歯周疾患の分類

歯周病の概要

 歯周病は次のように定義されています。

 歯周組織にみられる疾患群の総称。狭義では歯肉炎、歯周炎および咬合性外傷が相当する。さらにプラークに起因する歯肉炎、歯周炎のみをさすこともある

 ここではプラークに起因する歯肉炎と歯周炎について説明します。

歯肉炎

 健康な状態から歯肉に近いところのプラークが付着したままになると、2〜3日で炎症が起き始め、10〜20日で歯肉炎(=しにくえん)が確立されます。これは歯肉に限局した炎症で、歯と付着している歯肉線維や歯槽骨は破壊されていません。

 歯肉炎になったとしても、プラークを取り除けば、また元の健康な状態に回復します。

 

歯周炎

 プラークが付着してから約1ヵ月後、歯肉線維が破壊されたり、歯槽骨の吸収がみられ、歯周炎(=ししゅ うえん)に移行するものがあります。ただし、全ての歯がそうなるのではなく、あるものは歯肉炎のまま移行します。歯周炎になると、もとの健康な位置に戻す ことはできません。現在の歯周治療では再生療法も行われていますが、症例が限られています。破壊により歯周組織が減少した位置で、歯肉の健康を回復するこ とになります。

 歯肉炎と歯周炎はともに歯周ポケット(歯と歯肉の境目)をプローブ(診断の項目参照;歯周ポケットを測定する器具 )で擦過すると炎症により、出血してきます。歯肉炎と歯周炎の違いは付着の喪失歯槽骨の吸収があるかどうかです。

 

歯周ポケットの分類

 歯肉炎の場合、歯と歯肉の付着部は破壊されておらず、歯肉が腫脹する(腫れる)ことで、見かけ上、歯と歯肉の境目が深くなります。これを仮性ポケット(歯肉ポケット)といいます。歯周炎になると付着の喪失により、実際に歯と歯肉の境目が深くなります。これを真性ポケット(歯周ポケット)といいます。真性ポケットはさらに、ポケットの底部が骨縁(=こつえん; 骨の一番高い位置にある部分)よりも上にある骨縁上(=こつえんじょう)ポケットとポケットの底部が骨縁よりも下にある骨縁下(=こつえんか)ポケットに分類されます。

 歯周ポケットの分類は、歯周外科手術法の選択に重要な意味を持ちます。

 

歯周ポケットと歯肉退縮

 歯肉に炎症が起きる幅はプラークから約2mmの範囲です。歯肉の厚い部分(奥歯や歯と歯の間など)は歯肉の内側だけが炎症に巻き込まれるので歯周ポケットになりますが、歯肉の薄い部分(特に前歯側)は歯肉全体が巻き込まれるので歯肉退縮(=しにくたいしゅく; 歯肉が下がって根が露出した状態)となる場合があります。どちらも原因はプラークですが、歯肉の厚さの違いによって歯肉の外観は異なります。

 

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最終更新2012.12.28