2005年7月の映画  戻る


フライ,ダディ,フライ

2005年 日本 東映 121分
監督 成島出(「油断大敵」)
原作・脚本 金城一紀「フライ,ダディ,フライ」角川書店刊
出演 堤真一(鈴木一)/岡田准一(朴舜臣パクスンシン)/松尾敏伸(ゾンビーズ南方)/坂本真(ゾンビーズ山下)/須藤元気(石原裕輔)/星井七瀬(鈴木遥)/愛華みれ(鈴木夕子)/塩見三省(平沢教頭)/モロ師岡(ボクシング部顧問)
メモ 2005.7.30(土) 道頓堀東映劇場
あらすじ
妻は若く美しい、娘は私立名門女子高校生でとっても素直でカワイイ、仲良しの3人家族だ。郊外に家も持った。仕事も順調だ。
しかしこのシアワセな一家に不幸はなんの前触れもなく、突如襲いかかった。娘が病院に運び込まれたとの妻からの電話。駆けつけた病院で顔の形が変るほど殴られた愛娘を見て、ショックを受け混乱する鈴木一(すずきはじめ)。思わず弱っている娘を責めてしまった・・・。医者は「暴行されたのは上半身だけで・・・」と不幸中の幸の様な事を言う。犯人の高校生は大物政治家の大バカ息子。ボクシングでインターハイ優勝経験も持つキチ○イに刃物という野郎だった。あろうことか鈴木一はこのバカに自分の無力さを思い知らされる事となる・・・・。
感想
暇を持て余していた高校生達(ゾンビーズ)の「夏休みの自由研究課題」にされたリーマンの話。いや、違うな。大人の男が蘇る物語。父親と息子の物語でもある。女の人は美しくかしこくかわいく美化され(あんなによい奥さんがこの世にいるか〜)、、、行動の動機ではあるが添え物に過ぎない・・・・。
「女は守られる性なのかよ〜」と少し思ったりしたのは事実であるが、男の人は「家族を守る」という強い気持ちを持ちつづけないと自分を見失う(オレはなんのためにこの世にいるのか・・・)事になるんだろうな。という訳で牙を失わない男による男の物語であり、さぼてんには入り込む隙間がない・・・・・・。
 
自分の隠れ場所(木の上)にたどり着いた父親もどきの鈴木一(堤真一)にパクスンシン(岡田准一)が心を開くシーン。夕日がきれいだった。ちょっと笑った。 パクスンシンが何故このあだ討ちに荷担する事にしたのか。暇つぶしもあるだろうが、父親のいない彼は大人の男に興味があったんだろうな。いつの日かでていかなければいけない社会に生きている男達に。知っている大人はガッコのセンコだけ。とても物足りない。
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ミリオンダラー・ベイビー

第77回アカデミー作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞
2004年 米 133分 ムービーアイ=松竹
監督・製作・音楽 クリント・イーストウッド
原作 F・X・トゥール
脚本 ポール・ハギス
撮影 トム・スターン
美術 ヘンリー・バムステッド
出演 クリント・イーストウッド(フランキー・ダン)/ヒラリー・スワンク(マギー・フィッツジェラルド)/モーガン・フリーマン(スクラップ)/アンソニー・マーキー(ジョレル・バリー)/ブライアン・F・オバーン(神父)
メモ 2005.7.24(日) 天神橋六丁目ホクテンザ2
あらすじ
スクラップ(モーガン・フリーマン)はロサンゼルスのダウンタウンにあるボクシングジム・ヒットピットで雑用係をやっている元ボクサーだ。左眼が見えない。ボクサー時代の置き土産だ。彼が語るには、ボスのフランキーはすぐれたトレーナーだが、マネージャーとしては腰が引けている。またまた有望なボクサーを取られてしまった。フランキーはボクシングの虜であるが、実は試合は好きではなかったのだ。試合はボクサーを痛めつける。彼が大事にしているものを壊していくのだ。
感想
ラストのレモンパイを最後の晩餐に食しているのを暗示しているシーン・・・・やっぱアンタが主役かよ〜。とちょっぴり思ったもんの見た事のない映画だった。ボクシングのファイトシーン(暴力)の流血がいっぱいあるのに、静謐な印象が残る。 格調が高い。不思議だ。古き良きアメリカ映画の香りもする。
 
「ミスティック・リバー」に続いて娘への贖罪のお話。なにをそんなに謝らなあかんほど悪い事したんや? クリント・イーストウッドよ、、、と思ってしまうやんか。。神父さんが「神は関係ない。」と言い切るシーンにすごみがあったな。 「父のない娘(こ)と娘(こ)のない父」が血縁よりも深い絆で結ばれてしまう。
キリスト教徒としてマギーはひとつの罪を背負って逝く。フランキーはふたつの罪を背負って逝く。ふたりの道行きだ。生きている時に犯してしまった罪は生きているうちに贖わなけばならない、贖いたい、自分なりの落とし前をつけたいという強い思いを感じたな。お気楽に生きている人も多いのに、何ゆえ十字架を背負って生きないといけないのか。何故「われに艱難辛苦をあたえたまえ」と生きたいのか、、マギー。それは、寄生虫の親族とは違い彼女は誇り高い人間だったからだ。せつない。
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裸足のピクニック

