15年前に新人賞を受賞した篠田良多は後が続かずミステリ、時代小説、ライトノベル、コミック全盛時代に「純文学は受け入れられない」と言いつつ作家を諦めきれず、ギャンブルに明け暮れ綱渡りの日々を送っている。作品のためと言い訳をして探偵事務所に勤め糊口を凌ぐ。妻はそんな夫に愛想を尽かし息子と家を出て行った。そうなると妻子に執着しだす。
そんなこんな大きな息子を心配し、じっと見つめる母がいた。
感想
思ったようにならないのが人生。 子供を育てる、お金を稼ぐ、そして親の老いなど避けられない事が家族にはある。
鑑賞する人の視点により感想は変わると思う。ウチの場合はお母さんの樹木希林さんに注目する。
テレサ・テンが歌う「海よりも深い」より「まだ深い」愛情は、親の愛なのか。老いてきた母は元嫁にあやうい息子の面倒を見てほしいと願っている。手前勝手なのは百も承知やねん。
是枝監督が「自分の両親をモデルにした」と言われていた「歩いても、歩いても」との類似点が多い。「歩いても、歩いても」が「ブルーライト・ヨコハマ」の歌詞と知った時は驚いた。
まず、もうこの世にいない人の存在がある。「歩いても、歩いても」では医者であり出来の良かった長兄。海で子供を助け溺れてしまった。本作はどうしようもなかった父。どちらも突然の別れ。
そしてしっかりちゃっかり者の姉がいる。ちいママであり、主人公は頭が上がらない。姉は頼りにされているが、母にかわいがられているのは弟の方だと知っている。
姉の尻に敷かれている婿さんもいた。「歩いても、歩いても」は口ばかりだったが、本作では窓ガラスの修繕をする。
トウモロコシの粒を揚げたのと、カレーうどんという家族の味がでてくる。
家畜 家庭的でない男は、現代の日本の家庭に居場所がない。という事実も根底にある。
そして小学生の息子とのぎくしゃくした関係。本作では本音では「ひと月に一度息子と会えればいい」と思っている。
「歩いても、歩いても」より進化し、たっしゃな会話が面白く笑える。(阿部寛もうまくなったもんだ)
(母が息子に突然の別れで夢にでてこられるのと、なかなかお別れ出来ないのとどちらがいいかと聞くのに笑った。どっちもいややわ)
どうして男って今を楽しめないのかしらねぇ
是枝監督は2作目で、あざとすぎるくらいうまいなあと思うんやけど、「誰も知らない」を撮った監督なのでどこか好きになれない。
大きな衝撃を受けたあのひどい事件を受け入れられないんやね。映画「誰も知らない」を見ることもできないんやから。
樹木希林さんは、
「あん」といい、今、ある監督たちの
ミューズではなかろか。
終わりかけの「クローズアップ現代」に出てはって、またがん治療で入院すると言われていた。
「クローズアップ現代にでますか?」って聞かれて「ハイ〜ハイ〜出ます出ます」って手を挙げたの。国谷さんに会いたかったの。