△ 「あげぞこ先生」シーン20


トップページ > ページシアター > あげぞこ先生 > シーン20 【公演データ

<前一覧次>

字幕「居酒屋 非常識」
見せ暗転が明けると居酒屋店内。宇崎、上底、福来兄弟、畑、内田、浜崎、瀬名、高見沢。みんな少しだけ酔っている感じ。

宇崎 「ええっ!それはひどい!」写真
「なになに?なんの話?」
宇崎 「今、内田先生が横領の濡れ衣を着せられた話を。」
「濡れ衣ならみんな着せられてるわよ。」
宇崎 「そうなんですか?」
「私は生徒の自殺未遂の責任を取らされた。いじめを黙認したって。」
宇崎 「え〜っ…」
瀬名 「私は看護士の医療ミスの罪を転嫁された。その看護士が医院長の愛人でね。」
浜崎 「それひどいっすね。」
直也 「僕は喧嘩を止めに入ったのに主犯扱いされました。」
上底 「かぁ〜っ、腹立って来るなぁ。」
福来 「僕は女子生徒にわいせつ行為をしたって…」
上底・宇崎・浜崎 「え…」
福来 「も、どうして僕の時だけそういう反応かな?濡れ衣だって言ってるのに。」
直也 「兄さんはやっていないぞ!そういう色眼鏡で見るな!」

瀬名、いつの間にか鼻メガネをかけている。

直也 「鼻メガネでも見るな!」
「ま、何にせよ、私達は子どもの頃から「異端な人間」としてあちこちで差別を受けて来た。」
瀬名 「そんな思いを子ども達にさせたくないから、ここで教師をやっている。」
「ねぇ、ぴょん子ちゃんはどうして教師になろうと?」
宇崎 「私は…服部先生に出会ったからです。」
「お、そこんとこ根掘り葉掘り聞きたいな。」
宇崎 「私、中学の時、いじめられてずっと不登校だったんです。それを、担任だった服部先生が、毎日うちに来て色んな話をして下さって。」
「毎日?」
瀬名 「そういうとこがウザかったけど。」
宇崎 「で、ある日、夜中にコンビニに出かけた時運悪くいじめの首謀者の男の子達とバッタリ出会ってしまって、路地で殴られてお金まで取られて…」
福来 「それはひどい…」
宇崎 「私、もう我慢できなくて…能力を使っちゃったんです…。」
直也 「君の能力は?」
宇崎 「パイロキネシス。発火能力です。」
浜崎 「あ!「炎の少女チャーリー」とおんなじだ!当時少女だったドリュー・バリモアが主人公のチャーリーを演じてたんだけど、後に彼女は「チャーリーズエンジェル」にも主演!」
瀬名 「チャーリーつながり?」
浜崎 「そうそう!あ、日本の作品なら矢田亜希子主演の「クロスファイア」!これには東宝シンデレラオーディションに、当時史上最年少の12歳でグランプリに選ばれたばかりの長澤まさみも、ちょい役で出てるんですよ!…あ、すみません…つい…どぞ。」
上底 「じゃ、その相手を黒こげにしちゃったって事か。」
宇崎 「いえ。能力を使おうとした瞬間に、相手の前に服部先生が現れて、先生が火だるまに…」
「え?!あの服部先生がそんなことを?!」
福来 「そんな熱い教師だったなんて…。」
高見沢 「実際燃えてますしね。」
宇崎 「男の子達は驚いて逃げたんですが、服部先生は火だるまのまま、彼らを追いかけて行ったんです。」
みんな 「え〜っ?!」
浜崎 「それほんまもんの「炎のランナー」ですね! …あ、…すみません…どぞ。」
宇崎 「しばらくして、公園の池で火を消した先生がびしょ濡れで戻って来て。私の前で倒れて…「小さい火を持つ者は…いずれ大きな火を求め…やがて自分も焼尽す…。だから耐えろ。ぴょん子。」って。そう言って、奪い返してくれた財布を渡してくれたんです。」
上底 「あ、さっき服部ちゃんに言ってたのってそれか!」写真
宇崎 「その後私も転校して、先生もどこかに転勤されて…でもその時の事が忘れられなくて…教師って凄いなって…」
福来 「教師というか、そりゃ服部先生がすごいんだと…」
宇崎 「でもせっかく先生をみつけて教育実習まで来たのに…」
上底 「今はもう別人だねありゃ。」
宇崎 「きっと私のせいです。」
上底 「ふぇ?」
宇崎 「私があんなことしたから、先生もう嫌になって…」
瀬名 「違うよ。」
宇崎 「え?」
瀬名 「あなたのせいじゃないよ。」
宇崎 「瀬名先生、何か知ってるんですか?」
瀬名 「服部先生が最後に赴任していた学校に私の知り合いがいてね。色々教えてくれたの。」
「なんだ、瀬名先生知ってたんだ。」
瀬名 「服部先生には奥さんがいたんだけど、この奥さんってのが結婚する前から男がいてね。娘の麻美ちゃんが四っつの時にその男とどこかに逃げちゃって。」
福来 「じゃ、それからは服部先生が麻美ちゃんを…」
瀬名 「奥さんはずっと育児放棄状態だったていうから実質ずっとだよね。で、挙げ句の果てに奥さんは一緒に逃げた男と自動車事故で死んでしまった。」
「え?死んじゃったの?」
瀬名 「その後、生徒への暴力事件をでっち上げられて学校を首。奥さんの交通事故まで先生が仕組んだんじゃないかって疑われ、そしてとどめに…」
直也 「まだどどめがあるの?!」
瀬名 「ええ。実は…麻美ちゃんは服部先生の子じゃなかったの。」
みんな 「え〜っ…」
瀬名 「先生の周りはウソだらけ。信じていたものはみんなウソ。社会的にも抹殺され、熱い教師は冷めきってしまった。」
「だからウソにあんな反応を…」

