2007年4月の映画  戻る


秒速5センチメートル
2007年 日本 60分 アニメーション
監督・原作・脚本 新海誠
メモ 2007.4.29(日)晴れ テアトル梅田・レイトショー
あらすじ
三話からなるアニメーション。秒速5センチメートルというのは桜の花びらが落ちる速度だそう。
第一話は、中学一年生の遠野貴樹(とうのたかき)と篠原明里(しのはらあかり)。ふたりは小学校の時、転校生+読書好きどうしで仲良くなる。しかし篠原明里は小学校卒業と同時に東京から栃木に引っ越す。それから1年、遠野貴樹が鹿児島・種子島に引っ越す事になり、貴樹は放課後栃木までアカリに会いに行く。しかし、3月にも関わらず列車は雪で遅れに遅れる。
第二話。種子島で高校三年生となった遠野貴樹(とうのたかき)をずっとずっと慕っている女の子がいた。澄田花苗(すみだかな)だ。カナは中二で転校してきた遠野貴樹にひとめぼれ。がんばって同じ高校に入って早や2年。今だ告白できない。彼は大学は東京に戻るらしい。今こくらなきゃ彼は遠くに行ってしまう。
第三話。大学も出て社会人になったが、コンピュータ業界で消耗し擦り切れた貴樹は会社を辞めた。3年付き合った彼女からもケータイメールで「1センチメートルも近付け無かった。さよなら」と告げられる。
感想
美しい景色としっとりとしたノスタルジックな映像が、いいと思う。
しかし、暗い・・・。これは、向き不向きがあるな。さぼてんは後味が・・・・超苦かった。
 
ネタバレかも
実も蓋もない言い方すれば、男はいつまでも彼女への想い引きずり、そして女と言えばばりばりに現実的。別の人と結婚に向かっているらしい。のである。
男は彼女が思い切れず取り残されているのか、それとも何ともわからない何かを目指しているのか、ナルシストなのかよくわからん。混沌としている(まあそれがナイーブな男という生き物、そんなもんなんかもしれん)。
高校を選んで、大学を選んで、就職して、結婚して、子供が生まれてって選択するたびに未来が開かれるどころか閉じられていくように感じる。かといって選択しなきゃ、6畳の個室からでられないまま。よーするに自分にとって、最初から未来はそんなに可能性があるもんじゃなかったのよ(ってのが思い知らされる映画だったな)。 何が起ころうと何をしようと、時がたつのは止められない。
もひとつ、種子島でお国なまりが使われていないというのも気にいらない。
 
種子島からロケットが発射される映像を見たら、そちらの方に興味が移ってしまい「日本の将来」と「希望」を打ち上げているんだなあと祈りに近い気持ちになったよ。失敗するとあいつが悪い、こいつが悪いと悪者探しになって、技術者が疲弊していくらしい。若い人たちに希望を与えられなくてどうする(そうなんだ、この映画も後ろ向きな、そこがヤダんだ。終わった事をうじうじしていて、どうすんだよ! )。プロジェクトマネジメントがヘタクソな旧日本人に対し、「指図はうけん」、「ロートルは黙ってぇ!」とたんか切る超優秀な若者がたくさんいますように。
お薦め度★★★★1/2戻る

