2022年11月のミステリ 戻る

鳩の撃退法 
小学館文庫 2014年 佐藤正午著 上下
感想
直木賞も受賞した作家、津田伸一は10年1作も書けていない。たえず金欠で女の家に寄宿しながら転々としている身の上だ。
ファミレスでちょっと言葉を交わした男がその夜一家で行方知らずになったことを知り、「袖振り合うも多生の縁」と題材にして小説を書き始める。
推理というか妄想というか、その書いている小説は現実とリンクし国家の根本を揺るがす「贋金」というものと「郵便局員の失踪」と縁を持った人、縁を持ちたくないひと達をからめていく。
 
デリヘルの社長がぐだぐだしゃべるところが、何かに似ている。・・・作家エルモア・レナードのレナード・タッチに似ている気がする。
「あれは山あり谷あり森あり荒野あり砂漠ありの広大な土地やから似合うんであって、このせせこましい島国ではもうひとつあわんな」とか、「このひとの小説には魅力のある人がいっこもでてけーへん」とか、「こんなにたくさん頑張って読んで、風呂敷広げていったまま収束せず拡散して終わるんちゃうやろな」
という危惧は杞憂に終わり、金は天下のまわりものと線はみごとにつながる。あっぱれ。ひとびとにはそれぞれ役割があったの。
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ストーンサークルの殺人 
ハヤカワ・ミステリ文庫 2020年 M・W・クレイヴン著 東野さやか訳 572頁
英国推理作家協会ゴールド・ダガー賞
感想
ピーター・ラビットで有名な湖水地方を含む英国のカンブリア州には先史時代から青銅器時代までのストーンサークル、直立した巨石、ヘンジ、モノリス、墳墓塚が多数あるらしい。
そのストーンサークルのひとつで焼死体が見つかる。三件目だ。
ワシントン・ポーとティリー、リード、そしてフリン警部のチームはカンブリア州警察とは別働隊として捜査にかかわる。
他人に頓着しないポー、箱入り娘のティリー、陽気なリードの三人は型破りなタイプで、常識人のフリン警部ひとりが気を揉み上やら横やらの調整に走っている。
 
落ちたパンくずを拾うように、手がかりをひとつづつ追っていく刑事ものが好き。
でも読み終わっても、ちょっとかなしい。
共犯者は盲点やったわ。なるほど。こんだけミステリを読んでもちっとも学ばない>ウチ。
分析官のティリーもギフテッドなんやけど、他の人とテキトーに合わせることが難しいタイプらしくいらん苦労をしている。
最近のドラマでは韓国の『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』とか、仏蘭西のドラマ『アストリッドとラファエル 文書係の事件録』とかかな。
(どちらのドラマもギフテッドは美女なの)
まわりの寛容さと才能への理解があり、自分の居場所を見つけ踏み出していく。ティリーが四輪バギーの操縦ができるようになるところがかわいい。
 
何ゆえこの本を読みたいと思ったのか、まったく思い出せない。調べるとシリーズ物らしい。
「ま、いいか」と思って次の作品を図書館で予約しようとしたら、もう予約済み。れれれ?
どうやら三作目の「キュレーターの殺人」を新聞の書評で読んで、一作目から読もうと思ったらしい。(らしいって、どうなのよ)
「ま、いいか」やないねん(**) 
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