△ 「Postscript」第六場


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静かに、青空の映像。雲が浮かぶ。音楽も静かな曲が入る。藍、暗転の瞬間に後ろを向いている。薄暗い中シルエットで藍、男3人静かにハケる。入れ違いでミドリ入る。ミドリ座っている。ノックの音。キャットフットにあかね。ライトあたる。それをカメラが追い、スクリーンの映像があかねに切換わる。ミドリ座っている。

あかね 「良い天気ね。」舞台写真

ミドリ、黙っている。

あかね 「でも、良かったぁ。ミドリが帰ってきてくれて。」
あかね 「…ホントよ。純粋にそう思うの…。」
ミドリ 「お葬式いけなくてごめん。」
あかね 「しょうがないよ、いろいろあったんだからさ。藍もきっとわかってるって。」
ミドリ 「あたし、なんでここにいるんだろ。」
あかね 「どうして…。」
ミドリ 「藍は死んじゃったのに、何であたしはここにいるんだろ。」
あかね 「…ミドリはここにいていいのよ、何にも問題ないじゃない。」

首を振るミドリ。

あかね 「藍は、ミドリが殺したんじゃない。藍は自分で決めたのよ。」
ミドリ 「違う…。藍は中学生のあたし達3人に殺されたのよ。そして、私も…。」
あかね 「私もね…。」

沈黙する、2人。

あかね 「今日はね、手紙持ってきたの…。藍からの。旦那さん宛ての遺書といっしょにあったそうよ。私とあなた宛て…」

手紙を渡す、あかね。

あかね 「あたしは、昨日読んだわ。最初、何が書いてあるんだろって思って緊張したんだけど、書いてあるのはなんでもないのよ。」
ミドリ 「…」
あかね 「中学時代のことや、旦那さんとのこと、それにこの前の、バーのこと…。」
ミドリ 「…」
あかね 「でもね、読んでるうちになんだか涙が止まらないの…」
ミドリ 「…」
あかね 「藍、とっても辛かったんだろーなぁって思った。でも、それって誰にも言えなかったのよね、きっと。」
ミドリ 「…」
あかね 「誰にも言えないから、自分で永遠に自分の口を塞いでしまったのかな…。」
ミドリ 「…」
あかね 「帰るね…。また、来る。」

あかね、立上がりカメラに向かって背を向けて歩く。数歩、歩いたところで立ち止まり、振返る。

あかね 「藍の手紙、最後に追伸があるの。P.S.って。」

ミドリ、ちょっと見上げる。

あかね 「何か書こうとしてたみたい、でも何も書いてなかった…。P.S.ただそれだけ…。」
ミドリ 「…」
あかね 「その代り、一枚の写真が入ってたわ。」

映像に3人の中学生の頃の写真が映し出される。そこには屈託の無い笑顔がある。

ミドリ 「…これって…。」
あかね 「そうよ、初めて3人で遊びに行ったときの写真。ディズニーランドだったよね。なんだか、3人とも妙に気が合っててさぁ、3人で大はしゃぎしてた。」
ミドリ 「…」
あかね 「あの頃にもどれたらなぁ…。」

去りかける、あかね。ミドリ、小さな声で。

ミドリ 「戻れるよ…。きっと。」

あかね、半身振返り、そのままハケる。照明、ミドリのみシルエットで映す。
ミドリ、ゆっくりと立ち上がりハケに消えて行く。

(作:川村圭/写真:池田景)

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