2002年10月の映画  戻る


サイレント・ランニング SILENT RUNNING

   土星(サターン)          フリーマンとヒューイ    1972年 米国 89分
監督・原案・特撮 ダグラス・トランブル
脚本 デリック・ウォッシュバーン/マイケル・チミノ/ステースティーブン・ボッコ
撮影 チャールズ・F・ウィーラー
音楽 ピーター・シカラ
主題歌 ジョーン・バエズ
出演 ブルース・ダーン(フリーマン・ローウェル)/シェリル・スパークス(ドローン1号・デューイ)/マーク・パーソンズ(ドローン2号・ヒューイ)/ラリー・ウイセンハント(ドローン3号・ルーイ)/クリフ・ポッツ(ジョン・赤)/ロン・リフキン(マーティー・バーガー・白「交渉人」)/ジェシー・ヴィント(アンディ・紺)
メモ 2002.10.21 BS2
あらすじ
もっとも好きなSF映画。作家の我孫子武丸氏が
「腐蝕の街」でほんのちょっとだけ登場させている。

21世紀、貧困も失業も病気も無くなった地球はをも失う。かつてのを死守しているのは宇宙空間に浮かぶヴァレーフォージ号の巨大な6基のドーム。は4人の乗員と3台のロボットに守られている。しかしこの計画が始まってから8年がたち乗員達は毎日の生活に飽き飽きしていた。植物学者のフリーマン(ブルース・ダーン)を除いて。そこに船団本部バークシャーから「計画は中止する。ドームを爆破して地球に帰還せよ。」という命令が入る。フリーマンが止めるのも聞かず任務に従い爆破を始める3人の乗員達。地球に帰れるのが嬉しいのだ。しかし、次々とドームが破壊される音で元々偏執的なほどに固執していたフリーマンは変調をきたす。を守るため同僚の1人を殺害し、後の二人はドームと共に船から切り離して爆破させる。船団本部には「制御がきかない」と告げ土星から離脱し3台のロボットと共に逃亡するのだ。

ヴァレーフォージ号とただ一つ残ったドームは土星の外輪・小惑星帯に突入し、足が挟まれて避難が遅れたルーイ(ドローン3号)を失う。フリーマンは残ったデューイ(ドローン1号)とヒューイ(ドローン2号)に森の世話の仕方を教えポーカーを教え孤独な暮らしに耐える。しかし3人の仲間を葬ったフリーマンはさいなまれ始めていた。そしてバチがあたったかのようにが枯れ始める。フリーマンは手を尽くすが原因を解明できない。しかもあわてたヒューイがカートにはね飛ばされ負傷してしまう。そうこうする内に母船バークシャーがいらん捜索の果てにヴァレーフォージ号を見つけてしまった。弱り目にたたり目。せっぱつまったフリーマンはやっとの事で「生物には太陽光がかかせない」のに気づく。暗闇に隠れていたため光が足りなかったのだ。ライトで光をあて森を救う。しかし、残された時間は少ないのを知る。

自分の役割は終わった事を感じフリーマンは「(がんばったんやけれど)思ったようにはいかなかったんだ。元気でな。」と森の世話をデューイに託す。そしてドームを切り離しお前は足手まといになるから俺と行こうとヒューイと共に、自爆する。ヒューイに最後に語ったのは「子供の頃ビンに手紙を入れて海に流した。誰か拾ったかな。」。。。。またしてもちょっと泣く。

感想
せつない。胸が詰まる。デューイをはじめとしてロボットのヒューイ、ルーイがかわいくけなげなんです。
ダグラス・トランブル監督は、画家の母、発明家の父を持ち美術を専攻した方だそうです。NASAやアメリカ空軍のために教材や宣伝用の宇宙映画を製作していて、キューブリック監督の目にとまり「2001年宇宙の旅(1968年)」の特殊効果担当(スペシャル・エフェクト)4人の内のひとりに抜擢される。3年間クライマックスの光の洪水シーンにかかりっきりになり、「アンドロメダ(1971年)」の特殊効果をへて初の監督作品が本作「サイレント・ランニング(深く静かに潜行せよ)」
「2001年宇宙の旅(1968年)」では土星のわっかがうまく作れず木星(ジュピター)になったそうですが、土星(サターン)はこの作品で完成されている。

  3基のドームが見えるヴァレーフォージ号

この映画を好きな理由は、一つ目に宇宙船にくっついた6基のドームの造型がいい。宇宙空間の森というのは「天空の城ラピュタ」も影響を受けていると思う。宇宙船内部はセットではなく老空母ヴァレーフォージ号を使っているそうです。

