△ 「あげぞこ先生」シーン11


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見せ暗転明け。中心に瀬名。脇に上底と服部。後ろに福来兄弟、畑、内田が覗いている。

瀬名 「はい、席について。コラ一平、空中浮遊しない!え?光がテレキネシスでくすぐる?一平、すぐられた位で一々宙に浮いてたら卒業できないよ。光、休み時間終わってます。チャイムが鳴ったら超能力は使わない!あ、使ってもいいよ。でも給食抜きね。お、急に良い子になったね。」写真
福来 「瀬名先生お流石。」
瀬名 「みんな大丈夫?朝からとんでもないのが来たよね。島を出たらああいう人間も沢山いるって事、覚えておいてね。さて、昨日も話したけど、先生しばらく副担任をお休みします。大丈夫、保健室にはいるから。 で、代わりの副担任は服部先生に決まりました。」
服部 「え〜っ…宜しく。」
上底 「みじかっ。」
瀬名 「それと、東先生の代わりに今日から担任をして頂く上底先生です。」

上底、中心へ。

上底 「みんなオイッス!…」
福来 「ドリフ…」
上底 「声が小さい、オイッス!もっと大きくオイッス!静かにしろ〜。」
瀬名 「静かです。」
上底 「ってな訳で、入院中の東先生にかわって代打でやって来ました上底友吉でゅえっす!上様の「上」に、どん底の「底」!底んとこヨロシク!なんつって!」
直也 「兄さんさっきと同じだ。」
福来 「ああ、この冷ややかな空気もな。」
上底 「今回の件はみんなもさぞ心を痛めている事でしょう。ですが僕が来たからにはもうダイジョ〜〜ヴ!」
上底 「(ラップっぽく)代打どころか学校事業全体の底上げもしちゃいますヨォ!ヨォ!」
直也 「兄さんアレンジだ。」
福来 「ラップ?」
上底 「上底が底上げ、イェア!上底が底上げ、イェア!上底底上げ底上げ上底上底底上げ!(ポーズ)なんつって。」
瀬名 「先生。」
上底 「よ〜し!つかみはOK!」
福来・直也 「つかんでない…」
上底 「じゃ、出席とっちゃうよ〜。まずは男子!間一平(あいだいっぺい)お!元気だね。ウキウキしてるね。さっきも宙にウキウキしてたね一平ちゃん。先生なんか焼きそば食べたくなって来たよ一平ちゃん。次は大岩光(おおいわひかる)君はさっきみたいにしょっちゅう怒られてるんじゃないか?怒られる事が「おおいわ」なんつって!次は鬼塚矢的(おにづかやまと)お!かっこいい名前じゃん!ボクシングの選手にいそうだな。でも本人は…蚊も殺せなそうだ。名前負けすんな!」
瀬名 「先生。」
上底 「北野真也(きたのしんや)…あれ?北野真也いるか?なんだ寝てた?夜更かししてたんだろ?真也だけに深夜番組観てた。なんつって!次は高見沢龍之介(たかみざわりゅうのすけ)漢字6文字なげーな。」
瀬名 「怪我で入院中の子です。」
上底 「あ、この子ね。次は鵺野望(ぬえののぞむ)望って良い名前だよなぁ。「希望」の「望」と書いて「のぞむ」。「絶望」の「望」でもあるけどな。」
瀬名 「先生!」
上底 「はい?」
瀬名 「名前でいじるの止めて下さい。」
上底 「え?駄目?そっすか、わかりました。はいじゃここから女子ね。大石久美子(おおいし くみこ)。久美ちゃん今度の連休の予定は?え?お墓参り?御先祖様にシクヨロッ!次は坂本南波(さかもとみなみ)連休の予定は?え?病院で検査?お大事にいいい!」
瀬名 「先生。」写真

