△ 「Postscript」第十二場


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「みっちゃんめっけっ」
ミドリ 「“めっけっ”て、別にかくれんぼしてんじゃないんだから。」
「何してるの?」
ミドリ 「ん、ゴム段。小学校の時やらなかった?」
「やったやった」

そこへ、あかね登場し、ミドリにタッチ。高オニが始まる。ひとしきり騒いで、結局あかねがオニになり、あかね地団太を踏む。上から見ている藍、やおら。

「あっ、あかねシラガ!中学生で、シラガあるなんてシラガかった…。」

といって、髪の毛を一本引っ張りぬく藍。

あかね 「さむい」
ミドリ 「最低」

3人、見つめ合って思わず吹き出す。あかね、笑いながら。

あかね 「まぁ、いいわ。最後まで辛気臭かったらやってられないわね。…あっ、さっきね、すっごく大きな虹が出てたよ。なんだか最近、やたら虹見るのよねぇ…。」
「虹かぁ…、あのさぁ、虹ってお天気雨のときに良くでるんでしょ」
ミドリ 「でも、今日お天気、悪くなかったよ。それに、ほら奇麗な夕焼け…」
あかね 「奇麗な夕焼けの次の日って晴れるんだよねぇ」
「明日のことなんてわかんないよ。」
ミドリ 「そーねー…。」舞台写真
あかね 「ねー、もしもこのままあたし達が年取ってったらさぁ、いつまで仲良しでいられるのかなぁ」
「そんなの…、ずっと仲良しだよ。」
ミドリ 「そーかなぁ…、案外、高校入ったら顔も合わさなかったかもねぇ…」
「そんなぁ、この期におよんで悲しいこと言わないでよねぇ。」
あかね 「奇麗な夕焼け…。」

藍、ミドリ、ストップモーション。

あかね 「あの時も、こんな奇麗な夕焼けだった。こっそり、学校の屋上に忍び込んで…。思いつめてた…。みっちゃんとの事、五郎君との事。どうでも良くなってた。」

再び、動き出す藍、ミドリ。

「どうしたのあかね。」
あかね 「え、あれ、藍…」
ミドリ 「どうしたの変な顔して。」
あかね 「うん、良いの…。ねぇ、二人ともどうして私に付き合ってくれたの?」
ミドリ 「あかねに付き合って、死ぬって決めたわけじゃないわよ。」
「何で?あたし達じゃ不満?」
あかね 「そうじゃないの。でも、藍は彼氏もいるし…」
「彼氏がいるから、あかねと私はなんか違うの?」
あかね 「え…。」
「そう思うの?」

一瞬、間。藍、あかねの瞳を覗き込む。

ミドリ 「やめなよ、藍。最後はみんなで楽しく死のうよ。」
「楽しく死ぬって変ね!」

ミドリ、藍に対してつぶやく…。

ミドリ 「あんたもつらかったのよね…。」
「ん?」
ミドリ 「辛いことあると、すぐ、くだらない駄洒落言うんだから。」
あかね 「…ありがとう。」
「?あたしのシャレのこと?」舞台写真

あかね、微笑む。二人に気付かれない様に降板するあかね。ミドリ、藍舞台後方上下に立つ。そこだけが明るい照明。

ミドリ 「変な子ね…。あーあ、すっかり日が暮れちゃったね…。」
「あれ、あかねは?」
ミドリ 「…すぐ戻ってくるでしょ。」
「そうね。戻ってくる…、あなたもね。」

そう言って、藍も去る。

ミドリ 「え…」

振返るが誰もいない。向き直って微笑んで降板する。後方の照明とカットクロスで午後2時ごろの照明。

(作:川村圭/写真:池田景)

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