  ヒューイ、デューイ、ルーイ

二つ目はロボットのデューイ、ヒューイ、ルーイ。元々はドローン(蜜蜂)1号、2号、3号だったのをフリーマンがドナルド・ダックの手に負えない三つ子の甥の名前をつけるんですね。中にはベトナム戦争の帰還兵の方とかが入ってはったらしい。お互い会話をかわし結託してカードゲームをするもんでフリーマンは歯がたたない。フリーマンの姿が見えたら、相棒をこづいたり、ルーイの死を悼んだり、命令を待っている間に足でリズムをとったりとただの鉄のかたまりではないあたたかい感性と魂を感じるロボットなのだ。怪我をしたフリーマンの手術までする。個性的で類をみない。監督の実父ドン・トランブルが手がけられたそうです。




三つ目は、ヴァレーフォージ号から切り離されてただ一基暗い宇宙に深く静かに潜行していく(サイレント・ランニング)ドームの姿がすばらしい。さぼてんも死ぬときにはああいう風に暗闇に潜行していきたい。監督の死生観を感じる。
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乙女座殺人事件 THE JANUARY MAN

1989年 米国 97分
製作 ノーマン・ジュイソン/エスラ・スワードロー
監督 パット・オコナー
脚本 ジョン・パトリック・シャンリー
撮影 ジャーシー・ジーリンスキー
出演 ケヴィン・クライン(ニック「隣人」)/メアリー・エリザベス・マストラントニオ(バーナデット「隣人」)/スーザン・サランドン(クリスティーン)/ハーベイ・カイテル(市警本部長)/ロッド・スタイガー(市長)/ダニー・アイエロ(分署長)/アラン・リックマン(画家エド)
メモ 2002.10.16 BS2録画
あらすじ
カウントダウン最中のNYで11人目の犠牲者が出た。ひと月にひとりの女性を狙う犯人は警察の必死の捜査のかいなく五里霧中。せっぱつまった市長は市警本部長の反対を押し切り、収賄容疑で市警察を辞職した男を呼び戻す。キ○ガイの思考回路はキ印天才にしか推測できんだろうてと。今は命知らずのファイアファイターをしている男は市警本部長の実兄だった。
感想
刑事アクション映画史上もっともカッコ悪い追跡劇。犯人と共に階段をずりずり滑り落ちる。


ニューヨーク市長にロッド・スタイガー、野心家の市警本部長にハーベイ・カイテル、分署長にダニー・アイエロ、現代のホームズにケヴィン・クライン、ワトソン役にアラン.リックマンという豪華なキャスト。それぞれが自己主張してわあわあどなりあったり目だけの演技をしていたりと面白い。アラン.リックマンのボヘミアン振りが光っている。が、それだけ。
ドラマ部分の脚本がまとめきれていないと思う。「ママは俺の方を愛していた」「いや、俺の方だ」という40づらさげての兄弟喧嘩や、弟が兄貴の恋人(スーザン・サランドン)を奪った過去があったり、市長と弟の市警本部長が結託して兄ニックを罠にかけたとかのドロドロした愛憎は、「いったいこの映画にどういかされているのか」問いただしたいところ。犯人の動機を示唆しているんでしょうかねぇ。

仲のいい兄弟が「兄貴、、、、おれ今困ってんねん。」 「そうか。兄ちゃんにまかせとき。なんとかしたる。」って具合にさあ、兄弟の軋轢はほんのギャグにしてもっとコメディっぽくした方がよかったと思う。
犯人が次に悪事を働く日、マンション、階数を「トラックを見てはピカッ」 「若い彼女(市長の娘23才)といちゃいちゃしたらピカッ」と閃いてニックが次の事件を予測していく所がミステリファンには楽しい。「論理的思考」の果てとは思えませんがさぼてんはまったく気にならない。
おすすめ度★★★
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恐怖のワニ人間 The Alligatort People

  患者のマスクが恐い
1959年 米国 75分
監督 ロイ・デル・ルース
脚本 オービル・H・ハンプトン
音楽 アービング・ガーツ
撮影 カール・ストラス
出演 ベバリー・ガーランド(ジョイス・ウェブスター/ジェーン・マーヴィン)/ロン・チャニー Jr.(マノン)/フリーダ・アイネスコート(ホーソン夫人)/リチャード・クレイン(ポール・ウェブスター)
メモ 2002.10.15 WOWOW録画
あらすじ+感想
「ワニ人間!」というスキャンダラスな題名の割にはそれなりに真面目な作品で「誰が悪い訳でもないのに」という哀しい話なんです。特殊メイクが有名な映画らしい。

