△ 「Postscript」第十場


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だんだん、声がハッキリしてくる。下手よりミドリ登場。舞台中央でややうつむきかげんで立っている。上手よりロッカー登場、サングラスかけ、たたずんでいる。

女声1 「ねぇ、ねぇ聞いた、やっぱり本当なんだって。」
女声2 「えー、うっそでしょ、だって彼女、おやじ連中に超人気あんのよぉ。」
女声1 「だからさ、人は見かけによらないんだって。」
女声2 「ねぇー、仕事もバリバリこなしててそんなふうに見えないけど…。」
女声3 「でもさぁ、なんか前から飲み会とか付合い悪いしさぁ、そのわりに結構、人気のあるレストランとかくわしいのよ。」
女声1 「そうそう、良く雑誌とか休み時間にみてるしね。」
女声3 「だからさぁ、あれってきっとさぁ、ふふっ。」
女声2 「何よぉ、気持ち悪いでしょ、はっきり言いなさいよ。」

ミドリ呟く。

ミドリ 「…関係ないでしょ。」
女声3 「だから、彼女とのデートの下調べなんじゃない。」
女声1 「えー、まじで、じゃ坂田さんの方が、“タチ”なんだぁ。」
女声2 「なにそれ、いやらしいー。」

ミドリ呟く。

ミドリ 「何も知らないくせに…。」
女声3 「しっ、来たわよ」
女声1 「やっばー、行こ行こ。」

ミドリ呟く。

ミドリ 「なんであんた達なんかに…。」

少々、ざわめき。

男声1 「おい、聞いた。彼女の話、やっぱ本当なんだって」
男声2 「ばっか、どうせがせだろ。」
男声1 「それが、マジらしいよ。大学時代に結構、有名だったらしくって…。ほら、名古屋から転勤できた、森下ひろみ、あいつ坂田と同期なんだってさぁ、それでこの前みんなで飲み会、行ったときそういう話になってさ、ホントらしいぜ。」

ミドリ呟く。

ミドリ 「うるさいのよ。」
男声2 「へぇ、俺ちょっとショックだなぁ、彼女好みだったのにぁ。」
男声1 「むりむり。前からガード堅いって評判だったけど、ま、そういう理由があったって訳だ。」
男声2 「そうかぁ、ま、そうだよな。男に興味なんじゃ話になんないしなぁ。」
男声1 「そうそう、そういや部署も移るらしいぜ。」

ミドリ呟く。

ミドリ 「…なんで私だけ…」
男声2 「なんでぇ、仕事にはカンケーないだろ。」
男声1 「そういう訳にいかないだろ、なんせ俺ら扱ってるのが、女性もののインナーだからなぁ。モデルさん相手もあるし、店舗にも応援、行くしさ…、そこで万が一、客に変なことしてみろよ…。一気に会社全体のイメージダウンだぜ。」
男声2 「まさかぁ、そこまでしないだろ。」
男声1 「いや、俺らはそう思うけどさ、うちの細田部長がほっとかないだろ。ただでさえあの人、女なんてコピー取ってお茶汲みしてりゃいいなんて言ってる人だからな。おっと、本人きちゃったよ。」舞台写真

ざわめき、入る。
ミドリ、絶叫する。

ミドリ 「うるさい!あんた達なんか何にもわかってないくせに!あたしの事、何にも分かてないくせに!ふざけんな。ふざけんな!」

しばらく、間。ロッカー、ミドリの方を見やる。

ミドリ 「助けて…。誰か私を助けて…。」

ミドリの周囲、暗転。クロスで下手よりあかね登場、あかねの周り溶暗。ミドリ静かに降板。

(作:川村圭/写真:池田景)

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