マッチポイント
2006年 英国 124分
監督・脚本 ウディ・アレン
撮影 レミ・アデファラシン
キャスト ジョナサン・リス・マイヤーズ(クリス「MI:V」「ベッカムに恋して」)/スカーレット・ヨハンソン(ノラ「バーバー」「ゴーストワールド」)/エミリー・モーティマー (クロエ)/マシュー・グード(クロエの兄・トム)/ブライアン・コックス(クロエの父・アレックス)/ペネロープ・ウィルトン(クロエの母・エレノア)
メモ 2007.4.21(土)晴れ レンタルDVD
あらすじ
ヒューイット家のアレックスとエレノアには心配事があった。子供達の事だ。英国の上流階級に属し、田舎に別荘はあるわ、ビジネスでも成功していて大金持ちだわ、で世界で一握りの恵まれた生活。。。にもかかわらず思春期をもはやとうに過ぎた息子と娘の身がまだ固まらない。早くよき伴侶をゲットして孫の顔を見せてもらって由緒正しきDNAが連綿と引き継がれて欲しい。ところが息子のトムはアメリカ娘に夢中だ。女優の卵で確かに美しく色っぽいが・・・・彼女は我が家にふさわしい嫁であろうか?  娘クロエの方は芸術家肌というか夢見る夢子ちゃんで酒場の店主と駆け落ち騒ぎを起こす有様。なんとか息子と娘を”自分の意思”という形で”良き方向”に向けさせなければならない。
そこにあらわれたのがクリス。元テニスプロで今は会員制テニスクラブのコーチ。アイルランド出身の苦労人だ。トムがクリスを気に入って父・アレックスが後援しているオペラに連れてきた。トムが連れてきた理由は、妹クロエの相手として両親の目を自分からそらすためか、ただ単に気に入ったからかは不明。そしてクロエはクリスに一目ぼれする。
アレックスとエレノアは階級の違うクリスをじっと観察する。クリスはドストエフスキーの「罪と罰」が愛読書であり、ドストエフスキーに造詣(ぞうけい)が深いようだ。ビジネスの仕事をさせてみればそつなくこなす。我々種族に欠けているハングリー精神もあるそしてなにしろ娘のクロエがぞっこんだ。おしつけがましくなく、うまくもっていかないとな。まずクリスに贅沢の甘美な味を覚えさせて虜にするのだ。
感想−カンのいい人はねたばれご注意−
女優になる夢をあきらめず、よき妻・よき嫁になろうとしなかったトムの婚約者ノラ(イプセンの「人形の家」の主人公の名前)。
反して「罪と罰」が愛読書であり罪悪感が待ち受けているのがわかっているにもかかわらず、罪を犯すクリス。
「死の接吻」や「陽のあたる場所」のように恵まれない育ちの男が、婚姻によってのし上がろうと言う話なんかなあ。それとも上流階級というのはやはり搾取階級であり、様々な人達の犠牲の上に成り立っているとのお話かな。なんとなくそういう気がする。上流階級は手を汚さずに欲しいもの(新しい血)を手に入れたもんな。クリスはもはや後戻りできない。 赤ちゃんが生まれってしまったクリスのこれからの運命やいかに。 いつかお払い箱になるかも。
3分の2くらいは退屈だったが、最後の3分の1がなかなかサスペンスフル。
お薦め度★★★1/2戻る

ラストキング・オブ・スコットランド
2006年 米国/英国 125分 FOX 字幕:戸田奈津子
監督 ケヴィン・マクドナルド(「ブラック・セプテンバー/五輪テロの真実」「運命を分けたザイル」)
原作 ジャイルズ・フォーデン 「スコットランドの黒い王様」(新潮社刊)
脚本 ジェレミー・ブロック(「シャーロット・グレイ」)/ピーター・モーガン
撮影 アンソニー・ドッド・マントル
音楽 アレックス・ヘッフェス
キャスト フォレスト・ウィッテカー(イディ・アミン)/ジェームズ・マカヴォイ(ニコラス・ギャリガン)/ケリー・ワシントン(ケイ・アミン「Ray」)/サイモン・マクバーニー(高等弁務官ストーン)/ジリアン・アンダーソン(サラ「Xファイル)
メモ 2007.4.7(土)晴れ 敷島シネポップ
あらすじ
アフリカ内陸の赤道直下にあるが、1200mの高原で気候のよい国ウガンダ。
そのウガンダで1971年1月25日のクーデターにより陸軍大佐だったアミンは大統領となる。1979年4月11日ウガンダ民族解放戦線・タンザニア連合軍の侵攻によりリビアに亡命するまでの8年間、国中を恐怖と混乱に落とし入れ独裁政権を強いた男だ。
アミンが政権を握った頃、スコットランドの医学校を卒業して晴れて医者となったニコラスは冒険を求め、アフリカの地に立つ。彼には「困っている人の役に立ちたい」というりっぱな志はあった。アミンが遊説中交通事故で捻挫したのを治療したのが縁で、アミン家のホームドクターとなる。ほがらかでユーモアたっぷりのアミンのカリスマ性に魅了されるニコラス。彼はおぼっちゃん育ちでアフリカの現状にも歴史にも無知だった。
感想
人を食しただの、部下♂の↑をどうとかすると脅したりだの、アミンがあんな事した、こんな事したのスキャンダルで、西側諸国とマスコミを騒がせた男アミン大統領。当時マスコミの評価がガラガラ変わる人だったなぁ。安全地帯にいる人間は扇情的な報道を楽しむ騒ぐだけですむが、えじきとなった者達の運命は過酷だった。
 
フォレスト・ウィッテカーに星5つ★★★★★。
人をそらさない陽気なアミンの魅力と残虐性を具現化している。ウガンダのロケでは現地の人たちが「アミンの再来」と怖がったらしいが、さもありなん。アカデミー主演男優賞、ゴールデングローブ男優賞、イギリスアカデミー主演男優賞と賞を総なめしたウィッテカー。なのに、日本での上映はほそぼそと、はや上映終わってちまいやしたよ。
ニコラス演じるイギリス人(スコットランド人)が、インテリでなまっちろくて「単純で御しやすし」と思っていた相手がとんでもない怪物だったと知って、右往左往する姿が元保護者イギリスの戸惑いと監督の怒りと後悔を現している。(イギリスはウガンダにすべきでない事をしてしまったのではなかろうか)
お薦め度★★★1/2戻る