 幸せなジョイスとポール  半ワニ人間のポール   真ワニ人間のポール

ある病院で看護婦として働いているジェーンは記憶喪失者。その記憶を取り戻すため催眠療法を受けた所「私の名前はジョイス・ウェブスター。ミセス・ポール・ウェブスター・・・」と本当の名前を告げ、ドクター達は奇怪な物語を聞く事になった。彼女は恐ろしく哀しい事件を深層に押し込め封印していたのだ。

ジョイスは夫ポールと新婚旅行の車中でラブラブチュッチュ。そこに電報が届き顔色を変えたポールは「電話を・・」と言いながら小さな駅で降りてしまう。ポールを置き去りにして列車は発車。ジョイスがその駅に引き返してもポールはいない。それっきり行方不明になってしまう。必死でポールを探すジョイスは、ルイシアナ州立大学に名簿があるのを突き止める。名簿には学生だったポールの住所が記されていた。「夫を地の果てまでも捜す」決意のジョイスは、名簿に書かれてあった沼地の小さな町バイユーランディングで列車を降りる。自分の事を何もはなさなかった夫の実家は、沼の中のサイプレシス農場らしい。ワニや毒蛇がうようよする沼地を抜け古いお屋敷を訪ねると、女主人はミセス・ホーソンと名乗りポール・ウェブスターなんて男は知らないとけんもほろろ。そのお屋敷には黒人の執事とメイド、そして白人の下働き男がいた。明日にならないと帰りの列車がないためしょーことなしに女主人はジョイスを一晩泊める。屋敷も庭も沼地も不気味な雰囲気に満ちている。ジョイスがメイドに探りを入れると「ここはテリブルハウス(恐ろしい家)。奥様は悲しみのあまり悪魔と取り引きしている。」と語る。秘密があるに違いないっと確信を持つジョイスだった。

夜中にピアノを弾く男が現れたり、敷地内に療養所を開いているドクター・マーク・シンクレアがなにやらワニを使った実験をしていたり、逃げるポールを追いかけ雨の降る沼地で迷ったジョイスを助けた使用人マノンが、ムラムラしてジョイスにイケナイ事をしそうになってポールにノックアウトされたりと色々あって、ドクターとミセス・ホーソンは「隠しきれない」とジョイスに真実を話す決心がつく(やっと)。ミセス・ホーソンは再婚して名前が変わったけれどポールの母だったのだ(ここ驚くところ)。ドクターの研究というのは『神経が未発達な動物はホルモンで体を制御している。その治癒物質ハイドロコーチゾンはすぐれもので大きな事故で瀕死になった人の命を取りとめ傷も完全に癒す。ポールも墜落事故にあい体中の骨はバラバラ、顔もそがれ、全身やけど(即死じゃ?)だったが、その治癒物質のおかげで傷一つ残らなかった(眉唾物ですな)』。が、一年後副作用が現れる。ポールへの電報は「陽性だ」という内容だったのだ。別の分泌物が入っていて爬虫類化、端的に言うと「ワニ化」するのだ。デヴィット・クローネンバーグ監督の「ザ・フライ」とか、スズメバチから若返りの秘薬を抽出し自ら注射した化粧品会社の女社長の物語ロジャー・コーマン監督の「スズメバチ女」と同系統のお話。
(長いお話も終わりに近づいております)。

わずかな可能性はコバルト60を使ったX線治療だけ(放射線治療ね)。一か八かの治療の最中にポールを恨んだマノンが乗り込んでくる。マノンは昔左手をワニに食べられフック船長のような鍵爪をつけた「ワニキラー」なのだ。騒ぎのために照射時間が長すぎ、ポールは真のワニ人間になってしまう(なんでやねん)。マノンは放射能にやられ、ドクターとポールの母は爆発で木っ端みじん。沼地に逃げたポールはあわれ底なし沼に飲み込まれてしまうのであった。


ジェーンの記憶を戻すかどうか悩むドクター達。結局ドクター達はこの悲劇を封印する。ジェーンにとっては今のままの方が幸せだろうてと。

貧乏白人マノン役の役者さんは「オペラ座の怪人」のロン・チャイニーの息子さんだそうです。
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モンスーン・ウェディング  m@nsoon wedding

