2024年10月のミステリ
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山手線が転生して加速器になりました。
光文社文庫 2024年 松崎有理著
あらすじ
短編6編プラスおまけと年表付き近未来小説
パンデミックが発生し、それぞれの家族に不幸が起こるという大惨事でたぶん人類の数は半分くらいになる。
収束するのに特効薬はなく、密はあかんと東京ほか大都会は放棄され人類は生き残るため地方、離島に分散する。
パンデミックが一応治まったあとも、リモートやドローンの配達でひとは生き残っている。
その時、科学者は思いつく。不要になった山手線ってぐるぐる回っているから世界最大の加速器になるんちゃう?
「山手線が転生して加速器になりました。」
「未来人観光客がいっこうにやってこない50の理由」
「不可能旅行社の冒険――けっして行けない場所へ、お連れします」
「ひとりぼっちの都会人」
「山手線が加速器に転生して一年がすぎました。」
「みんな、どこにいるんだ」
おまけ「経済学者の目から見た人類史」+作中年表
感想
加速器ゆーたらちびさぼが大学時代にタンパク質の結晶化とかへちまとかで播磨のスプリングエイトspring-8に2回行ってたなあ。
と、なつかしく思って読むことにしたんやけど、「フェルミのパラドックス」とか私の頭ではまったく理解できない。
読むの無理かなあ、おこがましいなあ・・・と哀しく思う。
それでもドラマ『全領域異常解決室』で藤原竜也が『わからないものを、わからないまま、受け入れる』とゆーてはったなあと読み進めることにする。
AIはともかく、素粒子、タイムマシン、ダークマター、ブラックホールとか面白いけど、目の前の危機『ウィルス』すら撲滅でけへんのに
それ、いったい、なんの役にたつの?という科学領域に嬉々として立ち向かうひとびと。
面白かった。「みんな、どこにいるんだ」のタコさんが好き。世界で収穫される蛸の半分は日本人が食べているんやって。
そして親戚かと思うイカとタコは、生物としては人と鳥よりも離れているらしい。びっくり。
人型やない理解不能の異★物もいい。
★★★★
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笑う森
新潮社 2024年 荻原浩著
あらすじ
5歳の真人(まひと)が神森(かみもり)で行方不明となる。一週間後生還した真人は「クマさんが助けてくれた」と話す。
クマさん??? ASD(自閉症スペクトラム障害)なのでなかなか意味がつかめない。たいして痩せもせずどうやって生きていたのか。
よかった。よかった。めでたしめでたしやねんけど、
どうして?どこで?覚えたのか「なくようぐいすへいあんきょー」とか「すいへいりーべぼくのふね」とか言うのだ。
しかもこだわりの強い真人の好き嫌いもなくなっている。ひとが変わったみたい。
「捨てちゃんちゃうの」とかネットでバッシングを受けているシングルマザーの兄嫁岬のためにも、義理の弟冬也はネットを駆使し謎の一週間を調べ始める。
感想
圧縮された
「そして、バトンは渡された」
みたいなお話やった。
色々深刻な事情ありながらユーモアのあるファンタジー。
趣味の会の会員さんの幼い息子さんが自閉症とか漏れ聞いた時に、年配の会員さんが
「そういう子をだいじに育てたらその家は繁栄するねん」と言われる。
繁栄、、、、うーんひとりっ子みたいやけどなあと思いながらも、神さんの子供ってことなのかもしれないと思う。
★★★★
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難問の多い料理店
集英社 2024年 結城真一郎著
あらすじ
デリバリ専門の料理店のオーナーシェフは謎多き人物。であるが名探偵だった。
の6話からなる連作短編集 メニューがスープなのは汁(知る)だからとか。
「転んでもただでは起きないふわ玉豆苗スープ事件」アパート火災
「おしどり夫婦のガリバタチキンスープ事件」指が二本ない
「ままならぬ世のオニオントマトスープ事件」 空き巣に入った男の言葉「はめられた」
「異常値レベルの具だくさんユッケジャンスープ事件」10回連続デリバリの配達員が同じ
「悪霊退散手羽元サムゲタン風スープ事件」空き室に置き配が続くのは何故?
「知らぬが仏のワンタンコチュジャンスープ事件」住人が消えた
感想
デリバリ配達員(ビーバーイーツ)を名探偵の「イレギュラーズ」とする
ってのが面白かった。
機動力はあるし、深夜に自転車で走っていても怪しまれないもんね。個人情報通やろし。
四話目の「異常値レベルの具だくさんユッケジャンスープ事件」と
五話目の「悪霊退散手羽元サムゲタン風スープ事件」がいいな。
「悪霊退散手羽元サムゲタン風スープ事件」は、もうひとつのところで売れない漫才師の内「それで?」とか「なんでやねん」と
合いの手を入れる方がビーバーイーツの配達員をしている。って話。そのコンビのネタはかなり個性的というかマニアックらしい。
読み終わって思うのは、昔々親戚や近所のおばちゃんたちが「男は(だんなさんは)手の中で機嫌ええようにうまいこと転がしたらええねん」と言ってたなあってこと。
最終話には
「事実というものは存在しない。存在するのは解釈だけである」
(ニーチェの言葉とか)があった。 なるほどねえ 覚えとこ。
★★★1/2
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詐欺師と詐欺師
中央公論新社 2024年 川瀬七緒著
あらすじ
世界をまたにかけて暗躍する詐欺師藍は、まだまだ発展途上の詐欺師みちると知り合いみちるの復讐に手をかす。
感想
女二人の相棒もの。シスターフッド。
とはいえ、なにゆえ藍がみちるを助けるのさっぱりわからない。暇つぶしなのか気まぐれなのか。もしかしてLGBTQなの?
海外では
「哀惜」
のマシュー・ヴェン警部とか
「ストーンサークルの殺人」
のフリン警部とかはGとLみたいやけど日本ではまだまだストレートに描けないのか・・・。LGBTQをストレートに書く? 変かな。
というもやもや感もあって、文章があんまり面白くない。ハードボイルド風としてもユーモアのかけらもない。合わないみたい。
でも私は「衝撃のラスト」のためにがんばった。が、そらこの結末は想像もしてなかったけど
コレか。。。アレと同じなのね。米国でリメイクも作られた映像作品と結末が似ているとは。ちょっとがっかり。
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