2023年6月の映画  戻る
カード・カウンター THE CARD COUNTER
2021年 米国/英国/中国/スウェーデン 122分 
監督・脚本 ポール・シュレイダー
キャスト オスカー・アイザック(ウィリアム・テル)/ティファニー・ハディッシュ(LL ラ・リンダ)/タイ・シェリダン(カーク「レディ・プレイヤー1」)/ウィレム・デフォー(コンサルタント ジョン・ゴード少佐)
メモ 2023.6.29(木)シネ・リーブル梅田
あらすじ
2001年9月11日のアメリカ同時多発テロから起こった集団ヒステリ、グアンタナモ収容所(キューバのグアンタナモ湾)ではテロリストとして収容された者たちに尋問と言う名の拷問と辱めが行われていた。事は発覚し主人公はその責めを負わされ軍刑務所で8年半服役した。
「私は貝になりたい」と同じく命令を下した上官もそのまた上官も罪を逃れている。
感想
主人公はあちらこちらのカジノを渡り歩き、カジノから出禁にならない程度に勝って細々と生活をしている。
モーテルに泊まる時はトランクに入れて持ち歩いているシーツでベッドもテーブルもランプも覆う。
「何をしてはるんやろ」と思っていたんやけど刑務所のような色のない部屋が落ち着くみたい。
毎日カードゲームで少し稼ぎ車で移動しモーテルに泊まり、次の日はまた別のカジノで勝負する日を繰り返す、まるで修道士のような生活やねん。
 
カードゲームのことはなんもわからんへんけど、しょっぱなにブラックジャックの説明がある。
ブラックジャックは店との勝負なんやね。「レインマン」でもあったように出てきたカードの数字をカウントして勝負するか流すか決めるらしい。
それをカード・カウンティングという。
ポーカーはカードだけではなく対戦相手を観察しはったりか推測するゲーム。
 
ギャンブルのシーンよりもゲーム以外のシーンで、見ているこっちの緊張が続く。
なんでかなあと思ってたんやけど主人公はずっと青年カークを観察しこころを推し量っていたんやね。
自分が8年半入っていた軍刑務所に行ったり、「熱に浮かされて勝負するんやない」と教えたり、自分の目的のない彷徨っている生活を見せつけたりと
青年を揺さぶり勝負をかけるためカードカウントしていたのか、とわかる。なるほど。題名の『カード・カウンター』ってそういう意味やったのか・・・
 
ギャンブラーと出資者の橋渡しをするラ・リンダ役の俳優さん(ティファニー・ハディッシュ)は黒人の様なネイティブアメリカンの様な、海千山千に見えたり少女に見えたりと不思議なひとやった。観音様なのかもしれない
 
新聞のインタビューでポール・シュレイダー監督が「何本もの映画を撮っても結局は1本の映画を作っているに過ぎない。新しい器を探し出してきては古いワインを注ぐようなもの」と言われてました。贖罪と魂の救済は長年追求し続けたテーマとか。
「描きたいのは原罪のような重大な罪を犯した個人の心と、罪をどう償うかだ」だそうです。
そう聞くと主人公とラ・リンダがデートするライトアップした公園は極楽で(俯瞰して見せている)、カジノのゲーム会場は地上の亡者の集まりのように見える。
そういうしんきくさい重いテーマながらエンターティメントとしても楽しめる映画にしているのがたいしたもんやと思う。
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青いカフタンの仕立て屋 LE BLEU DU CAFTAN
2022年 フランス/モロッコ/ベルギー/デンマーク 122分 
監督・脚本 マリヤム・トゥザニ(「モロッコ、彼女たちの朝」)
キャスト ルブナ・アザバル(ミナ)/サレ・バクリ(ミナの夫ハリム・仕立て屋)/アイユーブ・ミシウィ(ユーセフ・若い弟子)
メモ 2023.6.19(月)シネ・リーブル梅田
感想
モロッコの大西洋に面した古都サレでカフタンという伝統衣装を仕立てている職人のハリムと妻のミナ、そして弟子のユーセフ。
カフタンはサテンやベルベットの生地を服に仕立て、緻密な縁飾りや刺繍を施した衣装。ハリムと弟子のユーセフは糸をより、手仕事で縫い上げている。
みごとな指先。
この工芸作品にも斜陽がせまっている。小さないちじくの飾りは職人が亡くなったので作れるひとがいなくなってしまった
ユダヤ人からその技術を教えられた職人が亡くなってしまって・・・というのにびっくり)
若い女性はなんだか古くさい服と思っていたり、ほかの客は「刺繍はミシンでしても見分けがつかない」とか「もっと早くできないの」とか言いたい放題。
接客と生地をおろす商人との交渉を担当しているしっかり者の妻ミナは「夫は機械じゃないの!」と客を追い払う。
 
