△ 「ヴァンパイア・ブリード」シーン33


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字幕『5時15分 第2展望台』明転。眠っている太陽。そこにひまわりが現れる。

ひまわり 「カーミラ!出て来い!カーミラ!」

たんぽぽ、太陽に気づく。

ひまわり 「太陽!」

たんぽぽ、太陽を揺り起こそうとする。

ひまわり 「太陽。どうした太陽?しっかりしろ。」写真

カーミラ登場。

カーミラ 「揺すっても起きないわよ。」
ひまわり 「…カーミラ!」
カーミラ 「私がその子にかけた術を解かなければね。」
ひまわり 「よくも…よくもこんなマネを!」
カーミラ 「すぐに解いてあげてもいいわよ。あなたの持っている、呪文を渡してくれれば。」
ひまわり 「渡すものか!」
カーミラ 「じゃその子は永遠に眠りの王子様ね。」
ひまわり 「…太陽を起こす方法はまだある。」
カーミラ 「王子様にキスでもしてあげます?」
ひまわり 「お前を、倒せばいい。」
カーミラ 「フフフフ…本気で言ってるの?」
ひまわり 「太陽は、私が守る!」
カーミラ 「ハハハハハ!」
ひまわり 「何がおかしい?」
カーミラ 「まさかあなたが人間なんかに恋をするとはね。」
ひまわり 「…恋?」
カーミラ 「しかも自覚もない?かわいいわ。ホントあなたってかわいい。」
ひまわり 「黙れ!必ずお前を倒す!」

ひまわり、カーミラにかかって行く。

ひまわり 「やあああっ!」

カーミラ、ひまわりの剣を余裕でかわす。気功術の様に手を回しただけでひまわりにダーメージ。

ひまわり 「ううっ!」
カーミラ 「自分で気づかない?あなた、弱くなってるわ。」
ひまわり 「なにっ?!」
カーミラ 「ま、当然よ。それが恋の副作用。」

ひまわり、更にかかって行くが、簡単に腕を取られ、カーミラに抱えられる。
カーミラ、ひまわりのアゴを指で軽く上げ、キスでもしようかというようなポーズ

カーミラ 「どう?少しは身の程を知ったかしら?」

ひまわり、カーミラを振りほどく。

ひまわり 「…くっそお…」

里子を先頭に、たんぽぽ、ブラム、ネム、鬼太朗、、

里子 「あそこです!」
カーミラ 「役者が揃いましたね。」
鬼太朗 「行くぞ!」

みんなが進もうとした瞬間、カーミラが手をかざす。結界が張られる。

たんぽぽ 「結界?!」
ネム 「里子、切って!」
里子 「待って下さい!」
ネム 「なに?」
里子 「これは…重力結界…」
鬼太朗 「重力結界?」
里子 「この結界を破ると、中のものが潰されます!」
ブラム 「オウ!ペ〜チャンコデゴザ〜ルカァ?」
カーミラ 「さすが、良くご存知。ま、我々ヴァンパイアは無事でもこの子は即死でしょうね。」
たんぽぽ 「破る方法は?」
里子 「ありません。内側から切るしか…」
鬼太朗 「手が出せないってことか?」写真
ネム 「でもこっちには呪文と…」
ブラム 「ワガハイガイルヨォ!」
カーミラ 「そうね、これじゃ儀式が成立しない。取引しましょうか?」
たんぽぽ 「取引?」
カーミラ 「ひまわり。呪文を渡してくれれば本当に太陽の命は救ってあげる。もちろんこの子の血は吸わせてもらうけど。」
里子 「そんなことしたら太陽がヴァンパイアに…」
カーミラ 「その通り。でもよく考えてみてひまわり。この子がヴァンパイアになれば、この子の病気は治るのよ。それに…ずっと一緒にいられる。」
ひまわり 「ずっと一緒に…」
たんぽぽ 「ダメよひまわり!そいつが王になったら病気のヴァンパイアはみんな助からない!」
カーミラ 「私の作る新しい世界にそんな不潔なヴァンパイアはいらない。優秀なヴァンパイアと食料用の一部の人間以外は。」
鬼太朗 「血の三ヶ日であれだけ人間を殺させておいて、まだ飽き足らないのか!」
カーミラ 「あれは我々にとって危険な血を持った人間を殺処分しただけ。人間だって「鳥インフルエンザ」だの「口蹄疫」だので何万匹も家畜を殺してるじゃない。私が殺させたのはたった100人たらず。かわいいもんでしょ。」
ネム 「罪も無い人間を100人も殺しておいてよくそんなことが…!」
カーミラ 「罪も無い人間を一番殺してるのは、人間自身じゃない。毎日どれだけの人間が人間に殺されてる事か。私の作る新しい世界の方が、人間にもヴァンパイアにも地球にも遥かに優しい世界だと思わない?ま、妖怪には厳しいでしょうが。」
鬼太朗 「へっ!御託並べてんじゃねぇよ!」
ひまわり 「…本当に太陽は助かるんだな?」
たんぽぽ 「ひまわり?!」
カーミラ 「約束するわ。」

