2004年3月のミステリ 戻る

ペイチェック
 
フィリップ・K・ディック 早川書房 570頁
あらすじ
映画 「ペイチェック」公開に合わせて新たに編集された作品集。初期作品8本、中期の60年代が2本、後期の70年代が2本の計12作品。かなり物悲しい。反体制と物欲というのがすさまじい。アメリカの作品だな。
感想
「ペイチェック」 映画はなんとなく原作の「3年間の記憶喪失」のアイデアだけを拝借してあるのかな、などと根も葉もない事を思っていたのだが、P.K.ディックのファンがそんな事態を許すはずもない。ところが結末が全然違っていて唖然とした。やはりこの結末でしょう。そしてこれを映像化したらお笑いになりかねない。ジョン・ウー逃げたか(いやいや)
おすすめ度★★★★
戻る

ミスティック・リバー
 
2001年 デニス・ルヘイン 早川書房 425頁
あらすじ
ミスティック・リバー
感想
みんな居るべき所に戻っていった、行ってしまったという事だったのか・・・・。
 
主要登場人物5人(ジミー、ショーン、デイヴ、アナベス、シレスト)の内、アナベス(ジミーの妻。映画ではローラ・リニー)だけが一人称で語るところがない。ほんとうのところ義理の娘にどういう感情をいだいていたのか明らかにされる事はない。映画の解説ではアナベスという名前はマクベス夫人の名に似せてあるのだろうと書かれてあった。
 
作者の書きたかった事がわかるという事は、ない。人生は暗く辛いものなのだという事を言っているのでもないと思う。それは言われなくてもわかっている。人ができることは小さい。ただ小さなものでも希望を持って生き抜けという事なのかもしれない。それとも自分の大切な物を見失うなという事なのか。映画ではわかりにくかったラストシーンが原作を読んで幾分わかった(ような気がする)。
 
映画を先に見ていたせいかもしれないが驚くほど原作の雰囲気に忠実だった。役者さんたちも掘り下げた人物像を演じきっている。アナベス役のローラ・リニーとシレスト役のマルシア・ゲイ・ハーデンの力も大きい。原作も読み映画も見る事をお薦めする。どちらも完成されておりどちらの味も苦いがふたつでひとつだ。
おすすめ度★★★★
戻る