△ 「ヴァンパイア・ブリード」シーン11


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字幕『20時45分 客間家 離れ』
明転。 たんぽぽ、椅子に腰掛けお茶を飲んでいる。みんなたんぽぽを囲んでいる。鈴木とあげぱんは後ろでお茶を飲んでいる。

たんぽぽ 「お茶、ありがとうございました。」写真
立子 「どういたしまして。」
ネム 「たんぽぽ、全部話してくれるわね。」
たんぽぽ 「ええ。」
鬼太朗 「なぜヴァンパイアはこんな事を?」
たんぽぽ 「…この日本で発症したヴァンパイアの病気。それが全ての始まり。」
ネム 「病気?ヴァンパイアに病気なんて…」
たんぽぽ 「ええ、ヴァンパイアは病気にかからない。通常は。ところが去年の暮れにその常識が崩れた。」
里子 「病気っていったいどんな?」
たんぽぽ 「人間の病気にかかってしまう、という病気です。」
鬼太朗 「人間の病気なら人間の薬で…」
たんぽぽ 「効かないの。人間の薬はヴァンパイアには全く効かない。」
鬼太朗 「それじゃ。」
ネム 「風邪をひいても死んでしまう?」
鬼太朗 「うちら妖怪も人間の病気にはかかるが。」
里子 「少しは人間の薬が効きますからね。」
ネム 「原因は?。」
たんぽぽ 「…人間の血よ。」
鬼太朗 「人間の血?」
たんぽぽ 「食料としてヴァンパイアに供給されている、輸血用の血液から感染したの。」
里子 「ヴァンパイアが血液感染?」
たんぽぽ 「極一部の人間の血液中の、極一部のタンパク質が、ヴァンパイアにとって病原菌と同じ働きを始めた。」
ネム 「じゃ、その人間は?」
たんぽぽ 「全くの健康体よ。感染するのはヴァンパイアだけ。」
鬼太朗 「そうか、『血の三ヶ日』で殺された人間たちは。」
里子 「感染源の人間?」
たんぽぽ 「ええ。我々処刑部隊の一部が、パンデミックを恐れて取った行動とされたけど、掟は掟。実行犯はすぐに我々の手で始末した。」
ネム 「ところがこの事件には首謀者がいた。それがカーミラ。」
里子 「その濡れ衣をたんぽぽさんが着せられた。」
たんぽぽ 「その通り。」
鬼太朗 「ひどいな。」
たんぽぽ 「いえ、ひどいのはその後。調査をしているうちに、彼女のとんでもない陰謀を知ってしまった。」
ネム 「陰謀?」
たんぽぽ 「人間もヴァンパイアも一部を残して抹殺し、自分がこの世の王になる。」
鬼太朗 「なんだって?!」
たんぽぽ 「限られたヴァンパイアしか知らされていない事だけど、実は千年前、今回と同じような事件があったの。」
里子 「千年前?」
たんぽぽ 「ヨーロッパでヴァンパイアに感染病が蔓延し、何万というヴァンパイア死んだ。しかし、ヴァンパイアのオリムラクという術師が特効薬となる血を持った人間をみつけたの。」
鬼太朗 「その血のお陰で助かったってわけだ。」
たんぽぽ 「ことはそんな簡単には済まなかった。」
鬼太朗 「え?」写真

ここから夏子とあずきを人間とヴァンパイアにみたてて説明。

たんぽぽ 「儀式を行い、この人間の血と千年以上生きたヴァンパイアの血を飲めば太陽の元でも生きられる体を得られる。」
鬼太朗 「完全無欠のヴァンパイア王になれるってわけだ。」
たんぽぽ 「しかしこの人間に牙をたて、血を吸った瞬間、この人間はヴァンパイアになってしまう。」
里子 「そうか!この人間の血を吸えば、自分は王になれるけど、同時に特効薬が作れなくなる。」
たんぽぽ 「感染した仲間達を救うか、自分が王になるか、オリムラクは後者をとろうとしたけど計画がばれて殺された。」
ネム 「当然ね。」
たんぽぽ 「ヴァンパイア達は同じことが起らないようこの事件を封印し、万が一起きてしまった時のために一本の剣を作った。」
鬼太朗 「バルドルの剣だね。」
たんぽぽ 「そう、どんなヴァンパイアでも一撃で倒せる剣。」
里子 「よく知ってますね。」
鬼太朗 「昔ちょっとね。」
たんぽぽ 「カーミラがオリムラクと同じ事をしようとしていると気付き、密かにルーマニアまで行ってバルドルの剣を借りたのに、帰りの飛行機であんなことに…」
ネム 「カーミラにバレてたんだ。」
たんぽぽ 「ええ、スパイがいて…」
里子 「スパイ?」
たんぽぽ 「それが…妹のひまわりだったんです。」
鬼太朗 「えっ?!」
ネム 「じゃ、妹さんは…」
たんぽぽ 「多分生きてる。爆破された飛行機と海に落ちたんだけど、何とかみつけて引っ張って泳いだ。」
鬼太朗 「すげえ。」
たんぽぽ 「それでなんとか暗いうちに東京湾に辿り着いたんだけど、そこではぐれてしまって…」
ネム 「そうだ、この石は?」

ネム、記憶の石を出す。

たんぽぽ 「良かった、無事に届いてたんだ。」
鬼太朗 「この中に重要な証拠が?」
たんぽぽ 「ええ、私がこの目で見たカーミラの陰謀の全てが入ってる。」
ネム 「やっぱり。」
たんぽぽ 「カーミラの計画は、まず邪魔な我々を消す事。千年以上生きているヴァンパイアはもう確保しているはずだから、後は特効薬の人間と儀式の呪文を必死に探しているはず。鬼太朗さんと、旦那さんの時止めさんは、死んだうちの兄と親友でしたよね?」
鬼太朗 「疾風か。」
立子 「ええ、そうでしたね。」
たんぽぽ 「兄はその呪文を、鬼太朗さんか時止めさんに渡したらしいんですが知りませんか?」
鬼太朗 「呪文?」
立子 「どうだったかしらぁ…」
ネム 「記憶を呼び出そうか?」
鬼太朗 「え?」
ネム 「こいつの記憶に入り込めるよ。」
たんぽぽ 「お願い!呪文のありかがわかるかもしれないの!」
鬼太朗 「え〜っ?!」写真
ネム 「え〜っ、じゃない。」
鬼太朗 「だって、お前が入ってくんのいやだ…」

ネム、素早く手かざし。鬼太朗、一瞬で眠る。

鬼太朗 「ぐぅ〜〜っ…」
ネム 「問答無用。じゃ、ちょっと見て来る。」
たんぽぽ 「私も一緒にいい?」
ネム 「いいよ。私の頭に手を触れて、目を閉じて。」

二人、沈黙。

里子 「これで鬼太朗さんの記憶みてるんだ。」
夏子 「どんな感じなんだろ?」
あずき 「さあ?」

みんなアイコンタクトをとりはじめ、一斉にネムを囲み、手をかざす。暗転

(作:松本仁也/写真:はらでぃ)

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