△ 「A1-PANICS!」第4回


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しばらく各自の作業が続く。

敦子 「ねーでもさー、本当にそんな力があるの、このサボテンに」
大須 「も、もちろんですとも!」
敦子 「でもその割には、何も起こらないと思わない?」
大須 「そ、それは…能力が発現するまでの時間には個人差がありますから」
敦子 「じゃあさ、私たちに超能力が備るかどうか、わかんないんだ」
大須 「そうですね。何せ今日一日のお約束ですから…。で、でも、ひょっとしたら、そろそろ一人くらい…」
美咲 「まさかァ。そんなに上手くいくわけないわよ」
大須 「で、でも…」
有川 「あたしもそう思う。現実はそんなに甘くないよ」舞台写真
大須 「し、しかしですね…」
有川 「大体さー、話がうますぎるのよ。潜在能力、しかも自分の願望を反映した能力がポッと出てくるなんて。そんな夢物語が本当にあったら誰もこんな苦労、してませんて」
小川 「全くだよ」
有川 「しんどい思いして燈体吊ったりさ、回路組んだりさー…イザ本番になればなったで胃を痛くしながら操作して…。このサボテンが、本当にそんなすごいサボテンなら、あたしに、自由に照明操れる能力与えてみろってのよ」
小川 「いいねェ、ラクそうで」
有川 「そう。例えばさ、あたしが暗転!って思ったら…」

全暗転。

小田嶋 「バカヤロウ!急に消すな!危ないじゃないか!」
有川 「消してないよ!だってブースに人、いないもん!」
桑田 「ブレーカー、落ちたんじゃねぇか」
有川 「まさか!カモシダ!いる、カモシダ!」
鴨志田 「います…」
有川 「ちょっと客電つけてくれる、これじゃ…」

客電(ホントの)つく。

「…」
有川 「…早いね、カモシダ。ブースに、いたの?」
鴨志田 「イエ…ずっと、ここに」
有川 「え?じゃ誰が…」
美咲 「愛ちゃんじゃない?」
有川 「そうか。愛ちゃーん!」
安永 「ハーイ、何ですか何ですかァ」
有川 「今、ブースにいて、照明おとして…ないよね…」
安永 「ええ。外にいましたけど」
有川 「じゃ一体誰が?」
小田嶋 「回路がイカレてんじゃねーの」
有川 「そんなバカなこと、あるわけないでしょ。コヤ入りして最初にチェックしたもん!アレだって」

有川、燈体さす。パッとつく。

有川 「アレだって」

パッ。

有川 「アレだって」

パッ。

有川 「とにかく、全部、生きてたよ!」

パパパッ。
すべてのアカリがつく。

「…」
有川 「…」
大須 「グフ。グフフ。グフフフフ…」
「…」
有川 「…」
大須 「夢物語?ハ! うまい話?ホ! 現実は甘くない?フ!」
「…」
小田嶋 「…信じがたい思いでいっぱいだが…有川」
有川 「…何よ」
小田嶋 「暑いから、消してくれ」舞台写真
有川 「…」

有川無言で指さす。次々、消えてゆく。

「…」
敦子 「す、すごいっー!!」
桑田 「やったな、有川!」
有川 「あたし…」
岸野 「ホントに、ホントなんだなー…」
大須 「さっきから何度も言ってるでしょうが」
小川 「じゃお前、もう調光卓使わなくても操作できるわけ?」
有川 「…そうみたいね。頭の中で考えるだけで、点いたり消えたりしてるから…」
美咲 「よかったじゃない!これでもう足を使ってフェーダー上げずにすむね!」
岸野 「それどころか覚える必要がないから、どんなフクザツな操作でも一日ありゃできるようになる。お前、照明のプロになりたいって言ってただろ。その能力があれば引っ張りだこだよ!」
有川 「そうか…ワーイ!!」

照明、荒れる。

小田嶋 「落ちつけ!嬉しいのはわかるが、おちつけ!」
有川 「あっゴメン」
小川 「まァ何にせよ、使える能力で良かったな」
鴨志田 「…でも、サボテンがないと、ダメなんですよ…」
岸野 「いいじゃん、必要な時、借りれば。それ位、構わないよな、大須」
大須 「え!?え、ええまあ、たまに、貸す位なら…」
有川 「ホント!ありがとう大須さん!」舞台写真