ひまわり、呪文の筒を差し出す。

たんぽぽ 「ダメよひまわり!」

カーミラ、受け取る。

カーミラ 「いい子ね。約束通り、術を解いてあげるわ。」

カーミラ、手をかざすと太陽が目を覚ます。

太陽 「…あれ?ここは?…」
ひまわり 「太陽!」
太陽 「ひまわりさん?」

ひまわり、太陽に近づこうとした瞬間、カーミラに後ろから斬られる。

ひまわり 「うっ!」
カーミラ以外 「ひまわり!!」
太陽 「何をするんだ!!」
カーミラ 「そう。怒りなさい。悲しみなさい。太陽。」
たんぽぽ 「ちょっと待って!そんなことしたら血の成分が変わって…」
カーミラ 「そうよ、本当は血の成分を変えるのが正解。」
たんぽぽ 「なんですって?!」
カーミラ 「儀式に必要なのはこの子の怒りや悲しみの混じった血。」
たんぽぽ 「そんなバカな!文献には確かに…」
カーミラ 「その文献、私が少し手を加えたの。」
たんぽぽ 「ありえない!あの文献は千年前に…千年前…カーミラ?…あなた…誰なの?…」
ブラム 「ア〜ッ!思イ出シタ〜デスヨ!アイツワ!アイツワ!」
ネム 「え?誰なの?!」
ブラム 「オリムラクデ〜ス!!」
カーミラ・ブラム以外 「オリムラク?!」
鬼太朗 「オリムラクって、千年前に儀式に失敗したって言う…」
ブラム 「ワガハイ一度アタコトアルネ!姿ワチガ〜イマスガァ、コノニオ〜イワ間違イナ〜イネェ!」
カーミラ 「ハハハハ!その通り!ハハハハ!」
たんぽぽ 「だって…オリムラクは殺されたんじゃ…」
カーミラ 「それも書き替えたの。」
鬼太朗 「何てこった…」
カーミラ 「ブラム。後はあなただけね。」
ブラム 「バカ!アホ!行クワケナカローモン!!」
カーミラ 「そう。それじゃは儀式は成立しないわね。残念だけどこの子達ももう必要ない。」

カーミラ、ひまわりと太陽に剣を向ける。

たんぽぽ 「カーミラ!」
ブラム 「ソッチ行クニシターテ、ケカイアタラ行ケンジャロガ!」
カーミラ 「そうね、それじゃ入る時だけ一瞬解いてあげましょう。」
たんぽぽ 「ブラム。」
ブラム 「ダイジョーブネェ。ワガハイニマカーセテチョマーゲネェ。」

ブラム、結界の前まで行く。

カーミラ 「わかってると思うけど、一人でも妙な動きをすれば、二人は瞬殺よ。」
ブラム 「ミナワカーテルヨ!トットトケカイヲヒラーケゴマ!」
カーミラ 「それじゃ。」

カーミラ、結界を解き、ブラムがピョコンと中に入り。すぐに結界が閉じる。

たんぽぽ 「くっそぉ…」
カーミラ 「まずはあなたの血から頂くわ。」
ブラム 「ソーカンタンニイクート、オモテンデゴザールカ?」写真

ブラム、ファイティングポーズ。

ブラム 「見ルガイイヨォ!ワガハーイノ真ノチカーラヲ!ヒッサーツ!チョースーパーウルトーラ!ガク〜ン…」

カーミラの手かざしでブラムは立ったまま気を失う。

鬼太朗 「え?」
カーミラ 「悪いけど彼のコントロールも自由自在なの。」

カーミラ、再びブラムに手かざし。

源さん 「あんりゃ?また寝ちってた?あらら?オレなんでこんな服着てんだっけ?」

たんぽぽ達、ため息。源さん、カーミラにつかまる。

源さん 「おお?なんだ?ねーちゃんなかなか積極的じゃ…」

源さん、カーミラに血を吸われ、気を失う。

カーミラ 「次はあなたの番。」写真

カーミラ、太陽に手かざしをすると太陽動けなくなり、自分からカーミラに近づいてしまう。

太陽 「ううっ!!」
カーミラ 「あなたはヴァンパイアになるのよ。そうすれば病気も治るし、人間の何倍もの力も手に入る。」
太陽 「そんなもの…いらない。」
カーミラ 「きっと感謝するわよ。私に。」