1993年 日本 92分
監督 矢口史靖(やぐちしのぶ)第一回劇映画作品
脚本 鈴木卓爾/中川泰伸/矢口史靖
撮影 古澤敏文/鈴木一博
音楽 うの花
出演 芹沢砂織(鈴木純子)/浅野あかね(妹・鈴木陽子)/梶三和子(母)/ Mr.オクレ(父)/あがた森魚(ライダー)/泉谷しげる(ヘンタイ喫茶店主) /鈴木砂羽(同級生)
メモ 2005.7.18(月) 録画ビデオ
あらすじ
それなりに優等生で大学進学をめざす鈴木純子は、キセル乗車で捕まってしまう。大学への推薦がおじゃんになると思った彼女は浅はかにも逃げてしまうのよ。そこからが不幸の始まり始まり。逃げる途中で教科書やら恋人とのやばい写真やらをばらまいた彼女の身元はあっさりばれ、駅長室には担任が呼ばれ母親が呼ばれで、家に帰れない。祖母の家に逃げるが、祖母宅は留守。そうこうする内に両親がやってきた。おばあちゃんは亡くなったのだ。両親とともに病院に向かう純子。ところが途中でバイクと衝突。怪我をして一晩入院となった両親に代わり祖母のお骨を持って家に帰ることと成った。家では叔母と妹が通夜の用意をして待っている。
感想
それはそれはブラックな怪作。矢口史靖(やぐちしのぶ)って監督さんはとりつかれた話が多いな。「秘密の花園」では樹海に消えた3億円にとりつかれる金の亡者のOL、「ウォーターボーイズ」ではシンクロにとりつかれた男子高校生、「スウィングガールズ」ではジャズにとりつかれた女子高生。本作もとりつかれた話やねんけど、能動的ではなく受動的。底なし沼のような不運にとりつかれた女子高生は、一応は運命に抗おうとする。そして下手をうちまくる。お骨の行方とそれを取り繕うとするその手段にボーゼン。 (・ ・)。。。。すんごいよ。一番の見所。
 
ひと夏の冒険物語というか、ある家族の崩壊と再生の物語というか。どうオチが着くんだろう、結局何もなかったかのように元通りの高校生活に戻るんだろうなと思っていたら、、、、力技の解決でしたね。女の幸せは結局これですかね、(泉谷しげるかもしれんのにえーんだろうか)。不幸のどん底に落とした彼女への贈り物ですか。それとも転んでもタダでは起きない♀のしぶとさ・・・・とか? きかんきそうな顔を見ていると、結局こいつにも手こずりそうで、同じ事の繰り返しが平凡な人生なのか幸せなのかと、なんとなく空しささえ感じる脱力のラスト。
「ウォーターボーイズ」「スウィングガールズ」って優等生の映画に見えてきた。
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イン・ザ・プール

2004年 日本 101分
脚本・監督 三木聡
原作 奥田英朗「イン・ザ・プール」文芸春秋刊
音楽 「ナイアガラ・ムーン」大滝詠一 「DOWN TOWN」シュガー・ベイブ
出演 松尾スズキ(伊良部一郎)/市川実和子(強迫神経症のルポライター・岩村)/オダギリジョー(継続性勃起症の営業マン・怒れない自分の代わりにムスコが怒っているのだったの田口哲也)/田辺誠一(プール依存症のエリート・大森)/MAIKO(モデル立ちのナース・マユミちゃん)/きたろう(吉沢部長)/ふせえり(編集長)/森本レオ/綾田俊樹(中村教授)
メモ 2005.7.2(土) テアトル梅田
あらすじ
頭のねじがはずれている、いや元々ない精神科医・伊良部一郎の怪走を描く「イン・ザ・プール」の映画化。何をしても彼には天罰がくだらないのである。なぜか? おずおずと診療室を訪れる患者に「はいー。いらっしゃーい」と第一声をあびせかけ、自己嫌悪とか悩むとか恥をしるとかが皆無だからだ。神様を呆れさせる男、伊良部一郎。他人の痛みはいくらでも我慢できるってやつでもある。ま、弁護士とか医者は神経がヤワだともたないけどな。
感想
映画っぽくはなかったけど、阿部寛が伊良部一郎を演じたTVドラマ「空中ブランコ」より100倍よく出来ていた。松尾スズキが伊良部一郎のイメージとはちょっと違うねんけど、これはこれでいいかも。オダギリジョーの元妻が「てっちゃんが結婚してくれると、私の気持ちが楽になるの」などとのたまい、文字通り怒髪天となる伊良部一郎。おもろかった。こやつめは浮気してサッサと離婚して、元浮気相手とラブラブの毎日というジコチューなのだ。伊良部、もっともだ。言うたれーもっと言うたれーと心の中で声援を送る。そやねんけど、こういう所が原作より真面目に感じるのよ。
強迫神経症のルポライター・市川美和子のカブトムシ・イラブが燃える妄想も面白かったな。カーテンを閉め忘れた!→かんかん照り→窓際に置いてあるカブトムシの籠の虫眼鏡に日光があたる→発火→燃えたカブトムシが飛ぶ→部屋が火事〜〜。心配しだすとキリがない〜。想像は悪い方に悪い方に転がる〜。すごくわかる〜。