2020年7月のミステリ 戻る

ナインフォックスの覚醒 NINEFOX GAMBIT
ローカス賞
創元SF文庫 ユーン・ハ・リー 赤尾秀子訳 412頁
あらすじ
ケル、シュオス、ニライ、ラハル、ヴィドナ、アンダンからなる星間六連合は、元は七連合であり
異端とみなされたリオズは三百七十年前に殲滅された。
六連合は高度な数学により構築された「暦法」という基幹システムで成り立っている。
感想
地上戦というか白兵戦から幕が開くねんけどね。読んでも読んでもわけがわからない。
これは科学なのか、魔法なのか。戦さと権謀術数の連続。
SFに疎いのでさやかにわからねど造語とおぼしき言葉の連発。「エキゾチック技術」って何?「優暦」って何? なんで「九尾の狐」なん?
作者の世界観がまったくつかめない。
当然のごとく、自分なりの解釈もイメージもがたがたでひたすら読み進める。。よく日本語訳ができたもんやわ。
ラスト50頁ほどでやっと真実が明らかになってきた。
反省を込めて(涙)巻末の解説と用語集を先に読まれることをお勧めいたします。「九尾の狐」。なるほどね。
 
作中にところどころ現れる僕扶ぼくふ(ロボット/ドローンらしい)がかわいい。
どういう経緯やら意味があるのか三角やったり、蛇やったり、甲虫の形をしてる。黄金の三角形なのか何やらエジプト文明やら殷の時代の紋様みたい。
僕扶は「サイレント・ランニング」のデューイ、ヒューイ、ルーイみたいにこっそり自分たちだけでおしゃべりするの。
僕扶たちと主人公のひとりチェリスが連続ドラマ(韓流なんかな)を楽しむシーンが楽しい。
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丸の内魔法少女ミラクリーナ 
角川書店 村田沙耶香 210頁
あらすじ
「丸の内魔法少女ミラクリーナ」大人になりOLの今も魔法のコンパクトで変身!
「秘密の花園」実らなかった初恋の行方
「無性教室」思春期の高校で性別を明らかにしない時代
「変容」人類は密かに少しづつ変化、進化、退化しつつあるのでは。それは何故。
感想
ほぼ無害ながら、ちょっと「いっちゃってる」人と近未来世界のお話。
えぐいのか無味無臭なのかわからんわ。
ちょっぴりSFっぽい「無性教室」がよかったな。かたつむりみたい。
中性、男性、女性、両性、そしてストレート、ゲイ、バイの束縛はなく「無性」なの。「個」なん。
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欺瞞の殺意 
原書房 深木章子(みきあきこ)著 277頁
あらすじ
昭和41年(1966年)夏、資産家の楡家で先代当主の三十五日法要が営まれていた。その日に何者かによる殺人が起こる。
感想
よく練られた構成やなあーと感心する。往復書簡の4通目と5通目には引き込まれる。
が、なんだか読んでいてわくわくしない。
40年前の事件が時代がかったミステリ設定の割にあでやかさがないというか、地味。全体に地味。茶色
ハイソサエティの一族にコーヒーと「大学いも」のおやつってどうなん? うちは好きやよ、大学いも。
そやけど明治時代やないねんよ。無理がある、と思う。
加えて悪人も善人も登場人物どの人も魅力がないの凄味がないの面白みがないの。
まあそういうところを狙った作品やないっていうことなんやろうけど。もったいない。
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物体E 
早川SF文庫  ナット・キャシディ/マック・ロジャーズ著
あらすじ
海軍の基地に落ちてきた物体は、大企業(コングロマリット)により秘密裏に研究されていた。
大きなクルミのような物体は宇宙船らしく宇宙人も乗っているがピクリともしない。生きているんだか死んでいるんだか。
感想
最初は地味に話が進むので哲学的なSFやったらどうしようと思っていたところ、突然SFやなくなった。
退役軍人の平時には居場所のない悲哀? と思ったらまた違ってきて。扱うブツはSFなんやけど。
そして最後はSFに戻る。ハッピーエンド・・・なんかなああ。
 
ポッドキャスト(ネット)・ドラマのノベライズだそうです。
主人公は元兵士の警備主任ダグ(ダコタ)。ウチの頭の中ではきびきびしたアンジェラ・バセット。