カーミラ、太陽に噛みつこうとした瞬間、突然ひまわりが立ち上がりカーミラを斬る。

ひまわり 「てやあっ!」

カーミラ肩を斬られ後ずさる。

カーミラ 「くっ!」
ひまわり 「さあ。太陽に噛み付きなさいよ。噛み付いた瞬間、その傷のせいであなたは地獄に落ちるけど。」
太陽 「ひまわりさん。」
ひまわり 「それとも傷が治るまで1時間待つ?儀式のタイムリミットは過ぎちゃうけどね。」
鬼太朗 「やった!」
ネム 「これでもう儀式はできない!」
カーミラ 「…フフフフ…ハハハハハ!!」
ひまわり 「何がおかしい?」
カーミラ 「血を吸うために直接噛み付かなければならない。それも文献に書いてあったのよね?」
ひまわり 「何?」
たんぽぽ 「まさかそれも嘘?!」

カーミラ、注射器を出す。

カーミラ 「確かに、千年前はこんな便利なものなかったけど。」

カーミラ、太陽に注射器を刺し血を抜き、太陽を殴り飛ばす。

太陽 「うあっ!」
ひまわり 「太陽!」

ひまわり、太陽を受けとめる。カーミラ、注射器の血を半分飲み、残りを注射器ごと放り捨てる。
カーミラ、力がみなぎり叫ぶ。

カーミラ 「うわああああああああっ!」

その瞬間、展望台のガラス窓が全て割れる。とっさに太陽がひまわりをかばう。

カーミラ以外 「うわあっ!」写真

儀式の間に突風が吹き荒れる。

カーミラ 「後はこの呪文だけ。」

カーミラ、呪文の筒を掲げる。

カーミラ 「長かった。この千年、この瞬間を夢見ていた。」
たんぽぽ 「カーミラ!」
カーミラ 「そうそう、あなたのお兄様にも随分邪魔をされました。」
たんぽぽ 「え?」
カーミラ 「疾風はあの頃からこの儀式の事をずっと調べていました。もう少しで私に辿り着くって所まで来てしまったので、始末したんです。」
たんぽぽ 「なんですって?!…それじゃ…」
カーミラ 「あの日、人間の乗った車を我々の戦闘場所に誘いこんだのはこの私。」
たんぽぽ 「カーミラ!」
ひまわり 「私の両親を殺したのもあんただったのか…」
カーミラ 「復讐できなくて残念だったわね。」

カーミラ、筒を開け、中身の紙を取り出す。風が強まる。

カーミラ 「さあ!新しい世界の誕生よ!」

カーミラにスポット。紙を広げ、厳粛に呪文を読み始める。

カーミラ 「『コンビニのパリパリ海苔のおにぎりを開ける時…』え?…何これ?」

突然後ろから里子が現れる。

里子 「かかったなカーミラ!」
カーミラ 「あなた?!どうやって結界の中に?!」
里子 「さっきブラムと一緒に入ったの。」

ブラム、起き上がる。

ブラム 「キ〜ガツキマセンデェシタカァ?」
カーミラ 「でも、あの時誰も…」
里子 「私の母は気配が消せる座敷童でね。その血を継いでるの。」

里子、内側から結界を切る。みんな結界の中に一斉に入る。

里子 「呪文をすり替えたのはうちの母。アイディアを出したのは私の後輩の鈴木。人間よ。」
カーミラ 「人間に?私は人間なんかに騙されたのか?!」
たんぽぽ 「残念だったわね。」
カーミラ 「こんな…こんな屈辱はない…」
ブラム 「モヒトツ残念ナコトアリマースヨォ!」写真
カーミラ 「何?」
ブラム 「ワガハイ、サッキワザート血〜ヲスワ〜セタデゴザ〜ルヨ。」
カーミラ 「わざと?」
ブラム 「ジツーワ、ワガハイモ人間ノ病気〜ニカカッテルンデ、ゴザソウロウヨォ。」
カーミラ 「え…」
ブラム 「ソレモナント、『白血病』デゴザ〜ル。」
カーミラ 「わ…私が白血病に?…そうだ!」

