2008年8月のミステリ 戻る

福家警部補の挨拶
2006年 大倉崇裕(おおくらたかひろ)著 東京創元社(創元クライム・クラブ) 253頁
あらすじ
コロンボをこよなく愛する作者がとうとう書き上げた、倒叙ミステリ4編。
名探偵は、152センチの小柄な女性。ふちなし眼鏡をかけ、ショートヘアの童顔で、どうかすると大学生に見える捜査一課の福家警部補。
警部補は、折りたたみ傘もうまく畳めないぶきっちょの上、しょっちゅう警察手帳を探しているうっかりやさん。眠るのも忘れ仕事に没頭している。
感想
ずっと読んでいたかった。
みかけは仕事中の女性には珍しい「白黒はっきりつけないカフェオレちゃん(グリコ乳業)」。とらえどころのない人物だ。しかしその観察眼と集中力は並外れている。レア物の低予算映画好きなところも面白い。そういうプライベートな生活があると思えないワーカホリックぶりもいいな。好きな事がわかっていて、それをし続けているんだよ。それが仕事で成功しているんだよ。。なんてかっこいいんだ。
 
好きなシーンは「オッカムの剃刀」の
 
  胸を張って歩き去る柳田の背中に、いつまでも頭を下げている。
   「警部補、頭を上げてください」
   「彼はもう行った?」
   「ええ」
   福家はふうと息を吐きながら、顔を上げる。髪を整え、小さく伸びをした。
 
やるなあ。役者やねぇ。変わっているけど組織の人間やねんねぇ。
 
そうやねぇ。市原悦子をタイムマシンに押し込んで30代前半にしたイメージかなぁ。大竹しのぶもいいかなあ。
 
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聞いてないとは言わせない DUST DEVILS
2007年 ジェイムズ・リーズナー著 田村義進訳 早川 286頁
あらすじ
ぎらぎらとお天とさんが照りつける、ここはテキサスの片田舎。ヒッチハイクで農場にやってきた青年は「町で人手が足りないと聞いた」と言う。住み込みで働くと言うのだ。困っていたグレースは、警戒しながらもこの青年トビーを試しに雇うことにした。
感想
すんげぇ余韻のないラストに、衝撃を受ける(**)~~
       さぼてんはこのサバサバサバサバした生き方に、あやかりたい。
 
しょっぱなはジェイムズ・M・ケインの「郵便配達は二度ベルを鳴らす」(シネマ「バーバー」)みたいで、「じゃまな亭主もいないのにどうなるん?」と心配していたところさっさと杞憂に終わり、めくるめくスピードで話は展開する。
人を選ぶ本かもしれん。タランティーノ好きは必読と思う。
 
  町に近づいたとき、南西の方向の遠いかなたに見えたものに、トビーは思わず背筋をのばした。
    「あれはなんだろう」と、トビーは指差して訊いた。
    「どれ?」
    「太陽が沈みかけているところにあるものだよ」
    ダナは微笑んだ。「トビー・・・・・・あれは山よ」
  
  これまた衝撃をうける。そこは、、、、アメリカなんだ。大陸なんだ。山と海に挟まれた大阪とはまったく違う土地なんだ。
 
お薦め度★★★★★戻る