大阪駅や天王寺駅、新今宮駅でスカーフをかぶったムスリムのひとをみかける。イスラム教国は家父長制らしいけどあんまり男性の威圧を感じない。
イスラム教国でもとんこつラーメンオッケの国もあるらしいし、まあ家族で日本に観光にきはるんやからリベラルな家なんかなあ と思ってこっそりみてる。
この映画のカフタンの職人さんハリムも穏やかで優しげなひとやねん。ついでに言うととってもハンサム。
「ミナとハリムはお見合いで結婚しはったんかな」と思っていたら違っていてさもありなんと面白かった。
ミナは夫のハリムをとっても大切にして誇りに思っている。ハリムが利用されたり騙されたりトラブルに巻き込まれたりしないかと心配でならない。
ミナが着替える時にいつもハリムが後ろを向いているので「女の人のヌードは見たくないんかな」と思っていたけど、違った。
ハリムは自分が(こんなで)ミナの病に気づけなかったのを恥じてたの。
 
弟子のユーセフは「8歳から自分で生きてきた」「お金なんか大事じゃないっ」って言う。どうやって生きて来たのか、この技術をどうやって身につけたのか。師匠の職人さんは亡くなってしまったのか。ここまでどんなにか厳しかったかと思う。
 
色々あっても色々言っても寛容やねん。ラジカセで大音響を流している男性もみんな許している。
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ター TAR
2023年 米国 158分 
監督・脚本 トッド・フィールド
メモ 2023.6.13(火)なんばパークスシネマ
あらすじ
ベルリンフィルの首席指揮者リディア・ター。頂点に上り詰めた。
それでも自分を律し後進を育て、スポンサーのご機嫌をとり、家族にも時間をさき、作曲もしている。
感想
最後が衝撃的やった。
ジリ貧と思えるオーケストラの生演奏の可能性、未来を示唆しているとも言える
 
映像は幾分平坦やねんけど、映画は音楽に身を捧げている指揮者ターを描いている。
歯に衣をきせないものいいで反発をまねき、ベルリンフィルのカラヤンのごとく若手の抜擢でオーケストラの反発をくらいと音楽至上主義者の自分がまねいてしまった災難がターに襲いかかる。
その中で作曲のために借りたアパートの隣家のエピソードが一番ひっかかる。
老女は頑固で施設に入りたくないっていいはったんかな。結婚している妹は逃げだし未婚の姉が面倒を見てたんかな。
その壮絶な生活の中でも隣人が、ターの音楽を騒音ととらえていなかったことを知る。
芸術全般に言えることなんやろうけど、作者の人間性と作品は別なのどうなの。
(うちは見る目がないからおもしろおかしく人間に目がいっちゃうのね)
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リトル・マーメイド THE LITTLE MERMAID
2023年 米国 135分 ディズニー
監督 ロブ・マーシャル
メモ 2023.6.9(金)なんばパークスシネマ
あらすじ
海の王様トリトン(ハビエル・バルデム)の末娘七女アリエル(ハリー・ベイリー)は難破船の物資をせっせと秘蔵している。内緒にしているのは「人間はおまえのママを殺した」とパパに怒られるからだ。
もう泳ぐのには飽きた。地上に上がって人間を知りたくてたまらない。
(陸上に上がるとアリエルは背が低く少女に見える。パパに反抗してたのはお姉さんたちが言うように中二病やったのか・・・)
感想
海の中で人魚のアリエルが尾ビレを上下させてスイスイ泳ぎ髪の毛が揺れる。すごいわ
「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」と同じくデジタル処理なんかな
これを「実写版」というんやろか? 
海の幸たちの輪舞や乱舞に圧倒される。日本のアニメーションは大丈夫なんかな?心配になる オリジナルのキャストとストーリーで攻めるのかな。