カーミラ、捨てた注射器を探すが、里子が持っている。

里子 「探し物はこれ?さっき捨てたくせに。」
たんぽぽ 「これで血清を作れば、ヴァンパイア達は助かる。」
ひまわり 「でも、あんただけは、その資格が無い。」

カーミラ崩れる様に膝まづく。

カーミラ 「また…またしくじったのね…千年…千年待ったのに…」
ひまわり 「観念しろカーミラ。」
カーミラ 「…ええ…」

たんぽぽにおさえられ、力なく立ち上がるカーミラ。ひまわりは倒れている太陽のもとに向かう。
突然、観念したに見えたカーミラがたんぽぽを突き飛ばし、ひまわりの元へ走る。

たんぽぽ 「カーミラ!」

ひまわり、その声に気付くがカーミラの方が早く、ひまわりを襲い剣を奪い太陽に剣を向ける。

カーミラ 「まだ時間はある。こいつの血があればまだ私は生きられる。」
鬼太朗 「いいや。ここで終わりだ。」
カーミラ 「何?」
鬼太朗 「いいものが届いたんだ。」

あげぱんに背負われたストーカーと、その後ろから夏子とあずきもついて出て来る。

ストーカー 「鬼太朗さ〜ん!!」

夏子が、大きな剣を持って鬼太朗のもとへ。

夏子 「これを!」
鬼太朗 「みんな良くやった!」
たんぽぽ 「それは!」
ひまわり 「まさか…バルドルの剣?!」
鬼太朗 「たんぽぽ!」

鬼太朗、剣をたんぽぽに渡す。

たんぽぽ 「間違いない。本物よ。ひまわり!」

たんぽぽ、剣をひまわりに。

ひまわり 「信じられない。」
カーミラ 「ば、ばかな!!それは海に沈めたはず!」
鬼太朗 「その通り。だから取って来た。」写真
カーミラ 「と…取ってきたって?!小笠原海溝の底からどうやって…」

ストーカーの肩に手を置き。

鬼太朗 「こいつ、海坊主なんだ。」
カーミラ 「海坊主?!」
海坊主 「いやぁ、さすがに水深9780mはきつかったっす。」

ひまわり、たんぽぽ、ゆっくりとカーミラににじり寄る。その後から里子も。

ネム 「鬼太朗いつの間に?」
鬼太朗 「ついさっき思いついてね。」

ネム、海坊主に握手。

ネム 「いやでかした!」
海坊主 「(照れて)い、いやあ…」
あずき 「鬼太朗さんてば、デートと引き換えにこいつに剣さ取って来させたんだぁ。」
ネム 「デートくらいしてやんなさいよ。」
あずき 「それが…こいつがわだすにつきまどってたのは、これのためだったんだぁ…」

あずき、ラブレターをネムに見せる

ネム 「お!ラブレター?いいじゃん、いいじゃん!」
あずき 「これをネムさんに渡してほしいって…」
ネム 「え?…」

ネム、横で握手した手をニコニコして見ていた海坊主と目が合う。海坊主,更にニッコリ。
ネム、引きつり笑顔で鬼太朗を睨む。

ネム 「鬼太朗?」
鬼太朗 「うん、今知ったから。今知ったから。」

ひまわり、たんぽぽ、カーミラに剣を構える。

カーミラ 「来るな。こいつがどうなってもいいのか?」
里子 「ごめんなさい。こちらにはもう一つ切り札があるの。」
カーミラ 「何?」
里子 「さっき、聞いてたでしょ?私が座敷童の血を引いてるって。」
カーミラ 「それがどうした?」写真

カーミラを後ろから羽交い締めにする立子。

立子 「こういう事。」
カーミラ 「お、お前は?!」
里子 「うちの母です。」
カーミラ 「い、いつからここに?」
立子 「最初から。」
ひまわり 「お前は直接掟を破っていない。でもこの剣なら地獄に落とせる。」
カーミラ 「やめて…お願い…」
たんぽぽ 「許す訳にはいかない。処刑部隊の隊長として。」
ひまわり 「覚悟。」
カーミラ 「うわあああああ!!」