  2001年ヴェネチア国際映画祭金獅子賞
2001年 インド 114分
監督 ミラ・ナイール(「サラーム・ボンベイ」「カーマ・スートラ」)
脚本 サブリナ・ダワン
出演 ナシルディン・シャー(パパ・ラリット・パルマ)/リレット・ドゥペー(ママ・ピミ・パルマ)/ヴァスンダラ・ダス(花嫁・アディテイ・パルマ)/シェファリ・シェティ(花嫁のいとこ・リア・パルマ)/ヴァイジャイ・ラーズ(ウェディング・プランナー・PK・デュベイ)/ティロタマ・ショーム(アリス)
メモ 2002.10.12 梅田ガーデンシネマ
あらすじ+感想
パパ・ラリットは大忙しだ。一人娘アディティの結婚式まで後4日。秒読み段階なのに、まだ何も用意できていない。いらいらがつのる。インドでは女の子が生まれた瞬間から、娘の結婚式と持参金の用意を始めるほどの大イベント。日本の名古屋も負ける。普通は乾期に挙式するが、熱いインドではモンスーン時期の挙式も増えてきた。はれの日の恵みの雨は嫌われないのだ。世界各地から一族郎党がぞくぞくと集まり始める。ドバイから、米国から、オーストラリアから、英国から。親の決めた花婿は米国でコンピュータ・エンジニアをしている。


結婚式を中心にした親族4日間の群像劇。大小あわせて5つの愛の物語がはいってる。よい映画だと思う。世界各地に散らばっているインド人のルーツを描き、そのパワーを見せつけられた。中国と共にあなどれない大国だ。監督さん自身米国在住だそうです。金の亡者だったウェディング・プランナー(デュベイ)とメイド(アリス)の恋がかわいい。
しかしおかしくて甘いだけの映画ではないのだった。。。。それでも最後は華やかに明るく踊る。 公開初日だったので「マハラジャのお香」をいただきました。よい香りです。ふんふん。
おすすめ度★★★★
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リターナー −Returner−

2002年 日本 116分 東宝
監督・原作・脚本 山崎貴(「ジュブナイル」)
脚本 平田研也
音楽 松本晃彦
出演 金城武(宮本)/鈴木杏(ミリ)/岸谷五朗(溝口)/樹木希林/高橋昌也/岡元夕紀子(「バウンス ko GALS」)
メモ 2002.10.6 ナビオシネ
あらすじ
闇取引をぶっつぶしたミヤモトは修羅場でかたきを見つける。15年ブリだ。しかし「おのれ、ここで会ったが百年目」の所に邪魔が入る。思わず撃ってしまいしかたなく気を失っているその「邪魔者」を部屋に連れ帰るミヤモト。気がついた「邪魔者」はカレンダーを見るなり「後2日しか時間がないから手伝ってくれっ」とわけわからん事を言う。
感想
某映画には著作権使用料を払っているんだろうか?と思うほど、有名SF映画連のエキスを取り込んでなおかつオリジナルストーリーを組み立ててあるのに感心した。いくらか冗長であり研究所のシーンはもたもたしているけれど、思っていたよりずっとよく出来ている。昔の無国籍アクション映画みたい。

まず、SFXはハイレベルです。 次に、3人に同等に焦点を絞っているのがいい。友の復讐をはたすべく裏街道を歩いているミヤモト(金城武)、未来から人類と弟を救うためにやってきたミリ(鈴木杏)、悪行を楽しんでいる溝口(岸谷五朗)の3人と脇に樹木希林を配して中途半端さがない。宇宙人はひっそりしていてごちゃごちゃ3人の中に入ってこない。要を握る小道具扱い。例えば聖杯とかそういう感じ。
そしてミリ役の鈴木杏。この方松潤の「金田一少年の事件簿」の七瀬美雪していた人ですね。「六番目の小夜子」の玲とかポカリのCMでジャン・レノと共演していた人。見違えてしまった。少年ぽい造りだったので「ええ〜お前女だったのかあ」と金城武がそりかえるシーンがあるかと楽しみにしていたのだが。本作ではアクションもこなしミヤモトの鼻面をつかんで引きずり回す力強い役で見違えてしまった。
おすすめ度★★★1/2
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惑星Xから来た男 The Man From Planet X

1951年 米国 71分 モノクロ
監督 エドガー・G・ウルマー
脚本 オーブリー・ワイズバーグ/ジャック・ボレクスフェン
撮影 ジョン・L・ラッセル
出演 ロバート・クラーク(ジョン)/マーガレット・フィールド(エニッド)/レイモンド・ボンド(エリオット教授)
メモ 2002.10.6 WOWOW録画
あらすじ
     宇宙船      惑星Xと交信する宇宙船

