最終補綴

 歯周基本治療中あるいは歯周外科治療中に暫間補綴を行っていた部位は、メインテナンスに移行する前に最終補綴(=さいしゅうほてつ)を行います。

 最終補綴はよく歯周補綴という用語で呼ばれます。歯周補綴の定義はいろいろあり、研究者や臨床医によって異なると思います。プラークコントロールを考慮した補綴も歯周補綴に包括されるでしょうが、歯周に関係のない補綴物(ブリッジや義歯など)であっても、プラークコントロールは考慮しています。
 歯周病に罹患した歯の特徴のひとつは、歯槽骨が吸収していると歯肉が健康を回復しても、見かけ上の動揺は大きいということが挙げられます。

 そのような歯が単独では咬合(かみ合わせ)に参加できないとしても、ブリッジ等によって咬合に参加できるようにする補綴を、ここでは歯周補綴と定義します。
 歯は通常、頬(唇)舌的に動揺度が大きくなります。したがって、臼歯部のみ、あるいは前歯部のみで固定しても、その効果はあまり得られません。臼歯部と 前歯部あるいは反対側の臼歯部まで固定を行うことで、上記のような歯を咬合に参加させることができます。その点ではブリッジの方が義歯よりも有利であり、 可能であればブリッジで最終補綴を行うべきです(反対側へまたがるタイプのブリッジをクロスアーチブリッジといいます)。義歯でしか最終補綴を行えない場 合は、歯を固定するタイプのデザインを考慮すべきです。

 

ブリッジによる最終補綴での注意点

 ブリッジによる歯周補綴後の長期観察を行った研究のうち、NymanとLindhe(1979)は5〜8年の観察期間においてブリッジが失敗した例は、歯周組織が悪化したためではなく部分被覆冠の脱離、ブリッジの破折、支台歯の破折など、技術的あるいは生物物理学的な問題が原因であることを示しました。


(NymanとLindhe(1979)より改変)

 ※カンチレバーとは延長ブリッジのことです。

 また、Glantzら(1993)はブリッジ装着後5年目および15年目の状態を調査し、51.7%がブリッジの破折や脱離によって、ブリッジの部分除去あるいは完全除去に至ったことを示しました。

ブリッジを除去した理由(%)

ブリッジの破折と脱離 51.7
わずかな破損 3.2
う蝕(虫歯) 9.6
特別な理由や記録がない 35.5

完全除去(n=25)
部分除去(n= 6)

(Glantzら(1993)より改変)

 また、失敗の割合は5年後(1974年)よりも15後(1989年)で飛躍的に増えていました。


(Glantzら(1993)より改変)

 RandowとGlantz(1986)もブリッジ装着後8年目および14年目の状態を調査しており、カンチレバーで延長している部分の最後方支台(土台になっている歯のうち、一番奥側の歯)が失活歯(=しっかつし; 歯髄が死んでいる歯。平たく言えば、神経が死んでる歯)である場合は生活歯(=せいかつし; 歯髄が生きている歯)である場合よりも失敗(歯の破折)の割合が高くなることを示しました。


(RandowとGlantz(1986)より改変。
カンチレバーの後ろの数字は延ばした歯の数)

 これらのことを踏まえて、特にクロスアーチブリッジを行う際の注意点と対処法を挙げます。

 もし、このような条件が満たせないならば、ブリッジと義歯を組み合わせたり、インプラントで最終補綴を行うなど、他の選択肢も検討すべきであると思われます。

 

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最終更新2013.1.10