大須にバックライト

小田嶋 「…成る程…有川の今のキモチは、こんななのか…」
敦子 「まさに"後光がさしてる"んですね」
小川 「まんまやんけ…」
安永 「いいなーいいなー有川さん。私にも早く現れないかなー」
岸野 「愛はどんな力が欲しいんだ?」
安永 「エッ!?わ、私ですか?!そうですね、やっぱり制作ですから、制作として使える力が…」
岸野 「例えば?」
安永 「念じるだけでチラシが折れたり、宛て名が書けたり、切手がはれたり…」
小川 「エライささやかな能力だな」
敦子 「私はもっと派手な能力がいいな」
桑田 「派手っていうと?」
敦子 「空を飛べたり、水中に長くもぐれたり…」
岸野 「お前それじゃオウムか江頭2:50だよ」
敦子 「だって楽しそうじゃないですか」
小川 「俺なら予知能力だな。そしたら宝クジ、ボンボン当てられる」
安永 「それもいいですね」
岸野 「テレポーテーションもいいぞ。一瞬でどこへでも行ける」
有川 「透視でカジノで大もうけとか」
敦子 「テレパシーは?ケイタイいらない」
岸野 「いいねー圏外であわてることもないし、カネもかかんないし」
鴨志田 「…動物と、会話する…」
敦子 「え?動物と会話?…ムツゴロウみたいに?」
鴨志田 「…もっと、具体的に…」
小川 「具体的にって…天気の話とか、趣味の話とか?」
鴨志田 「(首肯して)家族のこと、友だちのこと、仕事上の悩みや不安…その他いろいろ」
小川 「多分、お前が考えてるほど、ヤツらモノ考えてないと思うぜ」
敦子 「ニワトリなんか、3歩歩いたら忘れちゃうんだよ」
鴨志田 「…いいんです、それでも」
岸野 「何せケダモノだろー"食う・寝る・ヤる"の…」
美咲 「あんたと同じじゃない」

間。

大須 「アッハッハー、おっかしーこと言う、美咲さん!ホントなんですかァ岸野君…」

ドガッ。大須、桑田に殴り倒される。

岸野 「相変わらずキツイねー美咲ちゃん。そんなんだから嫌われるのよー」
「ヒーー(息を吸いこむ音)」
美咲 「全っ然構わないわ。嫌いな人に、嫌われても」
「ホーー(同上)」
岸野 「いいのかなーそんな言い方して」
「フーー(〃)」
美咲 「それは、お互い様でしょう」
「ゥ・アーー(〃)」

2人にらみ合う間。

小田嶋 「いい加減にしろ!!今、何時だと思ってる!!」
敦子 「小田嶋さん!」
小田嶋 「明日は初日だぞ!遊んでるヒマなんかないんだ!大体岸野!」
岸野 「何だよ」
小田嶋 「お前、ゲネだって最後まで観てないだろう!どうすんだ、ゲネ観て決めるって言ってたとこ!」
岸野 「あったっけそんなトコ」
小田嶋 「踊りだよ、ラストの!あそこの照明、決めてないだろうが!」
有川 「そうだよ、決めてよ早く」
岸野 「そっか。悪ィ」
小田嶋 「全員仕事に戻れ!全く、バカ話してる程、ヒマじゃないんだぞ、俺らは!(全員散ってゆく)ああ、愛!」
安永 「ハイ」
小田嶋 「あと15分でメシにするから、そろそろ用意してくれ」
安永 「あっハイ。でも…越智君がまだ…」
小田嶋 「いい、サルは。イザとなったらカップメンでも食わせるから」
安永 「じゃ、じゃあ…」
岸野 「悪いけど踊りんとこ、さいしょに組んだヤツでやってみてくれる?カモシダ、音出して。有川も…そうか、もうここで出来んのか。便利だな」
有川 「まぁね」
岸野 「桑田、いいか、作業してる前で動いても」
桑田 「構わん」
岸野 「小川、敦子、美咲、越智…はいないのか。しょーがねーな。じゃいいや3人で」
小田嶋 「じゃ行きまーす、ラストの踊り。ハイ!」

音入る。
踊る3人。

岸野 「ウーン。有川、もすこし切りかえ早くできる?」
有川 「できるよ。こうでしょ?」

パッパッパッ。

岸野 「いいね。明かりは、これで決まりにしよう。それにしても…相変わらずヘッタクソやなーアッコ」
敦子 「すみましぇーん。どうしてかなァ…」

踊り。途中で止める。

岸野 「ストップ!今んとこだよ、ズレてるの。足が、特に」
敦子 「おっかしーな…こうですよね」
岸野 「違う。こう…」
敦子 「エエト…こう来てこう、こうして…アレ…?」