カーミラ、叫びながら立子をふりほどき、たんぽぽに向かって行くが、たんぽぽに斬られる。

カーミラ 「うっ!!」

斬られながらひまわりの方へふらふらと向い、ひまわりに斬られる。

カーミラ 「ぐあっ!」
たんぽぽ 「悪を敗り!」
ひまわり 「正義を成すと書いて!」
ひまわり・たんぽぽ 「成敗!!」写真

バックに「成敗」の文字。カーミラの断末魔。体が炎に包まれ、やがて光がはじける様に消える。

ひまわり 「終わった…」
たんぽぽ 「ひまわり。」

ひまわり、たんぽぽ、目を合わせる。たんぽぽがうなずくと、それに答えひまわりもうなずく。

鬼太朗 「空が白んで来たぞ。」
ネム 「急いで降りましょう。」
たんぽぽ 「ひまわりは太陽君を。」
ひまわり 「うん。」

ひまわり、太陽に駆け寄る。夏子、あずき、あげぱん、ブラム、海坊主、ハケる。

ひまわり 「太陽、大丈夫か?」

横になっている太陽を起こそうとするが、太陽の様子がおかしい。

ひまわり 「…太陽?…太陽?!!」

みんな、異変に気付く。

里子 「どうしたの?」
ひまわり 「血が!たくさん血が!」
里子 「なんですって?!」
立子 「太陽!」
たんぽぽ 「これは…背中にガラスの破片が!」
ひまわり 「さっき私をかばった時…」
たんぽぽ 「深い…この破片心臓まで…」
ひまわり 「早く運ばないと!」
たんぽぽ 「待って!動かすと出血が!」
里子 「太陽!太陽!」
立子 「太陽!」
ひまわり 「そんな…」
太陽 「ううう…」
ひまわり 「太陽!」
太陽 「ひまわり…さん…みんなは?…」
ひまわり 「無事だよ!みんな助かったんだよ!」
太陽 「よかった…」
里子 「太陽。」
太陽 「姉ちゃん…母さん…帰り遅くなってごめん…」
里子 「いいからもうしゃべるな。」
ひまわり 「みんなどいて…」
たんぽぽ 「え?」写真

ひまわり、急に立ち上がり、バルドルの剣を振り回す。みんな驚いて下がる。

たんぽぽ 「どうしたのひまわり?」
ひまわり 「…太陽を救う。」
里子 「え?」
たんぽぽ 「…あなたまさか…」
里子 「太陽をヴァンパイアに?」
鬼太朗 「そんなことしたら君は!」
ネム 「あなたカーミラの剣で傷を負ってるのよ!」
ひまわり 「それしか太陽を救う方法は無い!」
たんぽぽ 「私がその子の血を吸うわ!あなたは兄さんの形見なの!あなたまで兄さんと同じ目に遭わすなんてできない!」
ひまわり 「お姉ちゃん。私は仲間をたくさん殺した。」
たんぽぽ 「でもあれはカーミラに騙されて…」
ひまわり 「たとえそうだとしても、120人の罪も無い仲間を殺した事は許されない。」
たんぽぽ 「ひまわり…」
ひまわり 「それに、太陽は私の命の恩人。恩返しをするのが私の最後の任務。」
里子 「ひまわりさん…」
太陽 「ううう…」
ひまわり 「太陽。」
太陽 「なんだか…冷えるね…」
ひまわり 「うん…そうだ…戻ったらココアを飲もう。」
太陽 「あぁ…いいね…一緒に飲もう…ココア…」

太陽、意識を失う。

ひまわり 「太陽?…太陽?!…太陽、ありがとう。太陽のお陰でちょっとだけ長生きができたよでも、そのちょっとで、ほんとに世界を変えられたかも。きっとまた会えるよ。だって私達、太陽とひまわりだもん…」

ひまわり、太陽に噛みつき、光の中に消える。みんな太陽に駆け寄る。

たんぽぽ 「ひまわり…」
ネム 「たんぽぽ…」
たんぽぽ 「…これで良かったのかもしれない。」
ネム 「え?」
たんぽぽ 「うん…」

太陽、目を覚ます。

太陽 「うううっ…」
里子 「太陽!」
太陽 「…あれ?どうしたの?僕?」
里子 「あんたは…生まれ変わったの。」
太陽 「生まれ変わった?んでもなんか、そんな気がする。」
里子 「さ、行こう。もうすぐ日が昇る。」
太陽 「あ、ホントだやばいやばい。あれ?そう言えば、ひまわりさんは?」
里子 「え?…それは…」
たんぽぽ 「また会えるよ。」
太陽 「え?」
たんぽぽ 「そう言ってたから。ひまわりが。」
太陽 「…はい。」

太陽、笑顔でハケる。皆も後を追ってハケる。

(作:松本仁也/写真:はらでぃ)

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