重たい空気になる。突然宇崎が叫ぶ。

宇崎 「助けましょう!」
瀬名 「え?」
宇崎 「みんなで服部先生を助けてあげましょう!」
「いや、気持ちはわかるけど、助けるったってどうすりゃ…」
宇崎 「わかりません。でも、どうしても助けてあげたいんです! 昔の先生に戻ってほしいんです!」

みんな考える。

上底 「よし乗った!服部ちゃんのためだ!」
直也 「兄さん。」
福来 「いや、でも…」
浜崎 「三銃士…」
内田 「私はやります!手を貸しますよ!」
「ウッちゃん?!」
浜崎 「ファンタスティック・フォー…」
内田 「畑先生やりましょう!」
「ん〜…わかった。やってやろうじゃないの!」
浜崎 「先生5人でファイブマン…」
直也 「兄さん。」
福来 「ああ!」
浜崎 「戦隊と言えば6人目の戦士。そしてここだ!私も入れて下さい!!」
上底 「おお!さやっちもか?!」
浜崎 「はい!七人の侍。(ガッツポーズ)よっし!」
高見沢 「あの、良かったら私もお手伝いさせて下さい!」
浜崎 「お!里美八犬伝!」
宇崎 「瀬名先生!」
瀬名 「…これは…やるしかなさそうね。」
宇崎 「ありがとうございます!」
浜崎 「サイボーグ009!」

入口に、下を向いて花村が立っている。

花村 「私も入れて下さあああい!」

みんなが入口を向くと花村が顔をあげる。少し涙ぐんでいる。

上底 「花村ちゃ〜ん!えっと、どっち?」
花村 「警官の方です。」
浜崎 「何であんたが?」
高見沢 「わりと常連さんよ。」
浜崎 「そうなんですか?」
花村 「皆さんのお話を聞いて猛烈に感動しました!いいっす!すげえいいっす!是非お手伝いさせて下さい!」
宇崎 「(敬礼)宜しくお願いします!」

みんな敬礼。

花村 「(敬礼)はい!」
浜崎 「真田十勇士。」

副校長が入って来る。

副校長 「私達も協力しマショウ。」
「副校長!」
浜崎 「オーシャンズ・イレブン!」写真
副校長 「最近付き合い悪かったのでね。」
「嬉しいです〜っ!」
瀬名 「待って、「私達」って事は…」
副校長 「ええ、勿論。」

校長も入って来る。

みんな 「校長先生!」
校長 「仲間に入れてもらってもいいかしら?」
宇崎 「はい!皆さん(涙ぐむ)ありがとうございますぅぅぅぅ。」
浜崎 「12人の怒れる…」

みんなを見回して

浜崎 「いや、優しい日本人の方か。」

照明が変わる。

(作:松本仁也/写真:はらでぃ)

<前一覧次>


トップページ > ページシアター > あげぞこ先生 > シーン20 【公演データ