△ 「ヴァンパイア・ブリード」シーン14


トップページ > ページシアター > ヴァンパイア・ブリード > シーン14 【公演データ

<前一覧次>

明転すると、立ったまま眠っている鬼太朗の頭に、手を乗せているネムと、
ネムの頭に手を触れているみんな。鈴木だけ後ろでまだお茶を飲んでいる。鬼太朗が目を覚ます。

鬼太朗 「ふう…なんか色々思い出したよ…って、いつの間にこんな大勢で観てたんだ?!」写真

ネム、疲れている。

ネム 「さすがにたこ足配線はきついわ…」
夏子 「人の記憶なんて初めて見た。」
あずき 「スリーデー映画よりはぐりょぐあったぁ!」
里子 「父さん、あんな任務も…」
立子 「私と出逢う前の任務ね。」
たんぽぽ 「兄が人間を信用するようになったのも、これが理由の一つかもしれません。」
ネム 「そうだ、例の呪文!」
里子 「父さんがもらってたあの筒!」
たんぽぽ 「きっとあれです!」
里子 「母さんあれって?」
立子 「思い出したわ!仏壇の下の引き出しに!」

立子取りに行く。

ネム 「どうする?」
たんぽぽ 「きっとカーミラの手下がすぐにここを嗅ぎ付けてくる。」
鬼太朗 「手下はカーミラの本当の目的を?」
たんぽぽ 「知ってたら手を貸さないでしょうね。純粋に病気にかかったヴァンパイア達を救う使命で動いている。そして恐らく彼らも…人間の病気にかかっている。」
鈴木 「許せん!!」

後ろで話しを聞いていた鈴木が急に立ち上がり、前に出て来る。

里子 「おお、どうした?さっきまで全く信じてなかった奴が。」
鈴木 「どれもこれも眉唾な話しばっかりだけど、自分なりに消化しました!」
里子 「早いな。」
鈴木 「僕を盾に使って下さい!」
里子 「え?」
鈴木 「人間を殺せない掟なら。僕を盾にして戦えばいい!」
里子 「案外見上げた根性してるなお前。」
夏子 「でも、ここまできたら掟もなにもないんじゃない?」
たんぽぽ 「そうでもないわ。」写真

たんぽぽ、剣を出す。みんな驚いてさがる。

たんぽぽ 「これはリヒトシュヴァート。通称「地獄落とし」と呼ばれる剣で、処刑人は全員持っている。」
里子 「地獄落とし?」
たんぽぽ 「掟を破って人間を殺したり、人間の血を直接吸ったヴァンパイアがこの剣にかかれば一瞬で地獄に落ちる。」
夏子 「怖っ。」
あずき 「んじゃ、掟を破らなければ威力がない?」
たんぽぽ 「いいえ、傷を与えることはできるわ。傷は1時間で治るけど、もしその間に掟を破ればその瞬間に地獄に落ちる…兄の疾風も…それで。」

ネムの携帯が鳴る。

ネム 「失礼。」
鬼太朗 「おいおいまた合コンか?」
ネム 「違うわ。誰だこれ?(電話に出る)…もしもし?…あれ?!あんたどうしたの?…え?…なにそれ?で?どうなの?…え?なんですって?!ほんとに?!…うん…うん…わかったお願い…(電話を切る)まさか…こんな事って…」
鬼太朗 「誰からだ?」
ネム 「仲間からの情報。」
たんぽぽ 「仲間?」
ネム 「浅草には仲間の妖怪多くてね。色々調べてもらってるの。」
鬼太朗 「で、何て?」
ネム 「それが…太陽君がカーミラ一味にさらわれたって。」
里子・鬼太朗 「えっ?!」
里子 「でもあいつさっき帰って来て…まさか…また外に?!」
鬼太朗 「くそっ!人質か?」
ネム 「違うの。」
鬼太朗 「違う?」
里子 「人質じゃなかったらどうして?…」
たんぽぽ 「…まさか!」
ネム 「(うなづき)太陽君が…特効薬だったの!」
みんな 「ええ〜っ?!!」

立子、筒を持って帰って来る。

立子 「見つけたわよ。これでしょ?」

たんぽぽ、筒を受け取り調べる。

里子 「母さん。」

里子、立子を後ろに連れて行き、事情を話す。

たんぽぽ 「間違いない。鬼太朗さんの記憶に出て来たのと同じものよ。」

里子から事情を聞いていた立子が

立子 「えっ?!太陽が?!(たんぽぽに)太陽は?太陽はどうなるの?!」
たんぽぽ 「儀式までは殺されません。」
鬼太朗 「すぐにここを出よう。」
里子 「でもどこに逃げれば?!」
鬼太朗 「逃げるんじゃない!攻めるんだ!奴らが呪文を奪いに来る前にこっちから攻めて太陽君を奪い返す!」
里子 「でも奴らの場所は?」
ネム 「(携帯を見せて)大丈夫、情報は入ってる。一味の人数も、能力もね。」
里子 「いつの間に…」
鬼太朗 「言ったろ。うちらもバカじゃないって。」
ネム 「もう一つ…たんぽぽ。」
たんぽぽ 「ん?」
ネム 「ひまわりちゃんも奴らと一緒よ。」
たんぽぽ 「!!…やっぱり…生きてた…」
鬼太朗 「生きていたのは嬉しいが、今は我々の敵。心中察するよ。」
里子 「母さん。この子達を緊急避難場所に。」
立子 「わかったわ。」
夏子 「ちょっと待ってそれって!」
あずき 「あたすたつも一緒ぬぃ!」
あげぱん 「ぬんぬん!」
ネム 「お願い!言う事を聞いて!」
里子 「鈴木、この人達をお願い。」
鈴木 「客間さん!」
里子 「これは人間の仕事じゃない。あんたはあんたにしかできない事をして。」
鈴木 「客間さん…」写真
たんぽぽ 「私も行くわ。」
ネム 「でも怪我がまだ…」
たんぽぽ 「大丈夫、ほとんど治ってる。それにもしひまわりが出て来たら、相手は私が。」

ネム、鬼太朗、うなづく。

立子 「じゃ、みなさん。ついて来て。」
避難組4人 「はい…」

全員ハケる。間をおいて、ストーカー出て来る。みんなを追ってハケる。暗転。

(作:松本仁也/写真:はらでぃ)

<前一覧次>


トップページ > ページシアター > ヴァンパイア・ブリード > シーン14 【公演データ