△ 「ダンボールキッチン」第7回


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支度を整えた夢子、キッチンに下りてくる。

夢子 お待たせ。あら遼ちゃん、お帰り
遼太郎 (会釈し)ただいま
夢子 例のプレーリー男は?
西条 あ、しまった
カヨ 忘れてた

2階から賑やかな声が聞こえてくる。森瀬俊、松平千里、松平晃冶の3人、もつれ合うようにキッチンへ。

母さん。よかった間に合って
晃冶 こんにちは
千里 お邪魔してます
夢子 (会釈し)こんにちは
車、貸してよ。これから横浜へドライブに行こうと思ってさ
夢子 あなた自分の車は?
友達に貸しちゃった
夢子 あのベンツを?買ってまだ2ヶ月じゃない
どうしても仕事で必要だって言うからさ…頼むよ
夢子 (仕方なくキーを出し渡す)気をつけてね、くれぐれも。見かけによらず気難しい車だから
わかってる
夢子 危ないとこ行かないでね舞台写真
はいはい
夢子 飲んだら運転しないで
晃冶 僕がちゃんと見張ってます
夢子 乗らないように?
晃冶 いや。飲まないように
じゃ晃冶さんも今夜は飲むなよ
晃冶 いやだよ
千里 俊さんもお兄ちゃんも飲んでいいわよ。そしたら私が運転するから
駄目だ。死んでも飲めない

一同、笑う。と、繁雄、下手よりのこのこと登場。一緒に笑う。
だんだんと、人々の視線が繁雄に集まる。最後笑っているのは繁雄だけに。

カヨ 出た!
西条 こいつよ夢子さん!
夢子 ほんとにいたのねえ
カヨ 行けリョータロ!
遼太郎 晃冶さんぜひご一緒に
晃冶 話がまったく見えないんですが
俺も
夢子 いいから行きなさい
晃冶 捕まえればいいんですね
待ってよ俺も行く
千里 気をつけて

その間、繁雄はじっと人々を観察している。

カヨ あーこのガラスが嵌め殺しじゃなければ…
夢子 だから開き戸にしようって言ったのに覚さんが…舞台写真

繁雄、「ナルコは?」と聞く。ガラスのせいで中には届かない。

千里 あ、何か言ってる
西条 (唇を読んで)馬鹿阿呆
カヨ 馬鹿はおめえだあ!

繁雄、違う違うと手を振る。もう一度「ナルコは?」と聞く。

西条 (再び読んで)吉野家
カヨ うちは牛丼屋じゃねえ!

男3人来る気配。繁雄すんでのところで上手に逃げる。

千里 あー惜しい!
夢子 カヨさん、覚さん呼んできて
カヨ はい!(上手に去る)
西条 どうしましょう。時間が…
夢子 遅れるって連絡入れといて
西条 わかりました(ケータイを出してかけはじめる)
夢子 ああもう、大事な撮りなのに…

混乱の中、ナルコが降りてくる。無表情に人々を眺め、冷蔵庫を開ける。牛乳を取り出すが、開いているのをみて戻し、新しい牛乳を出す。口を開け、コップに注いで飲む。

千里 心配なので見てきます
夢子 気をつけてね
千里 はい(下手に去る)
西条 わかりました…じゃ(ケータイを切る)
夢子 安部ちゃん?怒ってた?
西条 (首を振り)事故渋滞ってことに…
夢子 さすが

カヨ、一人で降りてくる。

カヨ 奥様…
夢子 覚さんは?
カヨ それが…
夢子 いないの?
カヨ トイレも風呂場も見たんですが…
夢子 変ねえ

下手から繁雄を捕まえた男3人と千里、上気して入ってくる。繁雄、ゴムホースで縛られている。どよめく女たち。

捕まえたよ!舞台写真
夢子 (眼を丸くして)よく思いついたわね、ゴムホースなんて
晃冶さんさ。すっげえ手際よかったよ。なんかこーいうことに慣れてるって感じ?
晃冶 (うろたえて)いやまさかそんなははは
夢子 さ、カヨさん電話
カヨ 110番ですね
夢子 もちろん

(作:中澤日菜子/写真:広安正敬)

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