ステップをさらう。その後ろで異様に目を光らせている桑田。

岸野 「いい加減、覚えろよ。明日しくじったら外すぞ、マジで」
敦子 「そんなー…。じゃあお願いします、もう1回だけ踊らせて下さい」
小田嶋 「稽古してるヒマなんぞないわ」
敦子 「だって仕込みの準備で、ここのところずっーと練習してなかったんですよ!ね、小田嶋さん1回だけ…お願いします」
小田嶋 「しょうがねーな、1回だけだぞ。…カモシダいいか」
鴨志田 「ハイ」
小田嶋 「有川いいな」
有川 「ホーイ」
小田嶋 「行きます。ハイ」

音楽。
踊り始める直前に桑田乱入。
おどろく人々を尻目に見事に踊り切る。
拍手。

敦子 「すごいすごいすごーい!!」
美咲 「桑ちゃんこんなに踊り、上手かったっけ?全然知らなかった!」
桑田 「…」
美咲 「大丈夫?顔が青いよ」
桑田 「…何も、覚えてないんだ」
小田嶋 「え?何もって…だってたった今…」
桑田 「音楽が鳴ったのまでは、覚えている。けど…その後の記憶がまるで、無い。…俺は、踊ったのか?本当に」
小田嶋 「どういうことだ?これは…」
有川 「ねぇひょっとして、これが桑田君の能力なんじゃない?!」
桑田 「え…?」
岸野 「そうか!おーい大須!」

大須、袖から出てくる。

大須 「な、何でしょう」
岸野 「今、桑田がすっげー上手に踊ったんだよ。今まで何の練習もしたことのない奴が…。これってもしかしたら桑田の潜在能力なのかな?」
大須 「そ、そうですね、それは充分、考えられます」
桑田 「そんな…」
小川 「スゲーじゃん!これでまた一人、能力が発現したってワケだ」
桑田 「おれは…いらないよこんな能力」
敦子 「なんで?!すばらしい能力じゃないですか!」
桑田 「そりゃ役者やってる奴にすれば、必要な力かもしれない。でも、でも俺は裏方だ、こんな力、あってもしょうがない」
敦子 「だったら役者もやってみたら?すっごい光ってましたよ桑田さんの笑顔!」
桑田 「…俺は…笑いながら…踊ったのか?」
敦子 「ええもう、こぼれんばかりのスマイルで…」
桑田 「ををを!!」

桑田、カベにアタマを打ちつける。

小田嶋 「おちつけ桑田!」
小川 「笑顔で踊る自分を想像するのはさぞ、辛いだろうがおちつくんだ!」
美咲 「そうよ!それに、かっこいいじゃない、歌って踊れる大道具なんて」
桑田 「歌までは、歌っとらん」
美咲 「ご、ごめん」
敦子 「とにかく、どんな能力でもないよりはマシ!そうですよね?」
「そうそう」
有川 「踊りたくなきゃ踊らなければいいのよ。そんな深刻に考えないで」
「そうそう」
敦子 「でもホント、さっきの桑田さん、カッコよかったー」
桑田 「バカヤロウ」

笑い。
そこへ石焼きイモ
踊る桑田。
間。

小川 「…いたよな、確か、こういうの。…そうだ"いなかっぺ大将"の」
「だい…」
桑田 「言うなあ!!そ、その名前を俺の前で、言うなァァ!!」
岸野 「…まさか、こんなことになるとは…」
桑田 「…欲しくねぇ…欲しくねぇよこんな力!」
大須 「わ、わかりますッそのお気持ち、僕、すっごく…」
桑田 「お前と一緒にするなァ!!」

走り去る桑田。

美咲 「桑ちゃん!」
敦子 「私、見てきます」
小田嶋 「頼む。他の奴は、メシにしよう。全く…全然進まないぜ今日は」
安永 「じゃおにぎり、持ってきます」
美咲 「手伝うよ愛」
安永 「すみません」
有川 「じゃ私、飲み物、用意するね」
小田嶋 「コップ、コップ…まだ洗い場か」
大須 「私も何かお手伝いを…」

みな去る。

(作:中澤日菜子/写真:広安正敬)

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