
御厨 「…お前か。お前が川藤と同じ能力を持つ…」
霧原 「先生。他の役者はみんなそろいました。あとは先生だけです。」
服部 「他の役者?」

直也と高見沢、副校長も現れる。

服部 「直也君、高見沢さん?校長先生も?」
校長 「はい。」
服部 「霧原、黒岩を殺したのもお前なのか?」
霧原 「黒岩は我々を兵器にするって計画の首謀者でしたから。」
服部 「しかし殺す事は…」
霧原 「殺すつもりはありませんでした。しかし黒岩は考えを変えず、そしてもう計画は実施される寸前だったんです。」
御厨 「殺しは殺しだ。」
霧原 「すぐに世界は変わります。その為に必要な最低限の能力者を集めました。内田先生の物質転移能力、高見沢さんの視覚操作能力、瀬名先生は100近い能力を持った多重能力者。直也君は能力を閉ざした副校長を目覚めさせるカギ師。」
服部 「副校長も?」
霧原 「副校長は世界中の能力者と繋がるネットワーカー。そして服部先生は転移複写能力者。」
御厨 「転移複写能力?」
霧原 「能力を人から人に移したり、コピーができるんです。」
服部 「先生達を操っているのか?」
霧原 「先生達には僕に同意する気持ちがあった。だから操れているんです。」
服部 「同意?」
内田 「私は、校長だった頃、差別撲滅運動のトップでした。」
直也 「僕は、もう兄さんに迷惑をかけないような強い力が欲しい。」
瀬名 「私は、世界中の耳の不自由な人達に、私と同じ能力をコピーしてもらいたいと。」
霧原 「後の二人は同意する気持ちが無かったので、人質を取らせて頂きました。」
高見沢 「私は息子を…」
校長 「私は…生徒のうちの誰かを殺すと…」
服部 「霧原…お前いったい何をしようと…」
霧原 「この世から、差別をなくします。」
服部 「差別をなくす?」
内田 「我々は昔から差別を受け続けて来ました。」
瀬名 「それこそ、魔女裁判の時代から、我々はバケモノ扱い。」
霧原 「差別する者達は憎い。でも復讐するつもりはありません。彼らに分かって貰いたいだけなんです。そのためには、彼らを僕らと同じにすればいい。」
服部 「私達と同じに?」
霧原 「先生の複写能力を副校長のネットワークで世界中の能力者達に送るんです。そうすれば後はねずみ算式に世界中の人間が能力者になって行きます。」
花村 「なんてこった…」
浜崎 「どうしてゾンビが怖いかわかる?」
花村 「え?」
浜崎 「ゾンビが怖いと思っているのは人間だけ。みんな噛まれてゾンビになってしまえば、そこはゾンビだけの平和な世界になる。」
霧原 「全人類が能力者になれば、もう我々は差別される事などなくなるんです。でも、僕はあなたが怖い。なぜならあなたは、能力を消去してしまう力も持っているから。」
御厨 「なに?」
霧原 「でもその力を使わなかったのは、娘さんの障害を治せる能力者を探していたからですよね?」
服部 「…霧原…」
霧原 「あなたにも同意する気持ちがある。麻美ちゃんの障害を治せる能力者を知りたいはずです。それに、みんなが能力者になれば、あなたを汚点と思っている教え子達や、世間の誤解も解ける。でもできれば操りたくはないんです。協力してもらいらいんです。」
服部 「霧原…止めろ…こんな事止めてくれ…。お前は…あの頃のお前は…もっと…」
霧原 「そうですか…残念です。…あなたは他にどんな力が欲しい?」

服部の意識が落ちる。

校長 「服部先生…」
御厨 「甘いな霧原。世界中が能力者になっても差別はなくならねぇぞ。」
校長 「残念ですがその通りです。なくなるのは能力者の差別だけ。差別どころか世界中の人間が能力者になれば、もっと醜い争いが起きます。」
浜崎 「サイキック・ウォーズ…」
霧原 「御厨さん。あなたは我々を毛嫌いしているようなので、計画の第一号にしてあげましょう。」
御厨 「何?」
霧原 「服部先生。取りあえずテレパシー能力をあげて下さい。」

服部、瀬名の肩に手を触れる。

御厨 「てめえ、何する気だ!やめ…」

御厨、再び内田に攻撃され、ひるんだ隙に服部に触れられる。御厨、頭を抱える。

御厨 「うあっ!ちくしょお!」写真
霧原 「これであなたも私達の仲間です。早速その能力を使って下さい。」
御厨 「誰が使うか!」
霧原 「3分後に特殊部隊のヘリ、3機ともこの部屋に瞬間移動させます。」
御厨 「なんだと?!」
霧原 「直ぐにテレパシーで、警察の方全員に連絡してあげて下さい。呉々も、お怪我がないように。さ、我々は本陣の学校へ行きましょうか。じゃ。」

霧原達去る。

御厨 「こら待てぇ!!あ、くそっ!消えやがった!ちくしょう、テレパシーってったって、どう使えばいいんだ?! あ〜っ、あ〜っ、もしもし?もしもし?御厨だ!みんな聞こえるか?!」
浜崎 「まずい!逃げるよ!」

浜崎、花村、部屋を出て御厨の元へ。

御厨 「聞こえてたら全員警察署とヘリから離れろ!!」
浜崎 「御厨さん!出ますよ!」

御厨、浜崎に引っ張られてハケながら

御厨 「離れろ!直ぐにだぁ!!」

3人ハケて暗転。もの凄い轟音が鳴り響く。悲鳴も混じる。

(作:松本仁也/写真:はらでぃ)

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