瀬名、首を横に振る。

上底 「え?これもだめ?了解了解。続きましてぇ、滝沢良子(たきざわよしこ)ズバリ将来の夢は?ケーキ屋さん?いいね〜!先生にも御馳走してね!次は、野々村幸(ののむらさち)将来の夢は?お医者さん?じゃ先生が病気になったら宜しく!次は、平泉麻衣(ひらいづみまい)将来の夢は?警察官?じゃ先生が犯罪者になったら宜しく!」
瀬名 「先生!」
上底 「ジョークジョーク。えっと後一人「服部麻美(はっとりまみ)」ってのは…」
服部 「私の娘です。」
上底 「ですよね。」
瀬名 「はい、それじゃそろそろホームルーム終わりにしますが、先生、まだ何かありますか?」
上底 「じゃ、一言。悩み事があったらいつでも相談に来てくれ。一人で抱え込む事はないぞ。いいか、」

上底、黒板に大きな字を書く。

直也 「あ、人って字書いた。」
福来 「おいおいまさかやっちゃうのか?」
上底 「人と言う字は人と人とが支え合ってできてるんだ。」
「やっちゃったよ…」
上底 「僕らは一人じゃない。お互いに支え合って頑張ろう!あ、ちなみに「入れる」って字も人と人とが支え合った上に更にこう何というか、入れ…」

瀬名、上底の頭を出席簿ではたく。

上底 「痛っ!」
瀬名 「はい、じゃ何か質問ある人。はい、みなみ。え?上底先生の趣味は何ですか?そう言う質問は…」
上底 「よくぞ聞いてくれました!先生の趣味は歌を作る事!え?聞きたい?聞きたい?しょうがないなぁ。」

上底、ギターを取り出す。

瀬名 「先生、今はちょっと…」
上底 「先生若い頃「涙のリクエスト」って曲が好きでさ。知ってる?チェッカーズ。知らないか。あれ聞くとさ、色々思い出すんだ。甘じょっぱい青春の日々を。」
直也 「甘酸っぱいじゃなくて甘じょっぱい?」
「あれじゃない?ハッピーターンみたいな味?」
福来 「どんな青春だよ。」
上底 「みんなは最近どんな事で涙を流したかな?はい、さっちゃん。え?ハムスターが死んじゃった? そうか、それは悲しいよな…ペットも家族だもんな。みんなだけじゃない。実は先生も一昨日涙を流したんだ。それは…コーラを一気飲みした時だ。その時生まれた曲、聞いて下さい『涙の炭酸ゲップ』(歌い出す)♪ぬぁ〜むぃ〜どぅあ〜〜ぬぉ…。」

瀬名、上底の頭を出席簿ではたく。

上底 「痛っ!力増してるっ!」
瀬名 「はい、良子。え?何で二人はそんなに息がピッタリなんですか?だからそういう質問じゃなくて…」
上底 「よくぞ聞いてくれました!実は黙ってたけど…先生達婚約してるんだ。」
全員 「え〜〜っ?!」
上底 「なんつって、嘘嘘!んなわけないじゃん。でも初対面で息が合うっていい感じじゃない?」
瀬名 「先生、いい加減に…」
服部 「嘘は駄目だあ!!!」写真
上底 「…え?」
直也 「兄さん…」
福来 「あぁ地雷踏んじゃった…」
服部 「嘘をつく奴は最低だ!お前教師だろ?子ども達の前で嘘をつくな!嘘をつく奴は折って畳んでボコボコにして、もうぐっちゃんぐっちゃんにして、もう、ギュッとやってギュッとやってこうして細くしてちっちゃくしてもう…いろはすみたいにしてやる!!」
上底 「い、いろはす…」
瀬名 「先生…」
服部 「いろはあす!!!」
瀬名 「服部先生落ち着いて!」

間。服部、我に返る。

服部 「あ、あの…一、二時間目は美術です…」

チャイムが鳴り出す。なんな空気のままゆっくり暗転。

(作:松本仁也/写真:はらでぃ)

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