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BGMクロスフェード。舞台、中央溶暗。中学生時代の藍。
藍 「わぁー、見てみて天の川…。」
セリフと共に音楽フェードアウト。下手、溶暗。中学生時代のあかね。
あかね 「えー、どこどこ…。」
上手、溶暗。中学生時代のミドリ。
ミドリ 「ばかねー、こんな都会の中学校で天の川なんか見えるわけないでしょ。」
藍 「ほんとだってば…、ほら、あそこ、あそこ。」
あかね 「えー、あたし、目が悪いから良くわかんないよ。」
ミドリ 「あ、ホントだ…、へー、あたし生まれて初めて見たよ。」
あかね 「二人とも、ずるいよ。あたしだけ見えないなんてー。」
藍 「いいじゃん、あかねは。今日すっごく大きな虹をみたって、さっき言ってたじゃん。だから、おあいこよ。」
あかね 「虹と天の川じゃ、全然違うよぉ…。あたしだって、天の川なんて生まれてから一度も見たこと無いもん。」
ミドリ 「そう言われてもねぇ…」
藍 「虹だってきれいじゃない。あたしも見たかったなぁ。」
あかね 「…、あたし虹って嫌い。」
ミドリ 「なんでなんで」
あかね 「天の川とかって、そこにあるものでしょ、で、運が良いと見れるでしょ。」
藍 「虹だって、運が良いから見れるんじゃない。」
あかね 「虹は違うの…。ホントはそこに無いものが、突然現れるのよ…。あたしが見たいと思わなくったって。」
ミドリ 「そりゃ、そうだけど…。でも、今でも虹の根元ってどうなってるんだろって考えたりすると、ワクワクしない?」
あかね、ちょっと考えて。
あかね 「虹って見てると、胸騒ぎしない?」
藍 「へぇ、なんで?」
ミドリ 「(考えこむあかねを見て)あかね、ひょっとして怖くなった!」
あかね 「怖くないよ…。」
藍 「あたし…、怖いよ。だって、すっごく、痛そうだし…、自分が消えちゃうんだよ。」
あかね 「痛みなんか一瞬だよ。消えちゃうのだって、怖くない。虹だって消えるもん。それとおんなじよ。」
ミドリ 「…、藍、あたし達に付き合わなくったっていいよ。」
藍 「そんなつもりで言ったんじゃないよ。あたしだって覚悟できてるもん。」
ミドリ 「そんな、ベッドの上の女子大生じゃあるまいし…。」
藍 「みっちゃん、下品…。」
ミドリ 「ゴメン…、中学生のいう事じゃないわね。」
3人、見詰め合って軽く笑い合う。
あかね 「さぁ!思い切って行こうか!」
ミドリ・藍 「行ってみよう!!」
3人再び、見詰め合って、思いつめる。息をそろえ、飛び降り自殺をしようとする動き。目をつぶって大きく踏み出そうとした後、小さくうつむきしゃがみこむ。やさしい音楽入る。
ミドリ 「だめだ…、やっぱり」
藍 「怖いの…、自分が消えることが…。」
あかね 「どうして、翔べないの…。どうして…。」
そして、3人手に大きな柔らかい布を広げながら手を上げていく。その影に隠れるように、中学生風の少年が現れ、ゆっくり倒れる。
中央のスポットライト徐々に溶暗。うつ伏せで少年が倒れている。あかね、ミドリ、藍はBGMにあわせ、ゆっくりと少年の周りを回る。手には真っ赤なバラの花を一輪づつ持っている。花びらを一枚づつちぎり少年の周りに散らしていく。
3人、感情のこもらない声で、
ミドリ 「どうして」
藍 「どうして」
あかね 「どうして」
藍 「私達は、翔べなかったのに…」
あかね 「翔べなかったのに…」
ミドリ 「翔べなかった…」
あかね 「どうして」
藍 「どうして」
ミドリ 「どうして」
ミドリ 「彼は、死んだの」
藍 「死んだの」
あかね 「彼だけ…」
3人 「いいえ…、死んだのは…」
音楽徐々に大きくなり、そして3人遠くを見詰めるように同時に昔を懐かしむようにゆっくりと目を閉じて。同時に再び布を広げていく。音楽はゆっくりボリュームが下がっていく。明かりも徐々に落ちていく。両方とも半分くらいになったところで、コンピュータの起動音
(作:川村圭/写真:池田景)
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