△ 「1/4 breed」シーン29D


トップページ > ページシアター > 1/4 breed > シーン29D 【公演データ

<前一覧次>

里子、よろめく。立子が駆け寄る。

立子 「里子!」舞台写真
里子 「お母さん。」

ドワスレ、ネム、キタロウに近寄る。

ネム 「キタロウ!」
ドワスレ 「大丈夫か?」
キタロウ 「あぁ。無傷だ。」
ドワスレ 「無傷?」
キタロウ 「大王の魂が、僕から抜け出た瞬間を刺した。僕でさえ全く見切れない程早かったのに…里子ちゃん、すごいよ、君は。」
里子 「うん。」
今井 「やった!これで世界は救われたんだ!」
ドワスレ 「後始末が大変そうだ…」
立子 「ドワスレさん、ちょっと…」
ドワスレ 「はい。」

ドワスレ、立子に連れられて、

里子 「キタロウさん。」
キタロウ 「何?」
里子 「良かったね…恋人助かって。」
キタロウ 「え?あぁ、まあな…」
ツムジ 「大丈夫よ、里子ちゃん。キタロウは私に片思いしているだけだから。」
里子 「え?そうなの?」
ツムジ 「いつあんたを恋人だって認めた?」
キタロウ 「ゲッ…ゲゲのゲ…。」 
ネム 「それにしても、里子がクウォーターじゃなかったなんてね。」
里子 「クウォーターだよ。」
今井 「え?だってお母さん、人間じゃなくて妖怪だったんでしょ?」
ツムジ 「同じ事でしょ。」
今井 「なんで?」
ツムジ 「妖怪の血が1/4だと思ってたのが、人間の血が1/4だったって事よ。」
ネム 「あぁ、そうか。そういう事か。やっぱクウォーターなんだ!」
今井 「え、ごめん。まだよく分かんない。」
ネム 「バーカ」
今井 「お前が言うな!」
ドワスレ 「さあ、残った仕事片付けるか。」
今井 「しまった!宇佐美を原子炉につないだままだった。」
ドワスレ 「今井。それは私がやっておくよ。」
今井 「いや、しかし…」
ドワスレ 「ごくろうさま…(今井の肩を叩くと今井は気を失う)」
里子 「…記憶を消したの?」
ドワスレ 「ああ。これが私の仕事だからな。だが、手柄はこいつのもんだ。こいつな、警察署が爆破された事件で、婚約者を殺されているんだ。」
里子 「え?」
ドワスレ 「絶対俺が捕まえるって、そりゃもうすごい執念だったからな。」
ネム 「よく頑張ったよね。」
キタロウ 「人間にしとくには惜しいよ。」
ドワスレ 「君もよく頑張ったね、里子ちゃん。」
里子 「え?」

ドワスレ、里子の肩を叩く。里子、気を失う。

ネム 「里子ちゃん…」
ドワスレ 「これでいいんですね。」舞台写真
立子 「ありがとうございます。親のわがままかもしれませんが、この子には普通の人間の生活を続けさせてあげたいんです。妖怪の血を持つものが、人間界で暮らすのは厳しいものです。私も苦労が多かったもので…」
ネム 「淋しいわね。」
立子 「この子の為です。」
キタロウ 「仕方ない。」
ドワスレ 「じゃ、ここで失礼する。」
ネム 「私もついて行っていい?」
ドワスレ 「あぁ。じゃあ、こいつ運ぶの手伝ってくれ。」
ネム 「は〜い・(去りかけるが、立ち止まり)さよなら、里子ちゃん。(と言って、立子におじぎをし、キタロウ達に向かって)じゃあね。」

ネムとドワスレ、今井を運びながら去る。

キタロウ 「あ、いけね!こんな時間だ!…でも何とか間に合うか。」
ツムジ 「何よ?」
キタロウ 「『アンビリーバボー』今日、心霊写真特集なんだ。」
ツムジ 「(ため息をついて)あんたって人は…。」

2人去りかけるが、里子の方を見て、

キタロウ 「里子ちゃんの事、絶対忘れないよ。」
ツムジ 「(立子に)お元気で。」

キタロウとツムジ去りながら、

キタロウ 「ねぇ、一緒に見ない?アンビリ。」
ツムジ 「遠慮する。私、怖いの駄目。」舞台写真

2人、去る。
舞台中央に立子の膝枕をして眠る里子。
しばらくすると、その後ろから人影が。

立子 「あなた?」
トドメ 「あぁ。頑張ったな、しゃとこ。」
里子 「(寝言で)お父さん…」

立子とトドメ、顔を見合わせてうなずき微笑む。
ゆっくり暗転。

(作:松本仁也/写真:広安正敬)

<前一覧次>


トップページ > ページシアター > 1/4 breed > シーン29D 【公演データ