1950年の9月13日、戦友のエリオット教授に「とっておきのネタがある」と手紙で呼ばれた新聞記者のジョンは、イギリスのベリー島を訪れる。エリオット教授は娘のエニッド、助手のドクター・ミアーズと共に大昔バイキングに抵抗するため建てられた塔(要塞)でなにやら研究をしていた。後3週間で教授が「X」と名付けた惑星が地球をかすめるとか。教授はベリー島という地球上もっとも惑星Xに近づく場所に陣取って観察するらしい。
ジョンとエニッドが霧深い沼地を散歩していると夜空がピカピカする。雷かしらと思うが待ってもゴロゴロしない。へんねと思っていると足下になにやら落ちている。文系で機械音痴のジョンにはさっぱりわからず塔に持ち帰るとそれを分析した教授とドクター・ミアーズが「鉄よりも強く軽く柔らかい」新物質だと大騒ぎ。ドクター・ミアーズなんぞは「これで大儲け出来る」と言い出す始末だ。だいたいこの男には黒い噂が絶えないんだよなとジョンが「地球外にどうやって採掘に行くつもりなんやねん、え?」とちゃかす。しかしドクター・ミアーズは「恐らく高度な科学を持った地球外生物が造ったもんやねんから、その宇宙人を操ったらええやん。」と思うふとどき者。
その夜ジョンを村の宿屋に送ったエニッドは帰り道、車がエンコしてしまう。しかたなく歩き出したら沼地で宇宙船を見つけX星人と窓越しにばったり顔を合わせて思わぬファーストコンタクト。エニッドが半狂乱になりパパんとこに走って帰ってきたり、あわててパパが見に行ったら宇宙船から光線を当てられて洗脳されかけて「夜に行くなんてあぶないじゃない」とエニッドに怒られたり、朝になって自転車でやってきたジョンとパパがまたもや見に行ったら武器をもったX星人が現れほうほうのていで逃げ帰っったりのてんやわんや。そしたらふたりの後ろからX星人があらわれる。後をついて来たのも何かの縁やろと塔で科学者ふたりが会話を試みることになった。しかしドクター・ミアーズとふたりっきりにしたらX星人を脅すのね。ここで一気に地球人への心証が悪くなるわけ。
エリオット教授が突然寝込み、ジョンが薬を買いに行っている間にエニッドがX星人に誘拐され、一大事とジョンが警察に駆け込んでいる間に教授とドクター・ミアーズも連れ去られてしまう。と後手後手にまわる展開。どうやらみんなは洗脳されたらしい。村人もひとりまたひとりと連れ去られ、なんとかしないとこのままでは地球を侵略されると海をゆく船に灯りでSOSを送ったら、飛行機で警察がやってきた。軍隊もやってきた。攻撃を始める前に時間をもらったジョンはみんなを助けに沼地に向かう。
そこで捕らわれているドクター・ミアーズから聞いた話とは、惑星Xは氷河期に入り滅亡の危機に陥ったため「反動力技術」で軌道を脱し地球に向かっている。先に地球に降り立ったX星人の使命は地球に近づいた時X星人が一斉に飛び移るための信号を出す事なのだ。
感想
      X星人             どアップ      なんで「男」ってわかるねんというつっこみを入れながらも、WOWOWの「SFモンスター大全」の中でもっとも見たかった作品。なにゆえかと言えば
「青ひげ」のエドガー・G・ウルマー監督作品だから。 たちこめる霧が幻想的でB級映画でありながらこういう不思議な影像を残した人だったんだ。BSファンの紹介は「B級作品の中に個性を発揮したウルマー監督の力量を見せつける日本未公開の佳作」と不思議な誉め方してはります。

惑星X星人は弱っちいくて割としょぼい。頭でっかちで運動が得手でない優等生風。お顔はお地蔵さんみたい。でもその東洋人風の容貌が「何考えてるかわからへん」と西洋人には不気味だったんだな。「凹凸がなくて不気味なの」とかエニッドが言うんですワ。えらい悪かったな。他文化に理解がないんですね。

この映画で面白かった所はふたつ。ひとつは、教授が宇宙人とコミュニケーションを取ろうと四苦八苦。最後の手段として「数学」を持ち出してくるところ。「数学は科学の基礎であり最も純粋な言語」だそうだ。ほお。

もうひとつは、地上のX星人が地球人に木っ端みじんにされ信号が出せなかったため飛び移ることなく地球をかすめて宇宙の果てへと遠ざかっていく惑星Xを見送りながら、ジョンが「共存できたか滅ぼされたかは永遠の謎だ。」という所。ドクター・ミアーズはX星人を攻撃する地球人に対し「愚か者・・・」とつぶやきながら息絶えますし。X星人を自分たちより優秀な移民と置き換えれば意味深ですよねえ。オーストリアからやってきたもんの、制作者にほされB級映画監督に甘んじたとかいう監督の怨念が感じられるんだな。これが。
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